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【新刊試し読み】みやのひろ『言語聴覚士になろう!』「はじめに」を公開します!

4月26日にみやのひろ『言語聴覚士になろう!』を発売します! これに合わせ、本書の「はじめに」を公開します。

失語症、高次脳機能障害、聴覚障害、摂食・嚥下障害、吃音症……。人間の生活に不可欠な「言葉」を研究し、言葉・聞こえ・食べることに障害のある人を支援する専門家の仕事内容から収入までをわかりやすく解説する、なりたい人/目指す人必携の職業ガイドです。ぜひごらんください!

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はじめに

 みなさんにとって、「コミュニケーション」とはなんでしょうか。それは会話であり、意思疎通であり、情報交換であり……と、様々な考え方があると思います。ただ、そこには必ず「言葉」が関係してきます。「言葉」とは、実に不思議なものです。形がなく、目にも見えず、しかも一瞬で認識できなくなってしまう不確かな存在です。しかしわれわれ人類は、その不確かな「言葉」を駆使することによって発展を遂げてきました。

 本書を書いている現在、世界規模で新型コロナウイルス感染症が懸念されています。二〇二〇年四月には、日本でも初となる緊急事態宣言が政府から発出されて、生活パターンの変化を余儀なくされました。学生も社会人も在宅学習、在宅勤務を導入し、多くの人がパソコンやタブレット端末、スマートフォンを使ったウェブ授業やウェブ会議に切り替わりました。私自身も関係機関とはウェブ会議をおこなっています。しかし、世の中にはメールやメッセージ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの文字媒体でやりとりができるツールがたくさんあり、しかもそれらのほうが正確で大容量の情報を伝達できる場合もあります。それにもかかわらず、私たちは、わざわざ顔を見せ合って音声でのコミュニケーションをおこなっています。「言葉」とは、それほど有用なコミュニケーションツールだと感じている証しではないでしょうか。

 このように私たちが当たり前に駆使している「言葉」は、脳や口、耳などの各器官と緻密に連携しながら処理されています。何らかの原因によって、この一連の過程のどこかに異常が生じると、言葉が話せない、音が聞こえないなど〝言葉を使うこと〞に問題が生じます。これらを「言語聴覚障害」といい、私たち言語聴覚士は、医学はもちろん、心理学や教育学などのあらゆる視点から言葉を分析し、言語聴覚障害に対して専門的にアプローチをおこないます。

 本書は言語聴覚士という仕事の紹介とともに、言語聴覚士を目指す人に向けたメッセージを記しています。

 第1章「言語聴覚士ってどんな仕事?」では言語聴覚士という仕事の概要や歴史、主な活躍の場、法律などを、第2章「言語聴覚士になるには?」では言語聴覚士になるための方法や養成校の様子、カリキュラムを、第3章「言語聴覚障害の特徴とリハビリテーション」では脳や口、耳などの構造や機能から、それらが損傷して生じる言語聴覚障害の特徴やリハビリテーションの実践例を、第4章「現役言語聴覚士の仕事風景」では現役の言語聴覚士の体験談を通して、職場での一日の活動内容や言語聴覚士を目指した理由、患者との思い出のエピソードを、第5章「言語聴覚士の適性と心構え」では適性や心構え、学生のうちに学んでおいたほうがいい事柄などを、第6章「資格取得後のスキルアップ」では言語聴覚士の将来のビジョンとして、学会参加や認定制度など、スキルアップの具体例を説明します。

 初めから読んでもかまいませんし、好きな項目をかいつまんで読んでもかまいません。養成校に入学する前の学生はもちろん、養成校入学後にも読み返してモチベーションを高めていけるように、実体験を交えながら〝あるある〞や失敗談なども惜しみなく加え、内容盛りだくさんで書きました。

 私が言語聴覚士という職業を知ったのは、高校三年生の春でした。クラスメートが受験勉強に取り組んでいるなか、いまだに進路に悩んでいた私に親が買ってきた医療・福祉の仕事紹介本の一ページにこの職業が載っていました。初めて「言語聴覚士」という名前を見たときに「よくわからないけど、なんかかっこいい!」と感じた私は、真っすぐに言語聴覚士という未知の世界に飛び込み、気づけばもう十余年。いまもこの道を歩んでいます。本書を手に取ってくれたみなさんに、昔の私のように、少しでも将来のお役に立てればと思い筆をとりました。日本ではまだまだ言語聴覚士の人数が足りておらず、私たちのことを待っている人がたくさんいます。願わくば、本書をお読みのあなたが未来の言語聴覚士として、ともに活躍してくださることを期待しています。

**********************************以上が『言語聴覚士になろう!』「はじめに」です。本書の詳細、目次などが気になった方はぜひ当社Webサイトからごらんください! 全国の書店で予約受付中です。

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