オリンピックの開会式は「シンデレラ」物語のように思えた。もしも午前0時を過ぎたら。かくて、聖火はともされた

東京オリンピックの開会式が行われた。夜空には、国立競技場の明かりがポッカリ浮き上がっている。近くに明治神宮の森があり、そこは暗く彩られているので、なおのこと、国立競技場のライトが目立っていた。

57年前の1964年。かつて行われた東京五輪の開会式は晴れ渡っていた青空の下で行われていた。この時の様子を、作家たちは以下のように表現している。
堀口大学は「澄んで清いぞ 抜けるほど。」
井上靖は「日本列島は千二百年目の秋晴れです。」
石坂洋二郎は「十月十日は、前日まで天候が気づかわれていたにもかかわらず絶好の秋びよりだった。」
石川達三は「日本の秋晴れ。…この日はまことに美しい秋晴れだった。」

だが、今回は夜間開催。夏に行われているからか、海外のテレビ局の事情に合わせたのかは分からない。しかし、「舞踏会」は午後8時にスタートしたのだ。

開会式を「舞踏会」と書いたのは、このイベントが「シンデレラ」物語のように思えたからだ。

大会関係者は、魔法使いと約束したのかもしれない。午前0時までに聖火が国立競技場にともされなかったら、国立競技場は「カボチャ」に戻ってしまう。聖火は「100円ライター」に。そして、日本国民のSNSでの賛辞の声は「罵詈雑言」になってしまうと。

開会式はスローペースのようだった。本来、NHKは午後11時半になったら、ニュースを入れるはずだったが予定を変更。その後も、各番組の予定を変更して、開会式の中継が続いている。

魔法使いとの約束を、何も知らないIOCのバッハ会長は13分にも及ぶ長広舌をふるい続けた。

最終走者の大坂なおみ選手が聖火をともす前に、魔法は解けてしまうのでは。皆がハラハラしながら、見守っていたのかもしれない。

そして11時50分ごろ、聖火が国立競技場にともされた。

1964年の東京五輪の開会式を見て、三島由紀夫はこう書いた。「やっぱり、これをやってよかった。これをやらなかったら日本人は病気になる」

2021年の東京五輪が幕を開けた。日本人は、これをやって病気になるのか、やらなければ病気になっていたのか。どちらなのだろうか。

8月8日(日)まで祭典は続く。

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