見出し画像

【トレード実践知識】移動平均線を使った分析

 たいへんご無沙汰しております。
本業の赴任や、それに伴う環境の変化で長らくノートが書けずにいました。

前回のノートでは、時間足の詳細な使い方として環境認識を説明しました。

今回は、移動平均線の説明を行います。
私のノートでは、初めてインジケーターを取り上げたものとなります。移動平均線を使って組み立てた手法はFX、株価、CFD、仮想通貨などあらゆる商品に対して流用することができるので、使い勝手の良さも抜群です。

まずは移動平均線が何なのか説明していきましょう。


移動平均線とは

 「移動平均線」とは、一定期間の価格(多くの場合は終値)の平均値を出し、それを線で表したものを言います。英語では「Moving Average(ムービング アベレージ)」といい、一般ではこれを略して「MA(エムエー)」といいます。

画像1

 上の画像は、ドル円(USDJPY)1時間足にローソク足20本分の移動平均線を表示したものです。

 移動平均線は価格の計算方法によって種類がありますが、このノートでは代表的なものを紹介します。また、移動平均線の使い方もいくつか紹介します。

なぜ移動平均線が有効なのか

 そもそも、なぜ移動平均線が有効なのか?理由は簡単です。
移動平均線は、ほとんどのチャートソフトに標準で用意されています。新聞や雑誌など紙媒体のチャートにも表示されていることもあり、多くの市場参加者が見ています。多くの市場参加者が見ていると言うことは、それだけ移動平均線は強く意識されるということです。

 チャートの価格は、市場参加者の意識の総体が動かしています。価格が高いと判断されると売られ、安いと判断されると買われます。移動平均線は、今の価格が高いか安いかを直感的に表しているため、移動平均線から価格が乖離すると売買が強まり、やがて直近の平均価格に戻ろうとする力が働きます。


移動平均の種類

 移動平均の種類を紹介します

重要なのは「★印」がついているものだけです。
それ以外は、興味がない場合は読み飛ばしてください。
また、計算式はトレードにおいて重要ではないため割愛します。

★ 単純移動平均(SMA)
 最も標準的な移動平均線です。
特別な加重計算は行わず、期間内の平均値を使用します。
英語では「Simple Moving Average」といい、一般ではこれを略して「SMA」といいます。

種類を明言されていない限り、「移動平均線」あるいは「MA」というと「SMA」を指します。

加重移動平均(WMA)
 期間中の値動きに「線形的」な重みづけを加えて計算した移動平均です。
英語では「Weighted Moving Average」といい、一般ではこれを略して「WMA」といいます。

 前述のSMAは、計算対象となる期間の価格を均一に取り扱うため、直近の値動きに対する反応が小さいというデメリットがありました。「WMA」はそれを解決するために「過去の価格よりも、直近の価格の方が将来の価格を予測するために重要である」という考えのもと改良された移動平均です。
このため、トレンド転換への反応はSMAより早いのが特徴です。

別名で
「線形加重移動平均:Linear Weighted Moving Average(LWMA)」
といった呼び方もされます。

★ 指数移動平均(EMA)
 期間中の値動に「指数関数的」な重みづけを加えて計算した移動平均です。
英語では「Exponential Moving Average」といい、一般ではこれを略して「EMA」といいます。

 前述のWMAは「線形的」な重みづけがされるため、期間がある一定を超えると重みづけがゼロになってしまうデメリットがありました。「EMA」は指数関数的な計算を用いているため、期間外の価格に対して重みづけがゼロになることはありません。「EMA」はWMAのように直近の値動きを重要視しつつ、さらに全期間を通して重みづけを考慮した移動平均です。
このため、トレンドの転換をWMAより早く見つけることができます。

別名で
「指数加重移動平均:Exponentially Weighted Moving Average(EWMA)」「指数平滑移動平均:Exponentially Smoothed Moving Average(ESMA)」
といった呼び方もされます。

