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【福島県測量設計業協会】皆川雅文会長インタビュー

 近年、県内では東日本大震災や令和2年東日本台風など、大規模災害が頻発している。その際、社会インフラ復旧工事の端緒を担うのが測量設計業務である。一般社団法人・福島県測量設計業協会の皆川雅文会長に、昨年10月に発生した令和元年東日本台風後の活動や、同協会の今後の取り組み方針などについて話を聞いた。

 ──昨年10月の令和元年東日本台風により県内インフラは多大な被害を受けました。測量設計業協会では県との災害応援協定等に基づき、復旧に向けた業務を担当しているそうですが、この間の業界の動きについてうかがいます。

 「発災直後の昨年10月13日から、県との災害応援協定に基づく災害箇所調査要請が協会各支部に出され、県との協定に基づいて活動したのが34社、市町村の要請で活動したのが5社でした。

 主な活動内容は被災箇所の把握と災害査定に向けた第1報に関する資料作成、応急工事に関する資料作成、UAVによる空中写真撮影など、被災箇所と被災額の把握に大いに役立てたと考えています。

 平成23年の東日本大震災やそれに続く平成23年7月福島新潟豪雨、平成27年9月関東東北豪雨を経験していたこと、平成30年の西日本豪雨などで他県の測量設計業協会などの活動を見ていたことから、一日も早く復旧工事のための測量設計をするためには、全国の企業に協力要請する必要があると判断し、全測連に支援要請を行いました。

 また、県内企業においても、比較的被害の少なかった会津若松支部と喜多方支部から、被害が甚大だった中通り地方と浜通り地方へ応援を出すことにしました。

 国の災害査定では、公共土木施設が県と市町村管理合わせて2741カ所で決定額が890億円、農業用施設と林道施設のいずれも過去と比べて甚大な被害となりました。これだけ多くの災害箇所について、発災から約4カ月の間に国の査定を完了させることができたのは、全国からの支援の賜であり、この場を借りてあらためて感謝の意を表させていただきます。また、会員企業の皆様にも昼夜を問わずご尽力いただいており、それを支える家族の皆様、関係者の皆様、全ての方に御礼申し上げるしだいです。

 一方で、災害時の対応の課題も顕著になっています。今回の災害では被害が県内全域に及び箇所数が膨大なこともあり、全国から応援を頂きましたが、全国的に測量設計業の維持や技術者の確保は厳しい状況にあります。福島県でも今後の建設投資額の増加が見込めない中、技術者の確保がより困難になっていくと思われます。災害から郷土を守るためにも、会員数の維持は重要な課題で、今後持続可能な経営を続けるため、協会として様々な支援を行っていく必要があると強く認識しています」

コロナ禍での役割

 ──協会では継続教育制度(CPD)によって会員企業の技術力向上などに努めています。その成果や取り組み概要についてお聞かせください。

 「平成17年に公共工事品確法が制定され、この中で、受注者は工事を適正に実施し、かつ技術的能力の向上に努めなければならないと定められています。これらを踏まえ、測量設計業協会の会員企業の技術力向上を目指し、平成19年度からCPD制度の運用を開始しました。当協会のCPD制度では、会員へ研修会等の学習機会の提供とともに、ほかの研修も含め会員の実績を数値化し登録することで、学習意欲の向上と発注者や一般の方々に当協会員の研鑽の状況を理解し、適正な評価を受ける狙いがあります。

 協会のCPD制度の構築から13年が経過しますが、この間に高度経済成長期に整備された公共施設の老朽化、地震や豪雨による自然災害の頻発により、公共施設の長寿命化と強靭化が社会的要請となっています。これに応えるためには、限られた予算内での効果的な社会資本整備と技術者の絶え間ない研鑽が不可欠です。

 このため、協会では最新技術や行政情報を会員へ提供するための研修会を開催するとともに、CPD制度により学習状況を発注者に提供するなど、技術の向上とその状況の公開に努めてまいります。

 このほか協会では『技術士』、『RCCM』や『ふくしまME(メンテナンスエキスパート)』など、測量設計に関する資格取得の奨励など、会員の技術向上とともに県内の公共施設の品質向上にも積極的に貢献していく考えです」

 ──そのほかの重点事業についてはいかがでしょう。

 「まず1つ目が経営基盤の強化及び環境の改善で、成果品の品質向上や経営環境の改善を図るため、業務執行上の課題や技術的事項について、協会の実務者研究会で調査検討するとともに、関係機関への要望や意見交換会などの機会を捉え働きかけていきます。

 実務研究会での活動内容は、人材育成部会では若手人材の確保について、ICT部会ではドローンの活用状況や3次元設計についての調査・情報共有、災害対応マニュアル部会では災害測量設計マニュアルの見直し、令和元年東日本台風に係る災害対応の検証といったものを重点的に進めてまいります。

 二つ目が郷土への奉仕で、『測量の日』事業として県民への測量事業への理解と啓発のため、ダム祭りにおける測量体験の実施、河川クリーンアップ作戦や道路美化作業といった清掃活動、次世代を担う技術者育成のためにインターンシップの受け入れを行うなど、一般社団法人として公益的な事業に積極的に取り組んでいきます」

 ──今後の抱負についてうかがいます。

 「今般の新型コロナウイルス感染症の蔓延により、全世界の社会活動は制限を余儀なくされ、経済と生活へ非常に厳しい影響を与えています。
 一方で、経済が停滞している状況であっても、物流や災害への備えなど、公共施設の役割の重要性は何ら変わらないと考えています。社会資本の整備と維持管理は、外出制限が出ても続ける必要があり、我々はできる限りの予防措置を講じながら事業を続けています。しかし、説明会や用地立ち合いなど人を集める機会や遠方からの移動が必要なものもあり、さらに工夫しなければこれまでのような早さで事業を進めることはできないと感じております。

 現在は手探りで安全処置を講じながら活動しているところですが、今後も協会が情報を収集しながら効果的な手法を会員へ提供し、協会一丸となってこれを克服し、安全で安心して暮らせる郷土づくり、持続可能で発展する郷土づくりに貢献していく所存です」


みなかわ・まさふみ 1961年生まれ。2001年から皆川測量代表取締役。16年5月から一般社団法人・福島県測量設計業協会副会長を務め、18年5月から現職。

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