ちょい旅 ー旅行と写真とマンガとー
【ちょい旅】①
【ちょい旅】②
『わー!ついたー!実家だよ-!』
「実家じゃないよ」
『…』
『じゃあここはどこでしょうか?』
「兵庫から明石海峡大橋を渡ってちょうど徳島に入ったあたりだな」
『へー!とくしま!よくわかんないけどすごいねえ!』
『天気もいいから歩いてるだけでとっても気持ちがいいよ』
【ちょい旅】③
「実家に帰るだけだったけど、お前たちも一緒ならちょっと寄り道してもいいかと思ってさ」
『寄り道するなんて悪い子だねえ』
「寄り道しないほうがいいか?」
『ううん、あたしら寄り道大好きだよ!』
『タヌロヲー!無理そうなら下を歩いていいんだよーー!』
【ちょい旅】④
『でっかい川だ~』
「海って言うんだよ」
『…うみ』
「初めてなのか、海?」
『……』
『初めてじゃない、と言えば嘘になります』
【ちょい旅】⑤
「この船に乗って渦潮を見に行こう」
『うずしおっ!』
「船に乗って今さっき渡ってきた明石大橋の真下へ行くんだ」
『わ!おっきい橋が見えてきた!タヌロヲが身を乗り出しているよ!』
『水の上を水がぐるぐるして段々ができているっ!』
【ちょい旅】⑥
他の観光客とともに食い入るように渦潮を見つめるタヌロヲ。
海と明石大橋を背景に写真を撮るようせがむナツネ。
「性格が出るなあ」
【ちょい旅】⑦
渦潮観光を終えてバスで一路、徳島駅へ。
『なんだかぷっくりした奇妙な二人がイスを占拠していたんだよ』
【ちょい旅】⑧
徳島駅から特急「剣山」に乗車。
『これは川?』
「川だね。吉野川というんだ」
『さっきの「うみ」とはつながってるの?』
「繋がってるよ」
『どこからがうみで、どこからが川なの?』
「難しいこと聞くなあ」
【ちょい旅】⑨
一時間ほど電車に揺られ、阿波池田駅にて下車。
『なんじゃこりゃあ!人間は器用にものを作るねえ』
「徳島の祖谷にある「かずら橋」のミニチュアだね」
『意外とスイスイ登れるねえ!ほらほら、タヌロヲがんばって!』
『ここで一日中遊んでいられるよ!』
「両親を外に待たせてるから一日中は困るなあ」
【ちょい旅】⑩
【ちょい旅】⑪
見舞いを終えて実家へ帰り、一夜明けて散歩。
『なんだかあたしらが住んでる高尾山と変わんないね』
「山奥の田舎だからなあ」
『上じゃなくて下に虹がかかっているよ』
「珍しい。なにかいいことあるかもしれないなあ」
【ちょい旅】⑫
ゆっくり夕方まで実家で過ごしたあと、両親に別れを告げ、特急「南風」に乗車。
「行きは明石大橋。帰りの電車は高知と岡山を結ぶ瀬戸大橋を渡るんだ」
『人間はどこにでも橋を作っちゃうねえ。泳げばすむのにねえ』
『とっても楽しかったよ』
「ほんとか?な~んにも無いとこだったけどな」
『あと、おばあちゃんがかわいかったよ』
「そうか。それは僕も嬉しいし、ばあちゃんも喜ぶよ」
【ちょい旅】⑬
『もうすっかり夜だ。一体ここはどこだろねえ』
「行くとこあるからついてこい!急ぐぞー!」
『ちょっと!せいてはことをしそんじるよ!』
【ちょい旅】⑭
「ふあああああ!」
神戸ルミナリエ。阪神・淡路大震災のあと、鎮魂と追悼、街の復興を祈りつつ震災で激減した神戸への観光客を呼び戻す目的で毎年12月に開催されている。
『むふー!!!』
『くあああ!』
【ちょい旅】⑮
「…大丈夫か?ちょっと疲れたか?」
『あんなきれいなもの初めて見たよ。とってもすてきで夢みたい。軽く引いてます』
「引かなくても…」
【ちょい旅】⑯
『ここはいろんなとこがキラキラしているよねえ』
「神戸という港町だよ。大昔から賑わってきたんだ」
『……へー』
「…なんだ、急にそっけない」
『美しいものの前でも睡魔というのは襲ってくるものなんだねえ』
『ぽかぽかしてておしゃれだね。もう限界だし、ここで寝ちゃお』
「ここは泊まるとこじゃねーよ!もう少し我慢してくれ!」
【ちょい旅】⑰
一泊して神戸にお別れを告げる二匹と一人。
『神戸、泣いてどうなるのか』
「どうした急に」
【ちょい旅】⑱終
『むむ!あのお山、なんか見たことある!』
「高尾山から見えるもんな。富士山ていう日本で一番高い山だよ」
『あのお山に寄り道していこうよ!』
「また今度な」
『約束だよ!』
約束を守れるかどうか今はさておき、楽しい旅になったことを嬉しく思う田中であった。
おしまい
【ちょい旅】あとがき
ちょいどころか、随分な長旅になってしまいました。
こういうのを連れて行くと、ふとしたところで写真を撮りたくなりますね。
これらはTwitterにて3日間に渡り投稿したものに、未公開の写真やセリフを追加してまとめたものです。なるべく旅行時の時間帯と合わせる形で投稿するようにしました。なるべく旅してる感を出したかったのでそうしたんですが、効果があったかどうかは…微妙なところですね。
ちょっとでも旅行気分になってくれたら嬉しいです。お付き合いくださり、ありがとうございました。
トキワ
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