【福島県コロナ特集】北塩原村観光業給付金に不満の声ー対象は裏磐梯観光協会加盟者のみ

 北塩原村が新型コロナウイルスの影響で売上高を落とした飲食・宿泊業者を対象に給付金を支給している。そのことをめぐり、一部事業者から不満の声が出ている。全事業者への一律支給ではなく、条件が設けられたためだ。

 給付金事業の正式名称は「北塩原村飲食・宿泊事業継続支援給付金事業」。裏磐梯地区をはじめとした村内の観光業関係の事業者に対する緊急支援策として、20万円を支給する。財源は2020(令和2)年度一般会計補正予算で、事業費1620万円。5月22日の同村議会臨時会で議決された。

 同村ホームページによると、支給条件は①飲食業・宿泊業を営んでいる法人・個人事業主、②経営者が村内居住者もしくは事業所の所在地が村内、③裏磐梯観光協会加盟事業所、④申請は法人・個人事業主単位、⑤村税の滞納がないこと――など。

 国内でも屈指のリゾート地である同村裏磐梯エリアは県外からの観光客が途絶えたことで静まり返り、観光業者は苦境に立たされていた。そうした中でこの給付金事業は歓迎されたが、支給条件の①と③に対し、一部観光業者から不満が噴出した。

 と言うのも、村内には飲食・宿泊業以外にもキャンプ場や遊覧船、貸しボート、ガソリンスタンドなど、観光客減少による売上高激減に苦しんでいる業者が多い。また、「年会費を払って同協会に名を連ねていてもメリットがない」とあえて加盟していないところも少なくない。にもかわらず、条件を付けて支給対象を制限したため、「みんな困っているのに不公平だ」と反発したのだ。

 同協会事務局によると、現在の会員事業所数は103事業所。そのうち支給対象となった飲食・宿泊業は約80事業所。つまり約20事業所が涙をのんだことになる。加えて同協会に加盟していない事業所も多数あるようだ(実質的に廃業しているところも含まれるので正確な数値は不明)。

 6月15日に行われた同村議会6月定例会の一般質問では、同事業の支給条件設定に唯一異議を唱えていた伊藤敏英村議がこの件を蒸し返し、「村内事業所から不公平だという声が出ている。給付金を一律に支給すべきではないか」とただした。

 これに対し、村商工観光課長は「協会はこの間さまざまなイベントで村の観光を盛り上げていただいているが、直接的に支援する機会がなかったのでひとまず給付金の対象とすることを提案し、臨時議会で議決していただいた」と説明。小椋敏一村長は「まんべんなく支給するわけにもいかないので条件を付けた。国からの交付金など財源のめどが立てば、今回支給対象外となった事業所に向けた第2弾の給付金も検討したいと考えている」と答弁した。

 ただ、支給対象から外れた事業所の不満は燻り続けており、一部の事業者らは〝線引き〟されたことに納得できず、小椋村長宛てに質問書を送り付けたという。

 給付金に関する不満の声について、同協会の浅沼泰匡会長(裏磐梯レイクリゾート総支配人)にコメントを求めたところ、次のような回答が寄せられた。

 「(給付金については)新型コロナウイルスの影響で、ダメージを受けている事業にとって、とても助かる給付金だと思います。(〝線引き〟への不満については)村から給付の取りまとめを依頼されているだけなので、お答えできることはございません。協会では年2回のクリーンキャンペーン、桧原湖1周ファミリーサイクリングといったイベントなど、裏磐梯の認知度の向上と観光推進を会員の皆様と協力し行っています。非会員の方も裏磐梯の観光発展という目的は同じだと思うので、協会に加入していただいて、一体となって協力していければと考えています」

 〝線引き〟されるのが嫌なら協会に加盟すればいいのに、と遠回しに述べているわけ。

ナンセンスな条件設定

 ある協会加盟事業所の経営者も「協会にはさまざまな試行錯誤を繰り返しながら、イベントを定着させ、裏磐梯観光を盛り上げてきた実績がある。それが村から評価されたということ。給付金が欲しければ協会に加盟すればいいだけの話です。会費支払いや活動への協力を拒んでおきながら、『困ったときは助けてほしい』と主張するのは違和感があります」と言い切る。

 複数の観光業関係者によると、同村の観光・宿泊業者は、同協会内での人間関係や意見の食い違い、村内の政治的対立から、一つにまとまりにくい状況が続いているという。そうした中で村が〝協会寄り〟の支援策を出したため、物議を醸した面もあったようだ。

 本誌としてはそのどちらかに肩入れするつもりはないが、客観的に見て、困窮している事業所への緊急支援をうたっておきながら、条件を付けるのはナンセンスだと感じる。仮に支給対象を50事業所上乗せしたところで事業費は3000万円にも満たない。

 いわき市でも売上高が半減した旅館業者に対し収容人数に応じて最大60万円を給付する事業を行っているが、その対象は「いわき市旅館・ホテル業連絡協議会か福島県旅館ホテル生活衛生同業組合、いわき観光まちづくりのいずれかに所属する事業者」と、幅広く設定されている。

 財政規模が違ういわき市とは比較にならないかもしれないが、「緊急支援」をうたうなら、中途半端な対応をせず、村独自で財源を捻出し、観光関連事業者に一律給付すべきだった。金をケチったせいで、余計な火種を生み出した印象は否めない。

※国は飲食店支援として、家賃負担を6カ月分(法人は最大600万円)軽減する「家賃支援給付金」も設けたが、受け付け開始は7月以降となる見込みだ。

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