見出し画像

【春橋哲史】フクイチ事故は継続中⑦-国富を無駄遣いする原子力複合体

国富を無駄遣いする原子力複合体

 東京電力・福島第一原子力発電所(以後「フクイチ」と略)で、過酷事故が発生してから約9年7ヶ月が経過しました。

 今回は、ポスト3・11の日本の原子力を巡る状況を俯瞰してみます。

 端的に書くと、私は「原子力の利活用は時間が経つほど困難になっている」と評価しています。

 3・11前と後では、日本の電力需給の環境は大きく変わりました。

 首都圏(都市圏としては、人口・経済規模で世界最大)を含む東日本(注1)は、8年以上「原発ゼロ」が続いています(まとめ②を参照)。

画像1

 又、3・11前、原発による発電量は年間2800億kWh(キロワットアワー)前後で、発電総量の約25%でした。それが、2019年度では610億kWh強です。発電量で約5分の1、比率にして約4分の1に過ぎません(まとめ①を参照)。

画像2

 3・11前に年間1兆kWhを超えていた電力需要も、2019年度には過去10年間で最低の約9500億kWhとなっています。コロナ禍や人口・世帯数の減少を考えれば、需要の縮小傾向は今後も続くでしょうから、巨大電源である原発の必要性は薄れていく筈です。

 原発の利用率・稼働率も低くなっています(注2)。

 3・11発災当時、稼働準備中・稼働可能・稼働中の原発は54基・合計出力4896万kW(キロワット)でした。それが、発災9年後の2019年度末時点で稼働(営業運転)可能な原発は6基・648万kWに過ぎません。残り48基の内、21基・1588万kWは廃炉となり(フクイチ1~4号を含む)、27基・2660万kWは稼働できない状態です(仮処分が下されている伊方3号[四国電力]を含む)。

 更に、この27基・2660万kW中、3基・330万kW(柏崎刈羽2~4号[東京電力])は稼働停止期間が10年を超えています。今年度末には「停止期間10年超のプラント」の合計出力が1000万kWを突破する見込みです。

 関西電力と日本原電は、美浜3号、高浜1・2号、東海第二について、原子力規制委員会から20年延長運転(=60年運転)の認可を受けていますが、4基とも「停止期間10年前後」に及んでおり、且つ「運転開始から40年以上が経過している」プラントです。運転経験のある操作員も退職していくでしょうし、設備の劣化・老朽化も進んでいくでしょう。

 その他にも、3・11前には想像もできなかったことが続出しています(まとめ②参照)。

 2014年度の日本は「原発ゼロ」となり、14年4月には函館市が大間原発(電源開発)の建設凍結を求めて提訴しました(注3)。

 2016年12月には高速増殖原型炉「もんじゅ」(原研機構)の廃炉が決まりました。

 2014年以降、原発の運転差し止めを命じる司法判断は4回に及び、19年秋には関西電力の信頼を根底から揺るがすような金品受領問題が発覚しています。

 今年1月には伊方3号でトラブルが多発し、定期検査が半年以上に渡って中断されました。

 新設も事実上頓挫しており、東通原発(東京電力)・大間原発の工事中断期間が10年を超えるのは確実で、上関原発(中国電力)は計画だけの状態が続いています。

 こうして事実を並べてみると、「原子力複合体」(注4)は実現性が不透明で不確実性が高いものにリソース(注5)を投入し続け、国富を無駄遣いしています。何より、原発を利活用し続ける限り、過酷事故が起こる可能性は否定できません。

 「核災害は不可逆的なもの(=取り返しがつかない)」「絶対の安全は無い」。

 右はフクイチ事故で証明済みであり、最大の教訓です。

 一刻も早く、動力源・エネルギー源としての核技術の利活用は法的に禁止し、国のリソースは、フクイチを含む全国の核施設の廃止措置に振り向けるべきでしょう。

 注1
 東日本=ここでは、電源周波数50Hz(ヘルツ)で供給されている北海道電力・東北電力・東京電力の管内を指す。

 注2
 原発の設備利用率は2010年度が約67%。19年度が約21%(日本原子力産業協会)。

 注3
 東京地裁で係争中。詳細は

私は「ふるさと納税」で微力ながら訴訟費用を支援している。

 注4
 原子力複合体=「軍産複合体」になぞらえた言葉。私は「原子力ムラ」という言葉はなるべく用いないようにしている。

 注5
 リソース=「人材・資機材・資金・時間」に、「政治的エネルギー」も加えた意味で用いている。


通販やってます!



Twitter(是非フォローお願いします)


facebook(是非フォローお願いします)


Youtube(チャンネル登録お願いします)


HP


よろしければサポートお願いします!!