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コロナ禍の今に「抵抗できないほどの生命力」に打ちのめされた話。


こんな世の中の今、生命力溢れたエネルギーに叩きのめされた。


「コロナ禍」「新しい生活様式」が日々話題になる昨今。どうもなんか調子がない。何をしてもなんとなく感じる恐怖感、日本から発信される感染者数だけが流れるニュース。不安感がねっとり体に巻きついてる。外出してもドキドキするし、家にいてもドキドキする。。


なんだかなあ。。。


とふてくされていた昨今、日本滞在の際、何度もお世話になってる京都大学の土佐尚子先生から「新しいプロジェクト」の連絡を頂いた。


本当にありがたいことに日本を離れてもこの様にお声掛け頂くことがある。純粋に嬉しい反面なかなか思う様に参加ができない。「日本じゃないし」という己のひがみ気分も邪魔をする。そんなやさぐれ野郎の私にお声掛け下さる土佐先生こそ神である。

どんなプロジェクトなんだろう。。。と思いながら教えて頂いたインスタグラムのURLを開く。

スクリーンショット 2020-07-09 21.36.01


赤ちゃん👶?

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!!!!


正直びっくりした。久しぶりに「叩きのめされる生命力」を味わった。それもそもはず。それは「生命力に溢れたアート」だったから。


そのアートの名は「ubugoe_by_sound_of_ikebana」。

「ubugoe_by_sound_of_ikebana」は土佐先生が創り出す「サウンド オブ 生け花」を活用した事業になります。「サウンド オブ 生け花」は鮮やかな色彩の絵の具・オイルなどの粘性液体に音の振動を与えることによって、各種の色が融合しつつ飛び上がる様を2000フレーム/秒の高速度カメラで撮影したビデオアートです。液体の動きが、自然が作り出す生け花のように見えるため、「サウンド オブ 生け花」とネーミングされています。
 「ubugoe_by_sound_of_ikebana」では、赤ちゃんの産声の振動で「サウンド オブ 生け花」を制作、生命の誕生のエネルギーで、世界でひとつだけの産声の生け花、世界でひとつだけのアートを生み出します。

(以上「ubugoe_by_sound_of_ikebana」プレスリリースより抜粋)


ちなみに私は出産経験者である。今年で14歳になったうちの息子さんの産声はあまり大きくなく、出産後も比較的落ち着いた風貌であった記憶がある。(その後内臓の障害が見つかって速攻でICUに行ってしまった。そして今はとても元気です)。おぼろげな記憶を紐解くと出産に挑んだ時、終わった時、自分が何をしたか順序立てて全く思い出せない。記憶が点でしか思い出せない。飛んでいるのだ。変なことばかり覚えている。


いざ病院と行って向かったら担当の先生(男性)が「先週スノボで骨折しちゃって」と松葉杖で現れたこと、分娩室に行く前にトイレに行けと言われて「この状態でどうしろと」と猛烈に焦ったこと(結果どうしたかは覚えていない)、出産まで女の子と聞いていたらいざ産んだら男の子で猛烈にびっくりしたこと(ちなみに先生曰く「よくわからない時は基本「女の子」と言うそうです)。などなど。


この間10時間くらいあったはずなのに、正直どうでも良いことしか「点」でしか覚えていない。


この「ubugoe_by_sound_of_ikebana」は、実際の出産で録音した産声を使って作品を制作している。どうやって録音してるのかなと思いきや、瞬間はちゃんと病院側が録音してくれているそうだ。これだけでも私の様に出産の時を全然覚えてない人にはとてもありがたい。

そして何より視覚芸術化されてた産声から発信される生命力溢れるエネルギーには正直驚かされた。


この「産声を視覚芸術化」というのは発想はとてもクラシカルである。赤子が発信したものを視覚化する芸術には「筆の制作」や「手形、足形の採取」などが既に行われてきた。今回は声である。その声を基に視覚芸術化して実際に生花に見立てた液体を撮影する。そしてその様は視覚では見えないけど、確かに存在している。


同時に産声という体内から体外という新しい世界への移動のファンファーレを視覚化するというのは新しく設立された国家の国旗や国歌のデザインに匹敵するとても重厚な表現でもある。この子が、この子に関わる人たちが10年後、20年後この映像を、この視覚芸術をどの様な気持ちで見るだろうかと考えるだけでも想像が膨らみ、胸がワクワクする。


新型肺炎で混乱が世界中で続く今、世の中は悩ましいことだらけだ。あまりに悩ましすぎて座り込んでしまいそうだ。でも、この「ubugoe_by_sound_of_ikebana」を見るとなんだか前を向きたくなるそして私は思い出す。子供が産まれたばかりの頃は1つの動作ができる様になっただけでも最高に感動したではないか。あの時の感動は一体どこへ行った。この様に前を向き、前に進もうとしたあの頃を思い出す。


そこで同時に疑問に思う。先日産まれた名前も知らない赤ちゃんの声になぜこんなに心が揺さぶられるのだろう。それは「誰もが聞いたことがある赤ちゃんの声」が視覚芸術化によって脳内で感情の再起動がさせられるからではないか。


脳内に既にある赤子から発せらえる声を聞いた経験。そこから湧き上がる様々な感情。そこから湧き上がる感情には大きなエネルギーが付いている。その湧き上がる感情は明らかに自己から湧き上がった感情である。


私はご縁を頂いて「sound_of_ikebana」の制作を見学させて頂いたことがある。その見学時に感じたのは「一瞬は永遠」ということだ。「sound_of_ikebana」は超ハイスピードカメラで一瞬を撮影している。そして出来上がった作品はその一瞬がまるで絵巻物の様に物語を紡ぎ出す。私は制作を見学させて頂いて本当に驚いた。目には見えないけどそこに存在している世界。時間の概念を超越した世界がそこに確かに存在した。一瞬は永遠だ。見えない内面こそ、宇宙だ。


やっと点と点がつながった。出産の時の曖昧で途切れ途切れの記憶。これが点。この点を繋げ、視覚芸術化してくれるのが「ubugoe_by_sound_of_ikebana」なのではないか。この点を点を繋げた世界から発信されるエネルギー。だからこんなに心揺さぶられるのではないか。


コロナ禍の今、私たちは生きるエネルギーを前に向けることに恐怖を感じている。感染者の数や症状に関しての情報をいつも不安な気持ちで見ている。何か正しくて、何が正しくないのか。このまま進み始めて良いのか、明確にわからない恐怖を感じている。

そんな恐怖を振り払うにはまず己が打ち砕かれる様な生命力溢れるエネルギーが必要だ。

「ubugoe_by_sound_of_ikebana」には人の心を前に向けるエネルギーがある。ぜひ体感してほしい。そしてそのエネルギーを体感して、どんな歩幅でも、どんなスタイルでもいい、「進もう」という意欲が己の中に再生されていくのを体感してほしい。その意欲は今、私たちがそれぞれ手に持つべきものだ。


素晴らしい表現を体感、ご紹介させて頂く機会を頂き大変光栄に思う。ありがとうございました。機会があれば「ubugoe_by_sound_of_ikebana」の制作において制作者としてどの様な点にエネルギーを感じているか、ぜひ土佐先生にお話を伺いたい。