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自宅で名画鑑賞の予習を! 3分でわかるゴッホの色彩 『色の知識 新装版』試し読み

コロナウイルス感染拡大防止のため、様々な美術展が中止もしくは延期になっている現在。3月からの予定だった国立西洋美術館の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」も開幕延期となりました。日本初公開となるゴッホの《ひまわり》を楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。

せっかくなので名画、デザイン、文化史など様々な角度から色を学べる『色の知識 新装版』(城一夫・著)から、ゴッホの色彩に関するページを無料公開します。事態が落ち着き、ゆっくりと展覧会を楽しめるようになるその時を楽しみに、ぜひ予習してみてください。

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853 〜 1890 年)
ゴッホは後期印象派を代表する作家である。画商、本屋の手代、伝道師など職業を転々としながら、28歳のときに画業にたどり着いた。以来、10年間、37歳で自殺するまで、 実に6000点にも及ぶ作品を残した。
ゴッホは、最初オランダで暗い彩りを使った写実的な絵を描いていたが、1880年頃、パリに出て印象派や日本の浮世絵に出会い、光と色彩の表現を重視するようになった。だが彼は、印象派の「色彩分割」に飽き足らず、アルルの燦々と輝く太陽の下で、強い「色彩表現」によって、自己の心象をカンバスに映し出すという作風を確立していく。その考えは弟テオに宛てた手紙の中にしばしば表現されている。

「ここで大切なのは色彩であり、色彩は単純化によって、ものにいっそう大きな様式を与える」とか、「赤と青によって人間の恐ろしい情念を表現したい」とか、「ふたりの恋人たちの愛をふたつの補色の組み合わせによって表現すること」などと書いている。
ゴッホにとっては、色彩は人間の情念、不安、恐怖などを表す有効な手立てであった。ゴッホもまた補色による絵画表現を試みたドラクロアを畏敬した作家である。従ってゴッホの作品は、当時市販されだした合成顔料のクローム・イエロー、コバルト・ブルー、クロー ム・オレンジやビリジャンなどの彩度の高い鮮やかな絵具の補色を組み合わせることに よって、作者の激情的で不安に満ちた心象を表現したのである。
「夜のカフェ」は赤と緑、黄色と青で人間の狂気(ゴッホの言葉)を描き、「夜のカフェ・テラス」は青と黄色で、夜の狂想を強烈に表現している。「色彩は熱烈な気質の持つある種の感動を暗示する」とは、彼の真情であろう。

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『色の知識 新装版』は4月発売予定。
ゴッホだけでなく、フェルメール、モネ、ゴーギャン、ロートレック、マティス…などなど、世界の名画の色彩をわかりやすく解説しています。
編集田中



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