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【ARCHITECTURE OF AESOP】 スキーマ建築計画の魅力

aesopを通じて建築を知る。そのような経験をしました。

<イソップ>は、オーストラリア・メルボルン発のスキンケアブランド。1987年に、美容師だったデニス・パフィティスさんが創業したブランドです。

2010年代はライフスタイル全般がファッション化した時代だったので、男女問わず石鹸や化粧水などについてもこだわる人々が多かったように思います。そして2020年代になり、モードファッションの世界でもサステナビリティが標準装備されるようになり、完全に時代はエコ/リユース/リサイクルが当たり前の価値観として現れてきました。

僕が初めてイソップを意識したのは空間インテリアがきっかけです。
京都にKYOTOGRAPHIEという写真展示のイベントで市内にある各会場を巡る趣向を凝らした展覧会だったのですが、会場の1つにイソップ河原町店が選ばれていました。
お店には現代写真の展示を見に行ったわけですが、空間の静謐さに心を打たれました。未来的なドラッグストア?60年代に流行したミニマルアートのような空間、商品の配置。そういえば、雑誌で見かけた青山店もシックな空間だったような、と思い出した僕は滞在した場所にイソップがあれば見に行くようになります。

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イソップ建築を調べていくと固定のデザイナーではなく、複数名のデザイナーさんが都市やその場所/空間を意識して作られていることがわかりました。

そしてご紹介したい記事がこちらです。「イソップ出店をめぐる秘密」  商店建築(2016年8月号)

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ご好評いただいている最新号「商店建築 2016年8月号」。
巻頭の新作特集に、スキンケアブランドのショップ「イソップ東京店」(P.58)が掲載されています。
これは、東京の旗艦店となる重要な位置づけのショップ。
空間設計は、これまでもイソップの店舗を多数設計してきた、シンプリシティの緒方慎一郎さんです。
  
そう聞いて、店舗デザインに携わっていらっしゃる皆さんは、イソップの店舗がいくつか頭に浮かんだのではないでしょうか。
日本に直営店が18店。どれも、個性的な店舗デザインです。青山、丸の内、六本木などをはじめ、京都、大阪、福岡にも店舗があります。
では、イソップがどんなふうに出店地を選んでいるか、ご存知ですか?
私は、イソップの店舗を見ながら、以下の2点がずっと気になっていました。
・出店地をどのように選んでいるのか。
・複数のデザイナーに設計依頼しているが、どのように起用し分けているのか。

  
 今回、「東京店」の取材を機に、その疑問を解決し、読者の皆さんと共有したいと思いました。
そこで、イソップ・ジャパンの出店を統括するマネジャーの春日亜希さんに、その疑問をぶつけてきました。
そのインタビューを、「商店建築 2016年8月号」の63ページに掲載しています。
当初聞こうと思っていた話題以外にも、「なぜイソップは、初めて出店する都市には、2店舗同時に出店するのか」など、重要な出店戦略に関わる構想を披露してくださいました。
 

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2店同時で、偏らない出店戦略

ーーー日本1号店の青山店(11年10月号)は、なぜ裏通りに出店したのでしょうか。

その地域に根付いている地元商店やコミュニティーがあり、なおかつ多くのトラフィック(人通り)があること。そして、1店舗目なので、ものすごくコンセプチュアルなことができそうな場所。それでいて賃料が高過ぎない。それを条件にあの場所を探しました。

ーーーその後、日本で次々と店舗を増やしていきますね。

10年頃、イソップのグローバル展開が加速し、パリではサントノレ通りについに出店しました。そのタイミングで「日本でも一等地の銀座に路面店を」と、銀座に路面店を出したのが2店目です。「銀座レンガ通り」にちなんでレンガを用いたデザインで街並みに馴染む店舗です。
青山と銀座でコンセプチュアルな店をつくりコアなターゲットにブランドイメージを伝えた後、出店戦略として、「裏通り」とは対照的に、あらゆる客層が訪れ、トラフィックがある商業ビルへ展開しました。それが、2012年の「新丸ビル店」「横浜ベイクォーター店」です。こうして路面に2店、商業ビルに2店と、バランスをとりました。

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イソップ京都店 - 設計/SIMPLICIT

ーーー店舗デザインにあたり複数のデザイナーを起用していますが、どのように選んでいるのでしょうか。

今、消費者は、バブル経済の時代を知る人達から世代交代して、飾りや表層にではなく、自分の生活の本質的なところにお金をかける世代が主流になってきていると感じます。そうした価値観を表現できる設計者の方々に依頼することが多いです。
1号店は、それに加えて、東京生まれ、東京育ちで、「東京らしさ」を表現できそうな東京出身の建築家の長坂常さん(スキーマ建築計画)に依頼しました。

全編のインタビューは先ほどの商店建築のブログを見て頂ければと思います。抜粋したところだけでも、マーケットへの視点、店舗運営の考え方に非常に鋭い視点があり、堪能することができますよね。

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イソップの空間デザインは建築家が変わっても基本軸は一緒だそうです。整理された空間デザインがポジティブな意味で顧客に緊張感を与えます。僕はその中でも、イソップ東京1号店のデザインを手がけた<スキーマ建築計画>主宰の長坂常さんの建築がとても好きです。

長坂常さんの建築は表と裏をひっくり返したような考え方をするデザインで有名です。<Sayama Flat>と<奥沢の家>の記事を見て、僕自身も「デザインをすること」という意識について多くの影響を受けました。
以下、10+1の記事から引用します(写真は全てSayama Flat)

