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成城大学が誇る、歴史ある芸術作品をご紹介

成城大学には学びや研究に必要な資料が所蔵されています。中には、歴史的にも貴重な芸術作品が含まれることも。
広報誌『sful-成城だより』でこれまでに掲載した記事から、成城大学が所蔵する、美しい貴重書をご紹介します。

『怪奇鳥獣図巻』

これは、江戸時代に描かれた『怪奇鳥獣図巻』(かいきちょうじゅうずかん)です。
右側が人間の言葉が分かり、徳の高い為政者の治世に姿を現すとされる神獣、白澤(はくたく)、そして、左側が一日に千里を駆け、生きているものを食べず、生えている草も踏まない仁獣、騶虞(すうぐ)です。ほかにも、頭は駝(らくだ)、角は鹿、項(くび)は蛇、爪は鷹……。なんとも不可思議な鳥獣虫魚や怪奇な合成獣、異様異体の鬼神たちが76種も登場します。
この絵巻の作者は分かっていません。確かなのは、ここに描かれているものの多くが、中国最古の地理書といわれる『山海経』(せんがいきょう)に登場する、中国の妖怪を下敷きにしていることです。『山海経』が日本に伝わったのは奈良朝時代以前とされており、江戸時代には和刻本も発行され、広く世間にも知られていました。『怪奇鳥獣図巻』はこの流れで生まれたもののようです。
サイズは、縦27.5センチメートル、長さ13.12メートル、各絵の上部には鳥獣の名称と説明書きが記されています。国内唯一の伝本です。
(参考文献/『怪奇鳥獣図巻』2001年、工作舎)

『The Wood beyond the World』

こちらの壮麗な書籍は、19世紀後半に活躍したイギリスの工芸家・詩人・思想家であるウィリアム・モリスが手がけた『The Wood beyond the World』です。主人公の若者ウォルターが美しい貴婦人と乙女と小人という謎の三人連れに誘われて不気味な森に迷い込んでいく、ファンタジー文学です。
壮麗な挿絵でぜいたくに彩られ、ゴールデンやトロイ、チョーサーなど活字体も効果的で、中世の神秘的な世界を表現しています。
家具や壁紙など調度装飾品のデザイナーだったモリスは、1891年に書物の装丁・レイアウトから印刷までを担う印刷所「ケルムスコット・プレス」を設立しました。時代は産業革命で機械化が主流となっていましたが、モリスは手仕事の美しい書物づくりにこだわり続け、さまざまな作品を世に送り出します。
発行は1894年、刊行された書物は全部で53部66巻です。成城大学図書館には、そのうち9冊が所蔵されています。
(参考文献/『ウィリアム・モリスのこと』1980年、相模書房)

文=sful取材チーム 写真=岡村隆広
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