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誕生日SS!! 朝比奈 桃香【2020】

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暖かい日曜日。
外にいると、少し汗ばんでくる今日の気候。

私は部活がないにも関わらず学校に向かっていた。

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土曜日の部活後に日曜日の部活が
オフであると告げられた私は、ぽっかり
空いた一日をどうしようか考えていた。

そんな時翠先輩から
『日曜の午後、部室の台本の片づけをしたい』
と連絡がきたのだ。もちろん私は二つ返事で了承。

まだ読んでない台本があるかもしれないし…
なにより、今日は私の誕生日。
折角なら大好きな皆と過ごしたいな、なんて。

部室の前に立つともう明かりはついていて、
中から小さく話し声が聞こえてくる。

部の皆に対する人見知りはもう
なくなったけれど、人の輪のなかに
入るのはまだ少しだけ緊張してしまう。

だからいつものように軽く
ノックをしてから扉を開ける。

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「こんにちは…って、きゃっ!?」

「「「桃香ちゃん、誕生日おめでとう!!」」」

鳴り響くクラッカーの音に
驚いて瞑った目を、そっと開ける。

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目に入るのはキラキラした飾り付けと
机に置かれたケーキ、そして笑顔の皆。
驚きの余り固まってしまった私に
葵先輩が近づき、手を差し伸べてくれる。

「お手をどうぞ、お姫様…なんてね?
桃香ちゃんは主役なんだから、こっちにおいで」

「え、あ、はい…!」

ケーキのある机まで手を引かれ、席に着く。

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一度深呼吸をすると強張っていた
身体が弛緩するのと同時に、
じわじわと実感が湧いてくる。

改めて見回すと、前々から準備して
くれていたのだと分かる装飾ばかりで。

「わ、私なんかのために、こんな素敵な…。
ありがとうございます…!」

嬉しさと照れくささで顔が赤い。

それでも感謝を伝えたくて頭を下げる。

皆が返してくれる言葉が温かくて、
私の心もぽかぽかと温かい。

しばらく経つと、"お腹減ったー!"
という綺衣ちゃんの言葉を
皮切りにケーキが切り分けられた。
真っ赤な苺が乗ったケーキ。

"桃のケーキにしようとも思ったけど、
お店になくって"なんて冗談めかして笑う
先輩に笑い返しつつ、皆で乾杯をする。

「皆グラスは持った?それじゃ…
「「「かんぱーい!!」」」」

「さぁ、お待ちかねのプレゼント!
茜ちゃん、よろしく!」

「はーい!桃香ちゃん、手を出して?」

ケーキやお菓子を満喫した後。

茜先輩の指示に従って差し出した両手に
乗せられたのは、チケットホルダー。
"中、見てみて!"と言われ開けてみる。

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「え、これって…!」

入っていたのは近々オープンする本屋の招待券。
オシャレで、本屋だとは信じられなほどに
大きな規模だと連日ニュースで報道されている。

その本屋が抽選で招待券を配布する
という情報は私も知っていた。

『好きな本一冊のプレゼントと
カフェのドリンク一杯無料』

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そんな破格の特典のためか、
すごく競争率が高かったはず。

私は当選しないだろうと
応募を断念していたけれど。

「抽選、当ててくれたんですか…?」

「そうそう。全員がそれぞれネット
応募したんだ!当てたのは茜先輩!」

「今年分の運使い切った気がする…」

「当たるかは微妙だったけど…
桃香ちゃんにはこれかなって」

人気が落ち着いてきたら私とも一緒に
行ってほしいな、と微笑む翠先輩。

今度皆で行く?と投げかける紫音先輩。

それに賛同する葵先輩、茜先輩、そして綺衣ちゃん。

こんなに素敵な人たちに祝って
貰えたことが、本当に幸せだ。

「桃香ちゃん、新しい本屋さん満喫してね!」

「…はい!皆からのプレゼント、大切に使います!」

皆の想いがこもった温かい
プレゼントをぎゅっと抱きよせて答える。

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綺衣ちゃんに連れられて入部したこの声劇部。
人見知りの私が馴染める訳ないなんて
思っていたし、馴染む勇気もなかったけれど。

一度は離れた場所にもう一度踏み込めた自分を、
今なら少しは誇れる気がする。


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台本制作:雪野みるく
@Milk_sing_cast / users/7170004

絵:いぬころりん
@inucoro_094 / users/7972705

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