「A面」感覚と「B面」感覚

長坂常──《Sayama Flat》で最初に試みた4室は、お金がなかったので図面は描かず、もし失敗したら解体してしまえばいいという姿勢で臨んだので、みんなでハンマーとバールを持って壊しては掃除をするという、完全に現場仕事でした。もともとリノベーションに相応の改修費を提示していたのですが、クライアントであるこのマンションのオーナーさんからの要望は「現状復帰と同等の予算でこの空間を変えられないか」というものでした。ただ、話をしてみると、彼は「建築家は自分の住む空間は素敵にするけれども、他人のための空間は非常に息苦しくつくる」という考え方をしていて、「あ、そういうノリでいいんだ」と理解したわけです。

行ってみるとそこは築38年の社宅マンションで、建築的に褒められるところがなんにもない。なおかつ息苦しいので、まずは明るさを確保するべく壁を取っ払っていきました。あとはまあIKEAでキッチンでも揃えればいいかという程度に思っていたのですが、現場で解体を進めていると、それまでは想像もしていなかったような、かっこよく美しい状況に自分が立ち会うことになったわけです[fig.2]。たとえば、いままで「畳+障子+ふすま+砂壁+押し入れ」のような「和室」という概念でくるまれて認識されてきたモノたちのうち、ひとたびなにかが欠けてくると、突如「押し入れ」が、他の要素と拮抗する存在になりえるのだということを強く意識するようになるのです。つまり、モノはひとつずつ独立して存在していて、それぞれがそれぞれとどのような距離をもつことが美しい状態を生むのか、その状態を編集していくことの面白さに途中から気づくことになったのです。そのときから設計の方法が変わり、一切足さずに抜き取っていくことだけですべてを再構成していこうという判断をしました。

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門脇──ここでは頭の中であらかじめ最終像を描かず、ともかく解体をしていったわけですよね。つまり解体の過程に参加しながら、それを丁寧に観察することが、そのまま新しい空間を発想することでもあったわけです。そのとき長坂さんは、解体の結果が「かっこいい」あるいは「美しい」と感じられることを頼りに進んでいったということですが、それは具体的にはどんな状態ですか?

長坂──例えば、LDKでは室内の壁や扉ひとつで和室と洋室が切り分けられているわけで、それらを同時に見ることはないという絶対的な条件で空間ができているわけですね。そうした絶対条件を壁や扉と一緒に外してしまうと、和室と洋室がバッと同時に見えてくるわけです[fig.3, 4]。そういう光景は多くの人にとっても見たことのないものだと思ったのですが、それはまずは「かっこいい」「美しい」という以前の「刺激的」という表現が合っているかもしれません。そこから「かっこいい」「美しい」までどう昇華するのかまだ完全に明確には言えませんが、さっきまでただのLDKだった空間がなぜ「かっこいい」空間に変わってしまったのか、自分でも不思議でしようがなかったですよ。

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足して変わるのはわかりますよ。でも、引くだけで構造などはいじっていないのに空間がよく見える、というのは非常に新鮮な驚きでした。それは逆に、さっきまでの「うゎ、ここは耐えられない」という感覚はなんだったのかを考えるきっかけにもなりました。説明をつけることが難しいのですが、こういう価値観の転覆が自分が行なう解体によって起こっていることに非常によろこびを感じていたのです。
ですが、当時はこの感覚が共通言語になるのかどうか、つまり他者との共感を生み出すことができるのかがまったくわからず、発表しようかしまいかについてもずいぶん悩みました。同時に、この感覚は確かなよろこびの感覚だけれども、このままこの道を一歩先に進めてよいのか、よくわかりませんでした。だから仲間内で「かっこいいよね?」「大丈夫だよね?」と確認し合うことしかできませんでしたが、じわじわと客観的な評価が得られる状況になっていって、4戸から始まり全部で20戸ほどをこの方法でつくりました。すべて塗装職人のなかむらしゅうへい君に入ってもらったのですが、ここでは塗装をせず、なかむら君が普段仕事でお金をもらっているようなことは一切しないでもらうことにしました。「塗らない」という判断も価値を生むから、絶対に無駄な塗装はしないでください、という依頼です。僕は仕上げ管理者としてのなかむら君とスタッフの間に立って、現場で必要な指示を出すという立場でした。
車で狭山からなかむら君と帰ってくる途中、《Sayama Flat》で得た実感から、東京の風景もなんとかなるんじゃないかというようなことを何度も話した記憶があります。そうしたことから、見えるものをあらかじめ固定された価値観によって見るのではなく、まだ評価されていないものも含めて、都市を360度見渡して見えるものすべてを、平等に見る姿勢が自分のなかにつくられたように思います。

<奥沢の家>や他の長坂さんが手がけた建築物は先ほどの10+1の元記事をご覧ください。建築家の思考=制約から広げていくデザインの変遷について密度の濃いお話が展開され、読者の僕たち自身の考え方にも多くの影響を与えてくれます。

<Sayama Flat>のデザインを援用したアパートメントが大阪の北加賀屋というエリアで賃貸に出ていました(現在は入居中)。40平米で68000円、心斎橋駅まで電車で15分という利便性を考えるならば、コスト的にお得だなと感じる物件です。自分がもし大学の建築科に通う学生ならば、ここに住んで模型を作る日々を過ごしてみたかったです。

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本日はイソップの素敵な空間デザインから、長坂常さんを紹介していく記事でした。

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板倉龍城/Tatsuki Itakura - ファッションにまつわる記事をキュレーションするnoteを毎日更新。www.instagram.com/tatsuki_itakura/ 普段は変化球な地鶏をあげるインスタ民。www.tatsukiitakuragebana.com