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様々な音楽体験、生演奏とライブ配信と収録と WoO 2

ベルリンの自宅にいながら、ウィーンのオペラを鑑賞し、フランクフルトやミュンヘンの演奏会を聴き、サンクトペテルブルクのバレエを賞翫し、東京からの演奏会のライブ配信を観る。

日に日に進化していくインターネット上のサービスやコンテンツ。
この数ヶ月はこれまでにも増してその恩恵を受け、そして音楽家の在り方や音楽表現そのものについてもよく考えさせられました。

会場で生演奏を聴く体験、オンライン(会場以外の場所)で生演奏を聴く体験、収録された演奏を聴く体験の3つは、それぞれ異なる体感を伴います。
簡単に言えば、CDのような生演奏を望むのは野暮なこと、生演奏の"全て"をCDに埋め込むのは完全には不可能、しかしCDにはCDの楽しみ方がある、といったところでしょうか。
"音楽表現"はそもそも、作曲者(作品)、演奏者(演奏)、聴衆(鑑賞)の三位一体が揃えば成り立つので、どの体験を好むかはもはやパーソナルな領域のことです。

私個人としては、音楽の刹那的な要素 - コンサート会場の空気、そこを伝わる生の音、次の瞬間には消えて無くなる音、残るのは音の残像と感じたエモーションのみ - に最も魅力を感じ、普段の演奏者としての準備や鍛錬はその体験を充実させるためとも言えます。
一方で、その刹那的な”何か"は、"伝える力"が強く、"感じ取る力"が強ければ、距離が離れていても、あるいは収録されたある意味での"完成品"の中にも宿り得るものだと思います。
事実、ここ数ヶ月でもライブ配信されていたものから多くのエモーションを受け取り大いに感動しましたし、収録された音楽を聴いて心を動かされ、涙を流すことは思えば日常茶飯の事です。

様々な配信コンテンツを鑑賞する一方、私自身も発信者側としていくつか。
ニューヨークに拠点を置くクラシック音楽の大手オンライン情報サービス"The Violin Channel"より、Facebookライブ配信での「リビングルーム・コンサート」への出演依頼があり、4月26日にベルリンの自宅より、プロコフィエフ(1947年作曲)、バッハ(1720)、イザイ(1924)、テレマン(1735)、レーガー(1909-12)、バッハ(1720)と、20世紀と18世紀の無伴奏作品を交互に組み合わせたプログラムを演奏しました。
普段はリラックスし精神を落ち着かせて自分と向き合う場である自室で、カメラと向き合いながらの生演奏とトーク。
普段の演奏会ともレコーディングとも、コンクールの生中継ともまたひと味違う緊張感はやはり、自分の部屋で完全にひとりきりでありながら姿の見えない多数の視聴者に対して、間接的な方法ではありながら直接的な表現を目指すというギャップから生じたものだったように思います。
どこかしら一抹の寂しさも感じずにはいられませんでした。
しかし、例えばベルリンのコンサートホールで(ローカルに)演奏していたら聴けなかったであろう多くの方に聴いていただけたのは、何よりも嬉しいことです。
40分の長い動画となっておりますので、記事をこのまま最後までお読みいただいた後、お時間のある時にでも、是非。


この数ヶ月の出来事は、我々人類に大きな気づきと大きな学びを与えてくれたように思います。
当たり前であったもの・ことがいかに当たり前でなかったかを実感し、自分が何に対して価値を見出し、自分にとって何が大事かを見つめ直す機会。

生の演奏会に来てもらうための宣伝としてCDを作ったり動画を配信する、という形態は、もしかするともう古いのかもしれません。
"生のもの"と"生でないもの"の価値は等しいとは言えませんが、演奏者側はそのどちらにも今まで以上の力をかけて価値を与えることが出来た時、鑑賞する側もそれに対価を支払う。
双方にとって、とても健全で建設的なスタイルではないでしょうか。
生の音楽体験がこの世から無くなることは決してありませんが、この"ハイブリッド"なスタイルが音楽のスタンダードになる時代が来るとも確信しています。


そのまさに"ハイブリッド"な演奏会、7月18日(土)に開催されます。
昼の部と夜の部でそれぞれプログラムがも違う、たっぷり2公演分。
世界中どこからでもお聴きいただける当日のライブ配信+2日後までのオンデマンド配信のチケットは、7/5から発売に。
それと共に、各回100名様限定の会場(東京・浜離宮朝日ホール)特別入場券もあります!こちらは7/2までのお申し込みとのこと。

じっくりと検討したこだわりのプログラムの中身について詳しく語るのはまた別の時にしようと思いますが、演奏会の詳細はまずはこちらからご確認いただけます。
出演者情報はまだ公開になっていないのですが、私の出演曲のヒントとしては、1、3、4、7、9、17とでもこっそり申しておきましょう。

7月2日(木)18時まで(!)にこの記事を読んでくださり、生の音楽体験をお求めの方は、こちらから。↓
何とぞお早めに!


7月18日(土)は丸一日、どのような形であれ、共に音楽の海に浸りましょう!

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