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スポーツを止めるな! スポンサー契約を守るためにできること

世界のスポーツ界が徐々に動き始めている。韓国や台湾の野球界では、すでに無観客試合で公式戦が再開されていたが、さらに昨日、ドイツ・リーグ(以下、ブンデスリーガ)が、5月から無観客試合でリーグ戦を再開することを発表した。

いくら無観客試合とはいえ、身体的なコンタクトの激しいサッカーの試合を再開することには否定的な意見もあるが、このまま経済に殺されるのを待っているわけにもいかないだろう。この判断がドイツ国内の感染者数に今後どのような影響を与えるのか、日本や諸外国のスポーツ競技団体が今後どのような判断を下すのか、注視したいところだ。

さて、これまで僕のnoteでは、プロ・アマを問わず、新型コロナウィルスの中で展開されている新しい動きや、僕自身もチャレンジしている地域スポーツクラブのオンライン化の動きなどを紹介してきた。

またその間、並行して取材・執筆を進めていたのが、日本のスポーツ団体が避けては通れない「スポンサー契約の課題」だった。その記事は本日、ITメディアビジネスオンラインという媒体に掲載されたので、ぜひ読んでみていただきたい。(※どうやらNEWSPICKSでも取り上げていただいたようだ。)

この記事に残した余白。「どのようにしてスポーツを支えるのか」

今回、影響力のあるメディアに寄稿するにあたって、主観的な要素は極力排除し、事実を淡々と述べていくことに徹した。僕は過去に、自分の伝えたい主張を押し出しすぎて、大バッシングを食らうという苦い経験を味わったことがある。そんな間抜けな僕でも、徐々に経験を積んで行けば、メディアで書くべきことと、書くべきではないことの区別も少しはできるようになったわけだ。

この記事では、このコロナ渦中で今後の展開が懸念されるスポーツ団体とスポンサーとの関係性について、「スポンサー契約の法的リスク」という視点でスポーツ業界の法務に詳しい弁護士・稲垣弘則さんの言葉を中心に、事実を書き連ね、最後は、業界を超えた法整備の重要性を訴えて記事を終えている。

何度読み返してみても、無難な結びだが、一方でこの記事に関しては、全てを書くのではなく余白を大きく残すことはできたのではないかと思っている。メディアの役目は様々だが、Twitterなどで議論を起こすことができたという点で、「一石を投じる」ことができたのではないか。記事を読んでくれた一人ひとりが、スポーツ界に今後起きるであろう課題を知り、何ができるかを考えるきっかけにしてもらえたら幸いだ。

支える力を発揮する機は、熟した

今回のコロナ騒動の中で、音楽やスポーツなどの大型イベントが最も早くから名指しで自粛対象とされ、そして公共施設が利用できなくなってスポーツの場が奪われた時、「音楽やスポーツや演劇などの文化は、簡単に切り捨てられるものなのだ」と知った。

国の政策がそうなのだから、企業だって同じ選択をしたって不思議ではない。もしいま日本のスポーツ界を支えるスポンサー企業がこぞって撤退や減額を申し入れるような状況になってしまっては、チームやリーグの存続は危うくなってしまうだろう。

だが、本当にそれでいいのか。思い出してみてほしい。日本が未曾有の事態に襲われた時、いつもスポーツは社会に手を差し伸べてきたではないか。社会を勇気付けたではないか。今こそみんなでスポーツを支えるときなのではないか。

東日本大震災では「復興支援チャリティマッチ」で挙げたサッカーの三浦知良選手のゴールが大きな力を与えた。熊本地震では、地元出身の巻誠一郎選手が、涙ながらに支援を訴えた姿に心を動かされたファンもいたはずだ。

まずは今のスポーツ界の最新情報を知る

これから一人ひとりが何ができるかを考える前に、今の段階で発表されている重要な情報をピックアップしておこう。

日本プロ野球機構(NPB)の動き

緊急事態宣言の延長を受けて、再開時期の目標を7月にずらして日程調整をしている様子だ。また、最短では6月19日という情報も。

Jリーグの動き

6月再開を目標に動いていたJリーグも、緊急事態宣言の延長を受け、再開時期の目標修正を余儀なくされている。

Jリーグに所属するチームの一部は、シーズンシートの払い戻しを開始した。経済的に逼迫するサポーターを救う意味合いもあるだろうが、同時にクラブ側がホームスタジアムでの開催試合数や座席の確保が事実上できなくなったと判断したと見て取ることができる。

