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七夕の願い

 私が清華苑に入職するきっかけとなったのは、祖父母の影響が大きかったからです。
 
 仕事をしていて本当に意味がある仕事をしているんだなと感じたのは、自分の身内が実際に介護となった時「介護」という物がどういう事なのか分からない家族にとって私はとても頼もしい存在だと言われた事でした。

 縁があって自分の身内母親の祖母を自分が働いている特養へお願いする事となった時は本当にありがたい気持ちと複雑な気持ちが入り混じっていました。
 職場の人には自分の身内だという事は最初の頃は伏せてもらっていました。なぜかと言うと自分の身内だという事で周りが気を使いとてもやりにくいのではないか?と思ったからです。実際は、そんな心配をする必要もなく、人当りが良く元気な祖母は瞬くまに職場のスタッフの人気者になりました。
 
 祖母は人のお世話をしたり、冗談を言って人を笑わせたりするのが好きで、職場のスタッフの子が顔色が悪いのを見つけると他の職員を捕まえて「この子、顔色悪いからあんた掃除変わったって」といったり、私がまだ独身なのを気にして職場の結婚している男性職員を捕まえて「あんた、この子どないや」と言ったりと毎日が笑いの絶えない日でした。
 
 仕事に行けば祖母が笑顔で「おはよう」といってくれる。帰りは私が見えなくなるまで「気をつけて帰りよ」と手を振って見送ってくれる。そんな人がいるという幸せを職場という場所で贅沢ですがかみしめていました。

 ですが、元気だった祖母もターミナルを迎える事となり、正直私は心の整理ができませんでした。最後を見送るという事がどんなに辛い事か、今まで近くにいた人がいなくなってしまうという悲しみ。

 静養室で祖母に最後の食事をあげながら「ありがとうな」とか細い声で言われた時は特養で一緒に過ごした思い出があふれ出て、涙が流れました。ちょうど亡くなる前は七夕があったので、願い事が聞けるかどうか分かりませんでしたが、祖母に願い事の確認をしてみました。すると、小さな声で「皆が幸せになりますように」でした。

 これは、今まで暖かく祖母をサポートしてくれた職場の皆に感謝を述べていたのだと思います。

 身内を最後まで介護し見送るという貴重な時間を過ごす事ができたのは、特養の全スタッフの協力があってだと今でも感謝しています。
祖母も幸せだったと思います。ありがとうございました。

特別養護老人ホーム 清華苑
徳田芽久美


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