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少女:主役でない登場人物(下書き)

 今書いている中に主人公でない少女(年齢不詳)を一人登場させています。少女は娼婦です。後半になると突然いなくなります。私はこれまで若い登場人物をほとんど書いた事がありませんでした。なぜなら自分にあまり興味が無いからです。今回はちょっと極端ですが、娼婦として登場させます。娼婦と少女というイメージのコンフリクトを作りたかったので登場させました。倫理的に問題が無いとは言えないので完全に子供ではなく、痩せて成長の遅れた若い女性だと考えています。また、それとは別に、前に書いた小説と違ってこれでは性器の細かい描写はしない事にしていますからその点では軽めだと思います。

 以下はもちろんいつものように下書きでちゃんと校正していないのでタイプミスや言い回しにおかしいところがあります。

注意: 以下、18禁です。

<葬式を見ている時に登場>

 「たぶん2日経ったらね、この人の身体は河の水に乗って遠いところへ行くのよ。」

 いつの間にか僕たちの後ろに立っていた少女がそう言った。十分にお金があれば薪も多くて4日間かけて火葬にされるけれど、この薪の量ならだいたい2日間だと言う。彼女が言う遠いところとはどこを指すのかと聞いてみた。

 「神様がいるところに決まってるじゃない。心はいつでも神様のところへ行けるけど身体は重いから水が運ぶの。」

 少女は自分を娼婦だと紹介した。そして火葬場のすぐ横には幾つもの見すぼらしい小屋が建てられていて、そこで暮らしているのだと言った。見ればそれぞれの小屋の前には一人か二人の女がいて、ぼんやりと座っていたり話し込んでいたりする様子が見えた。少女と同じかそれより少し年上の女の子も何人かいた。僕らは少女について歩き、少女の小屋に行った。中は暗く、薄い汚れた布団が敷いてあり少女の着替えが張られた紐に掛けられていた。少女は土でできた小さな湯呑に薬缶からお茶を注いでくれた。薄いミルクと砂糖に混じって鉄の味がした。僕たちが一口飲んで目を上げるととても嬉しそうに注ぎ足してくれた。僕と彼女は少女に質問した。少女はわかるところだけ答えてくれた。

 「将来の事って、ここに来る観光客は皆そんな事を聞くわ。不思議ね。そんなの神様にしかわからないのに。私はずっとここにいて男の人を待ってるだけ。男の人は心の中で神様が何かつぶやくとここに来なきゃいけないって思って来るの。来たら男の人はリンガを大きくして私のヨニに入れるの。そして上手くいったときには私と男は一緒に神様のところに行ける。あまり上手くいかなかったら、たぶんどっちか片方だけ。この世界ってどうしてもそんな仕組みになってるじゃない。だから私はここにいるってわけ。あなたたちのところだってそうなってるはずよ、違う?」

 僕も彼女もそう返されて返事に困ってしまった。僕たちの捉えている社会はそんなに単純な気はしなかったから。僕たちと少女が話しているところに太った女がやってきて割り込んだ。僕たちがまるでここにいないかのように少女にだけ一言二言何か言った。少女は女のやってきた方を一瞥するとさよならと手を振った。すぐに少女の身長の2倍もありそうな大男がやってきて狭い入口で身体を屈めて中に入って行った。少女も後から這うようにして入って入口に布を掛けてしまった。僕たちは宿に帰る事にした。


<タントラを見た後で>

※冷静に考えると、この場所に現れるのはちょっとおかしのです。娼婦として働かされているわけですから。でも、あえてここに出てきます。出てきて消えるところは他のどこかの場面と似ています。

 僕と彼女は宿に帰る事にして元来た歩道の方へと歩いた。

 「どうだった?」

 聞き覚えのある声がした。なだらかな斜面に犇(ひしめ)き合って建っている家々から漏れる蛍光灯の白い光の中に黒い小さな影像が浮かび上がった。僕たちの答えを待たずに少女が喋り始めた。

 「あの人達は、『聖なる』行為をしているつもりね。私なんかあんなまどろっこしい儀式をしなくてももっと簡単に神様のところへ行けるわ。なのに、あの人達は私の事をいつも『汚い』って言うの。私ならあの人たちが1回行く間に3回も行けるのに。おかしいわね。」

