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【写真とファッションと社会性】 1_WALL

自身のファッション観を表現するために/誰かに伝達するためには、テキストだけでは足りなくて(もちろん、テキストだから伝えられることも沢山あります)、直接出会うこと/着用する/見ることが距離的に無理な場合も沢あります。
口コミが一番影響力がありそうですが、口コミで◯◯って、今来てるよね!とか、◯◯って、いう人(モノ)知ってる?
そういったことを誰かに話す時に、役立つのが写真と動画です。僕たちの生きている世界では、もう誰もヴィジュアル表現から逃れることができなくなりました。

1_WALL展グランプリ - 平本成海さんの作品の凄さ

 写真界の次世代を担う若手を発掘する第20回写真「1_WALL」展で、グランプリを受賞した平本成海の個展「narconearco」が、銀座のガーディアン・ガーデンで開催される。会期は2月18日から3月14日まで。

 平本は、毎日自宅に届く新聞の記事や写真から着想を得て自室で作品を作り、その新聞の刊行日中にSNSで発信するというルールを自身に課している。複数の写真をつなぎ合わせたり、細かく編集加工した作品は、不自然に変形した女性の顔や、つじつまの合わない風景など、どこか違和感を感じる作風が特徴。「1_WALL」展で発表した「H30N」は、それぞれの作品のつながりに気づかされる展示構成や、作品の完成度の高さが審査員から評価されグランプリを受賞した。

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審査員より

毎日自宅に届く地方紙の紙面から選んだ写真を複写し、それを加工して新たなイメージをつくり、その日のうちにSNSにアップする。平本成海の制作プロセスとは、そのサイクルの反復である。個々のイメージは謎めいている。これらはいったい何なのか?
「写真はコードなきメッセージである」とはロラン・バルトの言葉だ。語義と文法に従えば、少なくとも文字通りの意味は了解される言語記号とは異なり、メッセージとして発信された写真には、読解のための汎通性のある規則=コードは存在しない。にもかかわらず、私たちは日常にあふれかえる写真に対して、あらためて疑問を抱くでもなく接している。narconearcoはおそらくそういうことをめぐって発信されたメッセージだ。
だとすれば、どうやら受信者として指定されているらしい私たちに期待されているのは、個々のイメージの謎を解くことではなく、それらを謎として受けとる私たちの思考そのものを観察することなのではないか。そんな受信の作法を身に着けた時、ひょっとすると謎はいっそう深まるのかもしれないけれど。

増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)
「1_WALL」(ワン ウォール)はガーディアン・ガーデン主催による写真とグラフィックデザインのコンテスト。

ひとつぼ展をリニューアル
し、2009年より新しい公募展として開始された。グラフィック部門と写真部門の2部門があり、いずれもテーマ、手法は自由。年2回開催。応募料なし。

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『ひとつぼ展』は、ガーディアン・ガーデンでの個展開催を最終目的とした二次審査制の公募展。1992 年から2008 年までグラフィックアート、写真の2部門でそれぞれ年2回開催してきました。ポートフォリオによる一次審査を通過した10 名が『ひとつぼ展』で各自一坪(1.82×1.82m)内に作品を展示、発表し、会期中の公開審査会で審査員や観客を前に最終プレゼンテーションを行い、グランプリを決定。グランプリ受賞者は、一年間の制作期間を経て個展を開催してきました。審査には、各界の第一線で活躍している方はもちろん、より広い視点で審査していただくためにバラエティーに富んだ方々に審査にあたっていただきました。これまでの『ひとつぼ展』入選者は566 名にのぼり、その中から各界で活躍するクリエイターが数多く登場しています。そして2009 年に「1_WALL」として生まれ変わりました。

日本で(商業写真メインではない)写真作家活動をする上で、1 WALL(exひとつぼ展)は、それを意識する/しないことを強いられるコンペディションという認識があります。

どこまでがそれを「写真」と呼ぶべきか。
「写真」という枠組み/表現の仕方が大きく変わってきているのが現在で、今回紹介しています1_WALL展グランプリの平本成海さんの作品はまさにその境界を融解していると感じ、とても興味を持ちました。

東京国立近代美術館主任の増田さんが審査コメントで語ったように、平本さんの作品を <個々のイメージの謎を解くことではなく、それらを謎として受けとる私たちの思考そのものを観察することなのではないか。そんな受信の作法を身に着けた時、ひょっとすると謎はいっそう深まるのかもしれないけれど> という風に読み解こう(読み解かないで良い)と解釈して審査しています。

