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いつかの瞳

むせ返るような

熱せられた空気が

日曜の公園を

ゆっくりと通り抜ける

僕はベンチに座って

昼食のバターロールに

手を付けようとしたとき

遠くから視線を送る

幼い子供に気付いた

真っ直ぐな眼で

じっとこちらを凝視する

愛らしい女の子

私は気付かないふりをして

パンをかじっていたが

ふと

どこかで会ったような

そんな気がして

少し記憶を辿ると

約二十秒後

果たして思い出した

そう

君は僕の

初恋のひと

遥か昔

この公園で出会い

すぐに意気投合し

数時間

遊具で戯れ

息を切らし

園内を縦横無尽に

走り回った

しかし

僕は今

大人になり

君は何故

あのときの幼子のままなのか

答えはすぐに出た

社会の潮流にへつらい

穢れてしまった僕とは違い

純真なままの心の君を

神は永遠の幼子として

その肉体を子供のまま

残したのだろう

僕の恋人だった

小さな君は

やおら僕の元に駆け寄り

にっこりと柔らかく微笑んで

ひさしぶりだね、

と言った

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