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注目の<ステイ・ホーム大統領就任式>にレディ・ガガ登場! その意味って何?/『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』

来週、2021年1月20日、アメリカ合衆国第46代大統領就任式が行われます。いつもなら、多くの人が新大統領の就任を祝うためにワシントンDCに詰めかけますが、今年は「ステイ・ホーム」が呼びかけられ、式の8割がバーチャルで開かれる予定です。そんななか、就任式に登場するアーティストが発表されました。ひきつづき、『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』の著者、藤田正さんにお話を伺います。

ーージョー・バイデン新大統領の就任式でレディ・ガガがアメリカ国歌をうたいます

藤田正さん(以下、藤田) 森さんの予想、ズバリだったじゃん。バイデンが大統領選に勝ったら1月20日の就任式でうたうのは彼女だと、昨年(2020年)から言ってたもんね。『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』でも詳しく触れたたけど、この式典って、国家最大の権力者がどのような人たちに目を向けているかを発信する重大なイベントです。バラク・オバマと、ビヨンセ、アレサ・フランクリンの関係が最近では一番に象徴的だった(245ページ~)。今回、民主党の大統領が勝利して、やっぱり女性へ、さらに力点が移行している。主要閣僚を眺めてもそうだし。ブラック・ライヴズ・マター運動が女性~LGBTQの人たちの行動力抜きに語れないのと、同じ潮流です。ちなみに、同就任式のミュージカル・パフォーマンスを披露するのはプエルトリコ系ジェニファー・ロペスだね。

――レディ・ガガは昨年11月の大統領選直前、ペンシルベニアでのバイデン陣営最後の集会の際にも応援に駆け付け、歌を披露していましたからね。

藤田 単なる有名人の名前貸し、じゃないからね。はっきりとした主張をもとにした政治行動です。テイラー・スウィフトもそう。彼女の反差別に対する明確な言説は立派なことです。

レディ・ガガ/バイデン応援のパフォーマンス @ペンシルベニア

――日本じゃ芸能人がちょっとした政治的な発言をしただけで、大騒ぎですから。「政治」は私たちの「暮らし」を決めるわけだから、国民のひとり、生活者のひとりとして、アーティストだろうと誰だろうと、疑問があるならちゃんと声をあげることはいたって当然のことだと私は思っています。

藤田 日本は、オカミには黙っていろ、という暗黙の圧力が強い社会だから。すべてではないにしろ、特に芸能界はね。その裏側には芸能人差別が張り付いている。日本国民として恥ずかしいことだけど、ずっと問題になっている「桜を見る会」と関連させて考えたらいい。あの、最高権力者の周囲に群がり写真に写ろうとした芸能人の、尻尾を振りまくるメンタリティこそ問題にすべきだよ。「桜」は極めて政治的なイベントだし、膨大な税金を好き放題に使って権力者の宣伝のために投入された。仮にこのイベントがアメリカにあったとしたら、嬉々として出席した芸能人やスポーツ選手らに対して、「桜の問題」をどう考えるのか、公的に追及されるはずです。

――ビヨンセにしてもレディ・ガガにしても、権力に媚びへつらって現在の地位を築いた芸能者じゃないから、就任式典における登壇は、日本の「桜」の芸能人とはまったく次元が異なる心意気ですよね。

藤田 そうです。あと、これも『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』を読んで欲しいんだけど、同じ日に行われる大統領夫妻による「ファースト・ダンス」のために、誰がどの歌をうたうか。これも単なるお祝いじゃない。

――注目です。本書にはちゃんと触れていますが、ソウル・ミュージックの女王がアレサ・フランクリンからビヨンセへ、実質的な世代交替が「正式」に行われたのもこの1日だった。

藤田 オバマ大統領の政権は、黒人文化の根本的な変化をも演出していた。となると2021年1月20日はどうなるのか?ですよね。ただトランプと、その支援者らしき超差別主義者の大群がどう行動するのか、これも目が離せない。当日は2万人以上の州兵がワシントンDCに駐留する予定だから、目が離せません。


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