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辞書の上手な使い方

皆さんはニュース翻訳で、語句の調べ物をするときに、どのような辞書を使いますか?私は、特に最近紙の辞書を使うことがめっきり減り、もっぱらウェブ上で語句を調べています。私が調べる語句は紙の辞書に載っていないことが多いというのが、その理由でもあるのですが、ざっと紙の辞書とウェブ辞書の長所と短所を見ていきましょう。

紙の辞書

◎利点

①意味の他に用法や使い方などが詳しく載っている。

②専門家が編纂した辞書のため、訳語の信頼性が非常に高い。

③見開きで前後の語句も同時に視認できるため、視覚的に頭に入ってきやすい。

④親字が先に、その後に見出し語といった順に掲載されており、字単位で意味を調べるだけでなく、簡体字と繁体字を照らし合わせることができる。

◎欠点

①辞書出版時点の語句しか掲載されておらず、最新の語句の意味を調べるのには向かない。

②紙媒体であるため、ウェブ辞書と比べるとどうしても引くのに時間がかかる。

③持ち運びに不便。

ウェブ辞書(北辞郎、Weblioなど)

◎利点

① 語句を引くのにかかる時間は紙媒体の辞書よりも圧倒的に少ない

② 絶えずアップデートされるため、最新の語句や用法を見つけやすい。

③ スマホからでも確認可能。

④ 従来の型にはまらない訳もあり、自分自身ではわからなかった「なるほど」と思えるような訳語、思わず自分の訳文に採用したくなるような訳語に出会える。

◎欠点

① 字単位の意味を調べようとすると、訳語はたくさん出てくるが、その訳語に対応する解説が少ない。

② 見出し語しか出てこないため、視認性はあまり高くない。

③ 専門家ではなく、一般人が載せている訳であるため、間違いも存在する(北辞郎)。

結論

ここから見てわかるのは、紙媒体の辞書とウェブの辞書は互いに欠点と利点を補完する関係であるということです。

加えてニュース翻訳においては主に、①最新語句が調べられること②何気ない基礎的な語句の疑問について文法を含めて掘り下げて調べられること③知らない地名や人物名に遭遇することが多いので字単位で簡体字と繁体字を突き合せられること――が重要になってきます。これらはいずれも、紙媒体とウェブ媒体の辞書の利点で網羅できます。その点でいうと、やはり紙媒体の辞書オンリー、ウェブ辞書オンリーではなく、両方組み合わせて使っていくことがベストではないでしょうか。

私自身は紙媒体とウェブ媒体の辞書に加え、ウェブ上の中中辞典や、最新の政治用語、人物の略歴、人名などを調べるための「百度詞典」、台湾における意味を調べるための「台湾教育部国語詞典」などなどを組み合わせて場面場面で使い分けています。

そして特に重要なのは、一つの辞書を引いて満足すべきではないということです。自分の訳文に当てはめる上で、その辞書の訳が絶対正しいとは限りません。ウェブ媒体、紙媒体を問わず、複数の辞書を引いて、その上で自分で納得できる訳を導き出すことが大切です。

翻訳力は調査力でもあります。なるべく多くの辞書を活用してより質の高い訳文を目指したいものです。

サポートしていただければ、よりやる気が出ます。よろしくお願いします。