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教養のすすめ ~すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる~

「人生を変える一冊」。あくまでそれは、結果論である。
帯にそんなことが書かれている本を読んでも、必ずしも人生が変わるわけではない。

ただ、一冊の本が後の人生に大きな影響を与える、ということはままある。何年かたった後に振り返ったときに、今思えば。という感じで結果として人生を変える本はある。

あぁ今思えばという感覚はまだないのだけれど、私にとって人生を変え得る指針となっている本がある。

これから紹介する本は、特に高校生や大学生の若い人達にお薦めしたい。大学はレジャーランドと揶揄される時代に、なんのために学びに行くのか。その意味を見つけられる一冊だ。

今回読んだ本

「池上彰の教養のススメ」(2014年 日経BP社)である。

東京工業大学のリベラルアーツセンターに所属する教授陣が、教養について余すことなく語る。
自身も教授を務める池上彰さんが、3人の教授にインタビューをする形式でまとめられている。

(※リベラルアーツセンター:リベラルアーツ=教養を取り戻すことを主眼にして設立された機関)

教養とは何か

そもそもの話、教養とは何なのか。

学問・芸術などにより人間性・知性を高めること。また、そのことによって得られる知識や豊かさ。(広辞苑第七版より) 

簡単に言えば、歴史や文学、哲学や宗教学、生物学や数学etc…から学びを得ることである。
そんなこと学びたくない? 無駄じゃないか? そのような疑問に対しては池上さんがこう答えている。

教養ってムダなものです。教養を学ぶとは、時間をかけて何の役にも立たないことに熱中することです。役に立つかどうかなんて、あとからついてくるおまけに過ぎません。

どうやら無駄ということはあっているらしい。さらには役に立つかどうかさえ、分からないのだという。
では教養を学ぶ意味はどこにあるのか。

役に立つかどうかはいっさい保証いたしません。
でも、あなたの人生がそれによって、豊かになります。
それだけは保証できます。

教養から学んで得たものは、今日明日使えるものではない。
けれど、それは確かに自分の礎となって人生を支えてくれる。それがゆくゆく、創造力や変化に適応する力になる。

日本の大学と教養

しかしその教養を、日本の教育は軽視してきたという事実がある。

1990年代頃に、当時の文部省がこう提言した。「大学に必要なのは教養教育ではなく、専門教育や大学院ではないか。それらを重視すべきだ」。

それ以前にも、70年代から80年代には大学の庶民化がはじまり、80年代後半には空前の好景気で、多くの庶民が大学に通うようになった。

文部省の方針により、大学の劣化に拍車をかけた形になってしまった。
それまでの教養教育が軽視され、すぐに役立つ人材を生み出すことに重きが置かれるようになった。

大学生だった私

その傾向は、今なお続いているように思う。なんてたってザ・庶民である私も去年まで大学に通っていたのだ。
私は関西にある、少しだけ名の知れた私立の大学でキャンパスライフを送った。

学部は商学部。実学的な学部だ。
残念ながら、もっともらしい理由では選んでいない。将来役に立つだろう、なんとなくそう思って半ば直感で選んだ。

講義はあまりさぼることもなかったし、試験もしっかり準備をして挑んでいた。しかし、本腰も入れず受け身な学び方をしていたな、と今になって思う。

一般教養(通称パンキョ)と呼ばれる教養の科目は、1年の頃と2年の頃にとる。2年の後半から専門的な科目に移行していく。
とくに一般教養の講義は、講師や生徒の間でもかなり軽視されていたように思う。

「このパンキョはカモ。授業行かんくてもとれる。この教授も楽勝や(以下割愛)」。

友人と話をしても、どの授業が楽に取れるか。そんなことばかり言っていた。
「大学生活は人生最後の夏休み」そんな謳い文句が、耳に入ってくるような環境で、私は大学生になった。

そんな風潮に流され、ご多分に漏れず私も"楽"を重視していたわけだ。
その土壌が固まってしまうと、3年4年になっても学びの本質が理解できないままになる。

当然、中にはしっかりとした学びを得る学生もいる。
ただ現代の大学は、教養どころか学びそのものを意義を見失っているような気がする。

方言してしまった。悪いのは自分である。後悔先に立たずだけど、もっと勉強しておけばよかたなぁ。とひとり回想する。

学べぇ!!

話が少し逸れた。

たとえ大学を卒業しまっていたり、大学に行ったことがなかったとしても教養は、いつからでもどこででも学べる。
何を読めばいいかわからなければ、この「教養のススメ」を読もう。

教養を学ぶための一歩目としてこの本は最適である。
哲学、宗教学、生物学の教授の話があるのだが、目から鱗な講義が聞ける。教養は決して小難しい学問ではなく、私たちと密接に関係していて、とてもおもしろいことに気づかせてくれる。

あと、最後の章にアメリカの大学の現状が紹介されるのだが、軽くカルチャーショックを受ける。アメリカの大学4年間は"教養まみれ"だと言う。日本の状況とまるで違う。

タイトルの「教養のススメ」は、かの福沢諭吉の著作『学問のすすめ』から取ったのだろう。
福沢諭吉は同著で言っていた。(うろ覚えの私の意訳)。
"個人の集まりが国である。その一人一人が学問を志し、自分の才能や人間性を高めなければならない。学ばずに衣食住を得るだけでは蟻と同じだ。だから学べぇ!!"。

最後にもうひとつ。この本で池上さんが紹介されている、ある言葉を紹介して終わりにしよう。
私の人生のスタンスを決定づけた言葉でもある。

それを残したのは、慶應義塾大学の中興の祖と言われている小泉信三。学問についてこんなことを言った。

「すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる」。

急がば回れではないが、教養を身につけることが一番いい道、なのかもしれない。

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小林
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自分に言い聞かせるような、ひとりごとのようなエッセイを書いています。23歳。いつもどこかにホープとユーモアを。 今週のスキリアクション→ラッキー苗字

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