ファストな時代の中で、誰にとっても丁寧でわかりやすいインパクトのある表現が多くの人には好まれるようになりました。
現代美術や写真には<コード>や<文脈>があって、それをある程度身に付けた状態でないと分からない作品というものは存在します(実はそれはファッションの世界にもあることです)。
そして、身に付けている人だからこそ、「分からない」から良い。という評価軸も生まれてきます。ここがポイント。

「分かる」と「分からない」について

分かること - はたして本当に「分かる」人とは存在するのでしょうか。哲学めいたことをつい口走ってしまいます。僕たちカルチャーのオタクは、<分からないモノ>に出会う衝撃を楽しみに生きています。
<分からないモノ>に出会うことで、自分なりの答えを見つけるために沢山また学んで何か自分なりに語りたい、自分の言葉で誰かにその凄さを伝えたいのです。好奇心はきっと、<分からないモノ>に出会うことで生まれる気がします。

分からないこと - 多分、分からないままで良い気がします。ただ1つ間違ってはいけないのが、分からないからいいやと放棄する訳ではなくて、あらゆる角度から自分なりの視点で考えて調べて、それでも分からなかった。という態度で分からないということが、ここでは良いとされています。

何の話をしているのかというと、先ほどの平本さんの作品を評した<東京国立近代美術館主任の増田さん>のコメントについての僕の見解でした。謎をどう個々人が受け取るのか。そこに対して、増田さんは平本さんを評していると受け止めることができました。

ハイアートとファッション性

ファッションの世界とハイカルチャー/ハイアートの世界はとても似ているように僕は感じています。
作者がそれぞれ表現活動をするときに、<あえて分かりやすくしている>選択と、<意図的に、分かりにくくする>選択があります。これは両文化に言えることだと思います。

例として、以前の僕の記事で取り上げたキムへキムさんのファッションショーでは鑑賞者は皆、キムさんのショー演出について、それぞれが持ち合わせたファッションや文化/社会についての考え方で、向き合わざるを得ませんでした。

「点滴や自撮り棒を持ったモデルも登場してシニカルな一面を見せたが、“SICK(病気)”とプリントされたTシャツを着たモデルに点滴を持たせたことは、SNSを中心に賛否両論を巻き起こし「病気をファッションやトレンドにするな」 と話題に↓↓↓

後のWWDのインタビューによって、キムさんのショーでの狙いについてはこの記事内でも明らかになりましたが、このインタビューに出会わない限りは実際は自分の頭でその出来事に対して考えるしかありません(そして、それが楽しい)。

<考えることをやめない>が楽しい

僕は平本成海さんのこの作品を(それが合っているかどうかは別として、一個人の感想になりますが)とてもファッション的だと感じました。
ファッションは時代を内包していくものです。人は制作物を作るとき、必ずアウトプットするためのヴィジュアルをデザインとして優れているかどうか考えざるを得ません。

平本さんの作品はデザインが優れているだけでなく、新聞記事やその中の写真を引用し作品に落とし込む=時代/時間を纏うことで、ファッションとしての強度が強い作品だと感じます(時代/時間を纏った作品で有名な現代美術家 - 河原温さんの日付絵画を下敷きに纏っているのではないかという単純な推察も楽しい)。

今日は雲を摑むような話になってしまいましたが、とても楽しく記事を書くことができました。多くのことを考えさせてくれる平本成海さんの作品、是非触れてみてほしいです。

 今回の個展では、「境界線」や「ルール」をキーワードに、空間全体を使った立体的な展示が行われる。会期中3月11日には、東京国立近代美術館主任研究員の増田玲と平本によるトークイベント「目的はないが手段は知っている」が開催。平本の作品はどのように解釈できるのか、2人の視点で語られる。トークイベントは事前申し込み制で、参加は無料。

■第20回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展 平本成海展「narconearco」
会期:2020年2月18日(火)〜3月14日(土)
時間:11:00〜19:00
場所:ガーディアン・ガーデン(東京都中央区銀座7-3−5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F)
入場無料/日・祝休館

■トークイベント「目的はないが手段は知っている」増田玲×平本成海
日時:2020年3月11日(水)19:10〜20:40
会場:ガーディアン・ガーデン
参加無料・要予約

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板倉龍城/Tatsuki Itakura - ファッションにまつわる記事をキュレーションするnoteを毎日更新。www.instagram.com/tatsuki_itakura/ 普段は変化球な地鶏をあげるインスタ民。www.tatsukiitakuragebana.com