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お香と聞いて、どんな香りを思いますか?

お仏壇とか、お線香の煙たい香りを思う人が多いかも知れませんね。

私は、伽羅や白檀などの香木を思います。
自然が時間をかけて育んだ、奥深い神秘的な香り。

お香の歴史は古く、古代メソポタミアでは、香木を焚いて
神様に祈りを捧げる儀式が、既に行われていました。
古代エジプトでは、日に三度、三種類の香料を神様のために
焚いていました。

良い香りを神様仏様に捧げ、悪霊や穢れを祓い清める・・・
という考えは、古代から培われてきたのですね。

その後、世界中に広がった香料は、それぞれ独自の進化を遂げていきます。
中東から欧米に伝わった香料は、花々と出会い香水の華やかな香りに。
インドに渡った香料は、仏教の儀式に用いられ、中国で風水と結び付き、
日本では、神様仏様に差し上げるお香となりました。

お香の原材料は、香木です。
その名の通り、自然に良い香りのする木。近年の自然破壊などで、
品質の良い香木を入手することが年々困難になっています。
人工的な植林が難しい、自然だけが育むことの出来る神秘の香り。

日本における香木の最も古い記述は、日本書紀にあります。

「推古天皇3年(西暦595年)の4月、淡路島に1本の大きな香木が
流れ着いた。島の人は香木と知らず、薪と一緒に竈で焼いた。
辺り一面に広がる芳香を不思議に思った島の人は、朝廷に献上した -」

献上された香木は、その後、当時摂政であった聖徳太子が、
「これは沈香である」と鑑定したそうです。

高貴な人しか触れる機会の無かったお香の世界。
海岸で見つけた人にとっては、魔法の様な、芳しい香りだったでしょう。

ちなみに、香木が流れ着いて以来、淡路島は日本最大の
お線香の産地となりました。


お香は、仏教と共に伝来したこともあり、主に神様仏様への
儀礼の場面で使われていました。

源氏物語の頃、仏前にくゆらす「供香」、衣類に香りをつける「衣香」、
室内にくゆらす「空薫物(そらたきもの)」の三つに分かれ、
お香は宮人の教養として、宗教と離れた独自の発展を遂げていきました。

平安の頃、宮人たちは自ら香料を調合し、競って自分だけの
香りを作っていました。何て雅な嗜みでしょう。
お互いの顔を気軽に見ることの出来ない時代、自分が作った香料を
部屋や衣類に焚きこめて、香りで想像力を掻き立て合いました。

自分好みの香りの人から、素敵な和歌を送られたら・・・
ロマンチックな時代でしたね。


当時のお香は、粉末にした香料に蜂蜜や果実を練り合わせた
「薫物(たきもの)」が主流でした。

代表的なものに「六種の薫物(むくさのたきもの)」があり、
季節の移り変わる様を、六つの香りで表現しているのですが、
香司を兼ねた風水師が助言して、作られたと言われています。

「梅花」…春。梅の花のような華やかな香り。
「荷葉」…夏。蓮の花を思わせる涼やかな香り。
「菊花」…秋。菊の花に似た安らぎの香り。
「落葉」…冬。木の葉の散る哀れさを思わせる香り。
「侍従」…雑。もののあわれを感じさせる香り。
「黒方」…賀。祝い事等に使用。奥ゆかしく落ち着いた香り。

お香の伝書には、これら六つの配合が残されています。
ミルラ、シナモン、白檀、安息香、クローブなど珍しい香料の数々に、
配合率、焚き方・・・
今再現するのも大変な、高度な知識が詰まっています。


それから更に深く、香りを感性や芸術と結び付けた
「香道」が誕生します。

香りを“聞き”、鑑賞するのですが、作法は茶道のお点前に似ています。
心を無にして、感性を研ぎ澄ませ、香りと向き合う。
とっても贅沢な時間だと思います。

機会があれば、ぜひ体験してみてくださいませ。


庶民にお香が広まったのは、江戸時代からです。

中国より細長いお線香の作り方が伝来して、
街角にお線香屋さんも出来始めました。
今、私たちが手にするお線香と、ほぼ同じだったようです。
ただ、機械は無いので、人が手をかけて作っていました。

今では、お線香は仏事で焚くイメージが強いですが、
江戸時代には、時計の代わりに使われたりもしました。

お寺で座禅の時、寺子屋の授業の時、1尺(30.3cm)~
1尺2寸(36.36cm)のお線香を焚いて、約一時間の目安にしたそうです。

このアイディア、現代でもお打合せや瞑想に使えそうな。


さて。
「よい香りでリラックス」なんて良く言いますが、
五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の中で、嗅覚だけが、
古い脳である大脳辺縁系に直結しています。
ここは、喜怒哀楽などを支配している部分で、
自律機能に大切な役割を担っています。

美味しそうな匂いで急にお腹が鳴ったり、香水の匂いで
ふと誰かを思い出したりした事はありませんか。

香りは、考えるよりも先に、感情や本能が反応するものなのです。

風水では、香りと運気には密接な関係があると言われています。
香りを自由自在に使いこなす事で、自分が願う効果を引き寄せる。
落ち込んだ気持ちを前向きにする事も出来ます。


アロマや香水の華やかな香りも素敵ですが、
神秘的な香木の香りを練りこんだお香も良いです。

お打合せや瞑想、頭を使う時、スッキリしたい時におすすめです。
ぜひお試しくださいませ。

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