選手の反応

かつて無観客試合を経験したことのある元浦和レッズの鈴木啓太氏は、以前の取材の際に「サポーターたちと感情を共有できないのは選手として辛い」と語っていた。またこのゴールデンウィーク中に筆者が取材した選手からは「無観客試合でアドレナリンが本当に出るのか」「罵声などが放送で拾われないか心配」と言った声も聞こえてきた。その辺りは、浦和レッズの長澤和輝選手のnoteにも同様のことが書かれているので参考にしてほしい。

これらの動きを見る限り、リーグ自体が当初予定していた年間試合数を確保することは難しく、また各チームの主催試合数も確保できない状況が生まれると考えておいた方が自然だろう。そして無観客試合も避けられない状況だ。これは、リーグやチームは、スポンサーに対して、当初想定していた役務を提供できないということを意味する。

では、このような状況で、チームは、ファンやサポーターは何をすれば良いのだろうか。

それぞれができることを考える

記事にはあえて書かなかったが、今回の新型コロナウィルスによって、仮に企業がスポンサーを降りることになれば、企業自らが地域性・公共性を放棄することになりかねない。だがそれは明らかに企業にとってマイナスブランディングとなるし、チーム・スポンサー企業の双方にとって本意ではないはずだ。

きっと、この後スポンサー営業を担当するチームスタッフの方々は、コミュニケーション能力や社内外の調整力が問われることになるだろう。次年度以降の取り組みとともに、今シーズンの対処方法を立案しながら、スポンサー契約を守っていく努力に、チームの未来がかかっているからだ。また、仮に無観客試合になったとしても、チーム側はオンラインでサポーターが応援できる場を用意するなどの企画をきっと検討していると思う。そこに広告枠を表示するなど、オンラインでカバーする努力さえ怠らなければ、その誠意はスポンサー企業にも伝わるはずだ。

一方で、ファンやサポーターができることは何か?

僕は記事の中で、スポーツには「地域性」や「公共性」といった性格があり、スポンサー契約はそこに理解を持つ企業の「人情」に支えられているケースが多いということに触れた。

スポーツ団体が手掛けるビジネスの大きな特徴は、「フランチャイズ」や「ホームタウン」という言葉に代表されるように、地域性と公共性を伴うことにある。また熱心なファンやサポーターがついていて、広告主をはじめとするステークホルダーも「支援者」としての側面を有しており、顧客のロイヤルティー(忠誠心)が非常に高いことも大きな特徴だ。このため、スポンサー契約は、CSR(企業の社会的責任)の一環として活用されるケースも多く、特殊な契約の1つと言えそうだ。

だとすれば、スポンサーと同じように、ファンやサポーターもチームを支える仲間である。仲間であるファンやサポーターが、今こそチームのためにも、スポンサーを応援するべきとき。スポンサー料は、広告主が自分の企業ロゴやサービスを露出することに対する対価である。ファンやサポーターがSNSやZoom等のオンラインツールを使って応援に参加することにより、試合が行われなかったり、無観客で行われることをカバーするだけの露出ができれば、結果的にチームとスポンサーを救えるはずだ。とにかくリーグやチームの情報発信に耳を傾け、参加していく意識を持つだけで、チームを救う行動になるかもしれない。

また、先日、選手たちの取り組みとして「FootballBootChallenge」を紹介した。

このようなファン・サポーターからの発信で、スポンサーを露出するような企画が生まれていくことにも期待したい。きっとアイデアマンがいて、いろんなことを考えているのではないか。

結局、最後は「人」と「人」の繋がり。その信頼関係が苦境に喘ぐスポーツ界を救うはず。それぞれができる範囲で、スポーツを支える行動を起こしていこう。

取材・文:瀬川泰祐






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