 それだけ言うと少女は白い光に紛れてどこかへ行ってしまった。


<客をとっている様子>

 この場面では大して話もしないし活躍もありません。でもその動きが必要と考えています。

 夕食を早めに食べ終えて、僕たちはまたあの少女のところへ行った。少女の小屋の出入口の布は閉まっていたけれど、時々内側から人の身体の一部がそれに触れて揺れた。少し離れたところから見ていると、太陽がじりじりと動いて山の稜線に差し掛かり小屋全体を赤く染めていった。真上の空は急激に黒さを増した。小屋の前に掛かった布が開いて、裸の男が身を屈めて出てきた。屈めていた身体が伸びると胸から下腹部にかけて絨毯のように繋がった毛の下端にだらりと下がるペニスが露わになった。その先から粘り気のある白い液が数滴地面に垂れた。小屋の色口あたりを手で探って全身を覆うだぶだぶの布袋のような服を頭から被り、両手でパタパタと埃を落とすような仕草をしてから少しも振り返る事無く立ち去った。少女がなかなか出てこないので小屋まで行って外から声をかけた。

 「ああ、あなたたち、来たのね。いるわよ、私。」

 疲れた声だった。少女は入口の布を片手で避けて三角形の隙間を作ってこちらを見た。敷かれている薄い布団から上半身を起こし、服を着て外へ出て来た。今の客は昼過ぎから今までずっとで、長かったのだと言った。

 「私、今日はもう何回神様のところに行ったのかわからないわ。10回か20回か、わからないわ。だからちょっと疲れちゃった。」

 僕らは持ってきたお菓子の包みを広げて少女に差し出した。少女は美味しそうにパクパクと食べていた。ひとしきり食べたところで僕たちの顔を見てこう言った。

「今日はあなたたちも神様のところに行ってきたのね。安心したわ。神様は私にはたくさんくれるけど、あなたたちには何もくれないのかおと思ってたから。」

 彼女は顔を赤らめて少しだけ俯いた。

 「あっ、またお客が来たみたい。」

 娼館の女と客の男が夕日に照らされたおかげで真っ赤になって近付いて来るのが、急激にあたりを支配し始めた黒を背景にくっきりと浮かび上がった。少女はぴょんと飛び上がるようにしてその場に立ち、身に着けた布を肩から一辺に全部まとめて地面に落とした。華奢な子供っぽい裸が現れた。猫の毛のように細くて乏しい陰毛が下腹部を申し訳程度に隠しているだけだったから細い線の切れ目がちょうど座っている僕の目の前に来た。少女は気にもせず小屋の横に置いてあったバケツの水でざっと身体を流した。それから股を広げて切れ目に指を突っ込んで客の残していった精液を丹念に掻き出した。少女が指を外に出してプルプルと振る度に無数の白い水滴があたりに散って、夜の空に広がった。少女は客が来ると小屋に入ってしまった。


<突然いなくなったところ>

 ごく自然にいません。道路で毎日犬が轢かれて死んで誰も気にしないような感じです。

 僕たちは少女のところへ行った。少女の小屋にあの少女はいなかった。その代わりに歳が少し上の別の女の子が小屋の前にぼんやりと座っていた。

 「あれ? 二人なの? 女の人も一緒? 困ったなあ、私、男の人しかしたことないんだ。でも、やってみるわ。入って。」

 女の子は僕たちを客だと思ったようで、すぐに立ち上がって身に着けた布をあの少女と同じように肩から滑らせて裸になってしまった。彼女が止めた。

 「ううん、そうじゃないのよ。いつもこの小屋にいた子に会いに来たの。今どこにいるか知ってる?」

 女の子はなんだという顔つきをして、そんな子の事は知らないと言ってしゃがんだ。折り曲げられた腿と腿の間の暗がりから赤い割れ目が開いてこちらを見、そして閉じた。地面に落ちていた布を曖昧な輪の形にして頭からばさりと被って元のように戻った。前からここにあったあの薬缶をひょいと持ち上げて土でできた小さな湯呑に、いつもと変わらない甘くて鉄の味のするお茶を注いでくれた。