修正移動平均(MMA)
 指数移動平均の1つで、計算方法は前述のEMAとほぼ同じですが、過去の値にのみ重みづけがされている移動平均です。
英語では「Modified Moving Average」といい、一般ではこれを略して「MMA」といいます。
トレンド転換の反応速度はWMAとEMAの中間といったところです。

別名で
「Running Moving Average(RMA)」
「平滑移動平均:Smoothed Moving Average(SMA、SMMA)」
といった呼び方もされます。

正弦加重移動平均(SWMA)
 加重平均の一つで、重みのかけ方に正弦波(三角関数)を使用した移動平均です。
英語では「Sine-Weighted Moving Average」といい、一般ではこれを略してて 「SWMA」といいます。

 cos関数を使用すると、前述した「加重移動平均(WMA)」に近いものになり、sin関数を使用すると、後述する「三角移動平均(TMA)」に近いものになります。

三角移動平均(TMA)
 加重平均線の一つで、単純移動平均を2回適用し、重み付けのグラフが二等辺三角形(期間の中間部分を重要視した形)となっている移動平均です。
英語では「Triangular Moving Average」といい、一般ではこれを略して 「TMA」といいます。

トレンド転換の反応は最も遅く、長期トレンドを分析する際に用います。

累積移動平均(CMA)
 期間を問わず、すべての期間の平均をとった移動平均です。
英語では「Cumulative Moving Average」といい、一般ではこれを略して 「CMA」または「CA」といいます。

出来高加重平均価格(VWAP)
 荷重移動平均の計算に出来高を組み込んだものです。
英語では「Volume-Weighted Average Price」といい、一般ではこれを略して 「VWAP(ブイワップ)」といいます。厳密には移動平均ではありません。

 基本的な動きは単純移動平均と同じですが、大口の介入で出来高が動いたときに移動平均線が機敏に動きます。

詳細については、いずれ出来高分析のノートでお話しします。


どのMAを使うのか

 一般的にはSMAEMAを使います。
特に海外ではEMAが主流となっており、日本国内でもEMAを使ったトレード手法が数多くあります。

画像4

 上の画像はドル円(USDJPY)の日足に同じ設定値のSMAとEMAを表示したものですが、ご覧の通りEMAの方が機敏に動くため、トレンド転換への反応が早いことがわかります。しかしその反面、EMAはレンジ相場での騙しが起きやすいというデメリットもあるため、必ずしもEMAの方が優れているというわけではありません。またEMAは、本来の移動平均価格と異なるため、厳密には移動平均ではないと考える人もいます。

ちなみに私は、最もフラットな情報を使いたいためSMAを使っています。
また、出来高分析を行う場合は、VWAPを参考にする事もあります。


基本的な使い方

 まずは、ローソク足何本分で移動平均を計算するか設定をします。
移動平均をローソク足100本分で設定したなら100MA、200本分なら200MAと言います。

 そして最も単純な使い方は、「移動平均線より下で買い、上で売る」とっいった使い方です。現物株の保有を考えている場合は、「長期の移動平均線より価格が上の場合は買わない」といった判断もできます。長期的な目線で考えた場合、この手法が最もシンプルです。

 他にも、移動平均線を複数表示して方向を見ることで、現在のトレンドの方向を多角的に判断することができます。

画像2

 上の画像は日経平均株価の日足ですが、
「長期:200MA」「中期:75MA」「短期:20MA」の3種類を設定することで、「今は長期的な方向は下、中期的な方向も下、短期的な方向は上」といった感じで、1画面で直感的に複数の方向性を知ることができます。

 そして、「移動平均線は市場参加者に意識されやすい」と言ったとおり売買のシグナルにも使われており、そのままサポートライン(支持線)やレジスタンスライン(抵抗線)として機能します

画像3

例えば上の画像の場合、直近では20MAがサポートラインとして機能しているようなので、「次も20MAで支持されると考えてロングを仕掛け、75MAか200MAまで上がってきたら利確。もし20MAを大きく下に割ったら損切。」といった戦略や、「200MAを抵抗線と見て、ここまで一気に上がったら短期的にショートを仕掛け、200MAを大きく上に抜けたら損切り。」といった戦略が立てられます。


