【テキスト】スキマゲンジ第34回「若菜上」その2

前回のあらすじ。源氏の君は、兄である朱雀院の娘、女三の宮との結婚を決めてしまうのでした。

スキマゲンジ第34回「若菜上」その2
源氏の君は思い悩んでいます。紫の上は、朝顔の君との縁談があった時にも源氏の君は結婚しようとはしなかったのだから、と女三の宮との縁談の噂を聞いていても疑っていない様子なので、よけいにつらく思います。

「このことをどう思うだろう。私の心は少しも変わるはずもないのだが、そのことがわかるまでにどれほど悩むことだろう」と、重い気持ちになるのでした。

翌日、源氏の君は紫の上と昔のことやこれからのことなど語り合っています。

源氏の君がついに話します。
「朱雀院がすっかり弱気になっておられ、お見舞いに行きましたら、女三の宮のことが気がかりで出家生活もままならないと言われるので、気の毒になり、断ることができなくなりました。もうそんな色恋の話には関心が持てなくなっているのですが、あまりに深い親心でずっと言われるので、そっけなくできなかったのです。
院が山寺にお移りになる時に、宮をここ六条院にお迎えすることになります。不愉快に思われるでしょうが、あなたへの気持ちは変わらないので、宮を嫌わないであげてください」

紫の上は、まったく気にしていない風で「気の毒なご依頼だったのですね。ここでは何の遠慮もいりません。気に入らない、こうしろ、などと非難されないのなら安心しております。p宮さまのお母さまも遠い関係ではないので」と言うのでした。

紫の上は、心の中では「こんな降ってわいたようなことは逃れることができないのだから、恨みは言うまい。源氏の君が思いをかけたわけでもないのだから、みっともなく気がふさいだ様子は見せまい」と思っています。源氏の君に愛され続けているのは自分だけだと思っていたのに、世間の人たちはどれだけ笑うだろうと心の底では考えますが、表面は何気ない風を装っているのでした。

年が明けて、源氏の君は40歳になりました。朝廷でお祝いの儀式をと言われますが、源氏の君は大げさな儀式は苦手なので辞退します。そんな時に、玉鬘がお祝いにやってきました。久しぶりの会話は弾みます。玉鬘は二人の子どもを連れてきていました。上達部たちもたくさん邸に到着します。髭黒大将は得意顔です。蛍兵部卿の宮も太政大臣も夕霧も柏木も揃い、宴が始まります。

楽人などは呼んでいませんが、内輪での管弦のあそびが始まります。柏木と太政大臣が琴の合奏をするのが、誰もが驚くほどの音色なのでした。

二月、女三の宮は六条院に輿入れをします。六条院は並々ならぬ準備をして迎えます。多くの上達部たちが参列する中、源氏の君は車のそばまで行って出迎えるのでした。源氏の君はあくまでも臣下なので、入内するでもなく婿入りするでもない、珍しい形の婚姻となるのでした。

紫の上は、何気ない様子でこまごました雑用なども引き受けてくれています。源氏の君は、そのいじらしい様子をほんとうにありがたいと思うのでした。

女三の宮は、ほんとうにまだとても幼く、発育も不充分で、子どもっぽい様子で、ただ幼稚でおられるのでした。

源氏の君は、紫の上の幼い頃を思い出して「あの人は気が利いて手ごたえがあったが、こちらはただ幼いだけだから、紫の上に歯向かっていくようなこともないだろう」と思いますが、「それにしても見栄えがしないご様子だ」と見ています。

次回スキマゲンジは第34回「若菜上」その3。お楽しみに。



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