見出し画像

違和感覚える 帰還困難区域「未除染解除」 (7月のわだい)

 原発事故に伴い、帰還困難区域に指定された区域で、除染を実施していなくても放射線量が基準を下回っている場合は、避難指示解除できるようにすることを政府が検討していることが6月3日に分かり、同日のオンライン版、翌4日付の紙面で各紙が報じた。

 帰還困難区域は文字通り、住民が戻って生活することが難しい地域で、しばらくは手付かずの状況だった。東電は2014年3月、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針第4次追補(2013年12月26日決定)に従い、帰還困難区域の対象住民に、精神的損害賠償の追加の形で「移住を余儀なくされたことによる精神的損害賠償」を支払った。

 少なくとも、この時点では「帰還困難区域の対象住民は戻れないので、他所で生活再建してください」といった判断だったのだ。

 ただ、2017年5月に「改定・福島復興再生特別措置法」が公布・施行され、その中で、帰還困難区域のうち、比較的放射線量が低いところを「特定復興再生拠点区域」として定め、同区域整備のための計画を策定し、除染や廃棄物処理、家屋解体、各種インフラ整備などを実施した後、5年をメドに避難指示を解除し帰還を目指す――との方針が打ち出された。

 これに従い、帰還困難区域を抱える町村では、特定復興再生拠点区域を設定し、「特定復興再生拠点区域復興再生計画」を策定した。
 帰還困難区域は全体で約337平方㌔で、このうち復興拠点区域に指定されたのは約27・47平方㌔(約8%)。JR常磐線の駅周辺は、同線開通に合わせて今年3月に解除され、そのほかは2022年から2023年を目安に解除される予定で事業が進められている。

 そんな中、冒頭で紹介した方針が明らかになったのだ。

 きっかけは、飯舘村が今年2月に復興拠点だけでなく、それ以外も含めた帰還困難区域の一括解除を国に求めたこと。それは、「除染最優先の方針を曲げてでもそうしてほしい」というものである。

 同村の帰還困難区域は村南部の長泥地区が該当する。全体で11平方㌔あるが、復興拠点に設定されたのは1・86平方㌔(17%)。これを復興拠点だけでなく、一括解除したい方針を示し、村は6月3日に復興拠点外の住民を対象に説明会を開いたところ、前述の方針に対象住民から異論は出なかったという。

 これに翻弄される形になったのが、帰還困難区域を抱えるほかの町村。6月6日に開かれた復興庁、県、原発被災市町村のオンライン会議で、内堀雅雄知事は「飯舘村は特殊事例」との認識を示し、帰還困難区域を抱え「特定復興再生拠点区域復興再生計画」を策定した浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、葛尾村は、従来の方針通り、除染を実施した後の区域全体の避難解除を求めた。

 浪江町6月議会では議員発議で「帰還困難区域特定復興再生拠点『区域外』の早期除染と整備を求める意見書」が可決された。同町の帰還困難区域の対象住民に話を聞くと、「除染なしでの避難解除はあり得ない」との見解を示した。

 除染を含む環境整備より、早期解除を優先するやり方は明らかにおかしい。そもそも、帰還困難区域(放射線量が高いところ)に住民を戻すことが妥当なのか。それも除染などの環境整備をせずに解除するとなればなおさらだ。

よろしければサポートお願いします!!