 「たぶん神様のところに行ったのね。ここに居ないなら他に行くところがあるわけないし。」

 そう言って河の水を指さした。僕らがそちらを見ているとカチン、カチンと幾つか小石が跳ねて小屋と僕たちの周りの地面に当たった。少し離れたところに子供が数人いてこちらに投げていた。投げながら何かこちらに向かって叫んでいる。女の子が苦い顔をして、自分とそれほど違わない歳の彼らの事を困った子供達だと言った。

 「でもまだ子供だから神様はあの子たちには何もささやかないのよ。もう少し大きくなったら神様に言われてここに来るに決まってるのに。」

 子供たちは走って行ってしまった。山の縁に差し掛かった太陽が真っ直ぐな影で小屋の屋根を黒く切り取った。僕たちはこの女の子に何か聞こうかと思ったけれど、考え直して止めて宿に帰る事にした。女の子はまた遊びに来てと言って手を振ってくれた。僕と彼女は来た道をそのまま帰るのではなくて、河の岸辺をゆっくりと、石と石の間や燃え残ったお供え物の残骸、流れ着いて引っかかっている木の枝、砂に半分埋まった何かを一つひとつ見ながら歩いた。収穫は何も無かった。僕たちは収穫が無いのを半分喜んだ。死がその本人にとってどれほどのものかはわからないが、僕らにとっては重いものであるのは確かだし、できれば避けたいし、そして認めたくない事に違いなかった。

 僕も彼女も、少女が辿ったであろう幾つかの可能性について、何も言葉にしないまま宿に歩いて戻った。


<再会>

 「そろそろ帰ろうか?」

 僕もちょうど同じ事を考えていたところだった。そしてここへ来た時に少女が言っていた言葉を思い出した。

 『将来の事って、・・・そんなの神様にしかわからないのに。私はずっとここにいて男の人を待ってるだけ。男の人は心の中で神様が何かつぶやくとここに来なきゃいけないって思って来るの。来たら男の人はリンガを大きくして私のヨニに入れるの。そして上手くいったときには私と男は一緒に神様のところに行ける。あまり上手くいかなかったら、たぶんどっちか片方だけ。この世界ってどうしてもそんな仕組みになってるじゃない。だから私はここにいるってわけ。・・・』

 僕と彼女は少女の小屋に戻ってみた。少女は戻ってはいなくて、少女の後に来た女の子がいた。僕たちはここを離れると女の子に告げて、最後に小屋の中を見せて欲しいと頼んだ。女の子は床の散らばっている布をひとまとめにして外に出して張ってあった紐に掛けてから見ても良いよと言ってくれた。小屋の壁や屋根にいくつもある細い隙間から太陽の光が薄いナイフの刃のように内部の闇を突き刺していた。目が慣れてくると奥の壁に葉書ほどの大きさの一枚の絵が金色の額に入って掛かっているのが見えた。神様の絵のようだった。近付いて見た彼女が驚いた声をあげた。

 「あの子よ。ここにいたわ。」

 僕も絵を覗き込んでその意味がわかった。女の子が僕たちの声を聞いて小屋に入って来た。そしてその絵を壁から取って外に持って出た。

 「これはね、ガンガーっていう神さまなの。綺麗でしょう? 天の水を地上に流してくれている神さまよ。」

 絵の中のガンガーは壺と花を持ち、ワニに乗って水の上を移動していた。そして顔は、あの少女にとても似ていた。そっくりと言って良いほどだった。僕たちはガンガーの絵にさよならを言って小屋を離れて河の岸辺に行き、その白い水に手足を浸した。どこからともなく大きなナマズが現れた。ナマズは身体全体と長い髭を大きく左右に揺らしながらこちらへ向かって泳いで来る。ナマズは一旦止まってこちらを見てからまたゆっくりと泳いで来て、僕たちの足に真っ黒でぬるぬるした身体を擦りつけてから水の底へ帰って行った。


 最近面倒臭くてタイトル画像がただの写真になってます。ごめんなさい。

追記
 ここだけ抜き出して読んでいると、この少女が出てくる場面はとても淡々としていてあまりエッチな感じもないしスピード感とか、早く言うとグッと来ない感じがする。もっと「無邪気に淫ら」な方面に振っても良さそうな気がしてきた。

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