よく使う移動平均線の設定

 上述したとおり、「長期」「中期」「短期」の3種類を1セットとして使うことが多いですが、ここでは「超短期」を含めたメジャーな設定値を紹介します。

画像5

 赤文字の部分は、比較的重要とされている設定値です。
もともとは、日足で用いることで市場が動いている日を適切な期間ごとに分析できるとされた数値で、「5」は1週間分を、「25」は約1ヶ月間を、「75」は約3ヶ月間を、「200」は約1年分の平均線を表すことができます。

その中でも「日足の200MA」は特別に意識され、株価では非常に重要な移動平均線とされています。

 また、通貨ペアや時間足によって効きやすい設定値があり、その値は「勝ち組トレーダーのメシの種」であるため、秘密にされている事が多いです。色んな値で設定をしてみて、「なんとなく効いてそう」と思うものを見つけてみて下さい。時間足毎にも効いてるものが違うので、根気よく探す必要があります。

ちなみに私は、20、75、200MAを設定しています。


では、移動平均線の実践的な使い方をいくつか紹介します。


実践手法【ゴールデンクロス&デッドクロス】

 複数表示させた移動平均線のうち、短期側の移動平均線が長期側の移動平均線を下から上に突き抜けることを、ゴールデンクロスと言います。

逆に、短期側の移動平均線が長期側の移動平均線を上から下に突き抜けることを、デッドクロスと言います。

画像6

 上の画像はダウ平均株価(US30/DOW/DJI)の日足に、20EMA(赤色線)と75EMA(灰色線)を表示したものです。20EMAが75EMAを下から上に抜けたところがゴールデンクロスで、上昇トレンド入りを期待させます。つまり、ここからはロングの戦略が立てられます。

 逆に20EMAが75EMAを上から下に抜けたところがデッドクロスで、上昇トレンドの終了~下降トレンド入りを期待させます。つまり、ここからはショートの戦略が立てられます。

 また、これらゴールデンクロスとデッドクロスですが、2つの移動平均線の突き抜け角度が深いほど期待値が高いとされています。突き抜け角度が浅いと騙しになりやすいというわけですが、どの程度角度があれば良いかといった指標はありません。こればかりは、過去のチャートを眺めて感覚を養うほかありません。


実践手法【グランビルの法則】

  グランビルの法則は、アメリカの金融記者であるジョセフ・E・グランビル(Joseph E. Granville 1923~2013)がまとめた、移動平均線を使った売買戦略です。彼は著書「A Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit(最大利益のための毎日の株式市場タイミングの戦略)| Prentice-Hall, Inc., 1976年出版」で、移動平均線を使った4つの買い戦略と4つの売り戦略、計8つからなる売買戦略を発表しました。

 「法則」と名前が付いていますが、これは著書の邦題にのみ付けられたもので、戦略の背景に何か科学的根拠に基づいた法則があるわけではありません。しかしこの売買戦略は非常にシンプルで、移動平均線を使用したシグナルとしては分りやすいため、現在でも活用され続けています。

 ここでは邦題にならい、「グランビルの8法則」として8つの売買戦略を説明していきます。説明に登場する矢印は、以下のように表します。

画像7


第1法則(買い第1法則)

画像18

下落してきた移動平均線が横ばいから上昇を示し始めたときに、
ローソク足が移動平均線を下から上に抜ける時に【買う】

第2法則(買い第2法則)

画像18

移動平均線が上昇中、
ローソク足が移動平均線を割り込んだときに押し目を狙って【買う】

第3法則(買い第3法則)

画像18

ローソク足が上昇中の移動平均線より上にある状態で、
ローソク足が移動平均線に触れそうになるも、
触れずに再び上昇したときに押し目を狙って【買う】


第4法則(買い第4法則)

画像18

移動平均線が下落している最中、ローソク足の下落がさらに加速して移動平均線と大きく乖離したところで【買う】

第5法則(売り第1法則)

画像18

上昇してきた移動平均線が横ばいから下落を示し始めたときに、ローソク足が移動平均線を上から上に抜ける時に【売る】

第6法則(売り第2法則)

