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【横田一】中央から見たフクシマ 77

多くの意味を持つ衆院静岡4区補選


 望月義夫・元環境相の死去に伴う「衆院静岡4区補選(4月14日告示・26日投開票)」は、福島原発事故がまるでなかったかのように原発再稼働に邁進する安倍政権に「NO!」を突き付け、政権交代の気運を高めうる絶好のチャンスだ。中部電力「浜岡原発」(静岡県御前崎市)の再稼働も争点の一つで、野党統一候補の田中健・元都議(42)が「脱原発(再生可能エネルギーへの転換)」を公約にしているのに対して、自民公認で公明推薦の深沢陽一・元県議は再稼働容認の立場で、両者の違いはハッキリしている。

 しかも最大の争点とみられる新型コロナウイルス対策でも、田中氏は「自粛と(休業)補償はセットだ」と強調、休業補償に消極的な安倍政権の方針変更を迫っているのに対し、深沢氏は「市民が抱く不安や不自由の声を幅広く聞いて政府に届ける」と中央とのパイプの太さを訴える一方、「望月先生の後任として、しっかりと責任を果たさなければいけない」と弔い合戦を前面に出す対照的な選挙戦をしていたのだ。

 そして野党第一党の枝野幸男・立民代表も「感染拡大防止と緊急経済対策は多くの有権者が関心を持ち、与野党の違いが明確」(4月7日の会見)と争点化に意欲を見せる中、同党の大串博志幹事長代理は4月11日に現地入り、富士宮駅前で“アベノマスク”をこう批判した。

 「安倍政権の対策は後手後手で場当たり的。布マスク配布に466億円を使うのなら、医療体制強化や検査数増加や生活費支給をしてほしい。補選は安倍政権が是か非か判断する国政選挙。『安倍総理は何をやっているのだ!』という声を田中候補に託してほしい」

 続いてマイクを握った共産党の小池晃書記局長も、自粛と補償がセットでないことが最大の問題と指摘した上で、「補償なき緊急事態宣言では命は守れません。この補償を実現する願いを田中健さんに託して下さい」と訴えた。これを受けてマイクを握った田中氏は、衰退していく故郷を再興したい思いから静岡に帰って来たと出馬の経緯を語った上で、こう意気込んだ。

 「安倍政権を倒すチャンスということで野党が一致しました。皆さんの思いを背負って、静岡から日本を変えていく戦いにしていきたい」

 安倍政権打倒の狼煙を静岡から上げて、政権交代を実現しようと訴えたのだ。野党陣営をさらに勢いづかせる道筋ができる可能性も出てきた。これまで「消費税5%減税」を野党共闘の条件にしていた山本太郎・れいわ新選組代表が、補選で消費減税も訴えている田中氏への支持表明をすれば、次期総選挙での独自候補擁立をやめて“野党同士討ち”が回避されることになるからだ。

 そこで私は、11日の街宣後の囲み取材で大串幹事長代理に「田中候補は消費減税も訴えているが、山本太郎代表に改めて協力要請を呼びかけることはないのか。今までは消費減税が(れいわを含めた野党選挙協力の)ネックだったが、田中候補はクリアしている」と聞いてみた。すると、前向きの回答が返って来た。

 「『山本太郎氏が安倍政権と対峙していきたいと考えている』と思うので是非、協力してほしい。田中候補も消費減税を訴えているので是非、山本代表には応援してほしい」

 今回の補選を機にれいわが野党陣営に加わるようになれば、次期総選挙での政権交代の追い風になるのは言うまでもない。アベノマスクなど安倍政権(首相)の新型コロナウイルス対策への審判と同時に、今後の野党共闘を占う試金石の意味も併せ持つ静岡4区補選の結果が注目される。


フリージャーナリスト 横田一
1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた「漂流者たちの楽園」で1990年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。


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