画像18

移動平均線が下落中、
ローソク足が移動平均線を割り込んだときに戻り高値を狙って【売る】

第7法則(売り第3法則)

画像18

ローソク足が下落中の移動平均線より下にある状態で、
ローソク足が移動平均線に触れそうになるも、
触れずに再び下落したときに戻り高値を狙って【売る】

第8法則(売り第4法則)

画像18

移動平均線が上昇している最中、ローソク足の上昇がさらに加速して移動平均線と大きく乖離したところで【売る】

グランビルの8法則の全体像

 これら8つのグランビルの法則をチャートの流れでイメージすると、以下のような形になります。

画像16

 買いの第1~第4法則は、相場をひっくり返す事で売りの第1~第4法則になり得ます。そして、この法則にはお互い騙しになりやすい法則があります

買い第1法則と売り第2法則は、お互い騙しになりやすい
・買い第2法則と売り第1法則は、お互い騙
しになりやすい

図のように常にトレンドが続いている場合は良いですが、レンジを挟んで動く場合、買いの第1~第2法則と売りの第1~第2法則はお互いに似ていて判断が難しく、積極的に狙うには難易度が高い戦略と言えます。ただし、トレンド転換やレンジブレイクの初動を掴める戦略のため、うまく入れば大きな利益幅が見込めます。

買いの第3法則および売りの第3法則は、トレンドフォロー(順張り)の際に非常に有効な手堅い戦略と言えます。

買いの第4法則および売りの第4法則は、カウンタートレード(逆張り)による瞬間的な反発を捕らえるのに有効な戦略と言えます。また、そのまま長期目線に切り替えてポジションを保有し続けることで、その後のトレンド転換も狙える一発逆転の戦略です。ただし、うまく入れなければすぐに損切りになり、何度も損失を重ねる非常に危険なトレードとなります。


実践手法【パーフェクト オーダー】

 パーフェクトオーダー(Perfect Order:PO)とは、
価格の上昇中は移動平均線が上から 短期>中期>長期 で並んでいる状態、
価格の下落中は移動平均線が上から 長期>中期>短期 で並んでいる状態を指します。

画像17

上の画像は、日経平均株価の1時間足に200、75、20MAを表示しており、「PO発生」の所から移動平均線が 長期>中期>短期 と並んでいます。
このパーフェクトオーダーが発生したところで、エントリー(画像の場合ショート)を入れ、パーフェクトオーダーが終了したところで利確を行います。

 パーフェクトオーダーは発生するまで根気よく待つ必要がありますが、トレンドフォローでは非常に強力かつ勝率の高い手法です。

 パーフェクトオーダーに使用する移動平均線は、3本~5本を使用することが多いです。それぞれの移動平均線の設定値を幅広くすることでトレンドフォローの確実性は増しますが、その分反応が遅くなるとともに、パーフェクトオーダーの発生数も減ります。


実践方法【マルチタイムフレーム移動平均線】

 マルチタイムフレーム移動平均線(MTF MA、MT MA)とは、特定の時間足のチャートに別の時間足の移動平均線を表示する方法です。

例えば、5分足チャートに1時間足の20MAを表示したり、1時間足チャートに日足の200MAを表示したりできます。

画像18

 上の画像では、ドル円(USDJPY)の1時間足チャートに14EMA、4時間足25EMA、日足50EMAの3種類を表示しています。階段のような形に見えることから、「階段状移動平均線」とも言われます。(中には、なめらかに表示する機能もあります)

 このMTF MAの強みは、表示している時間足を切り替えなくても、上位足の移動平均線を認識できることです。特にデイトレやスキャルピングなどの短期トレーダーが、瞬間的な判断を求められる場合に重宝されます。

 なお、MTF MAはMT4の標準機能ではないため、別途ダウンロードして組み込む必要があります。ダウンロードサイトはGoogleで「MTF MA MT4」などで検索して下さい。


今回は以上です。
次は、「ライン トレード」について説明したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?