部下の人々がすごい良い製品を作っていたので、製材している現場を見せてもらった
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部下の人々がすごい良い製品を作っていたので、製材している現場を見せてもらった

Sean


https://www.itoki.jp/products/table/silta/


今回の新製品で結構大胆な特徴になっているのが、“耳”と呼んだり“Live Edge”と呼んだりしている天板長手方向のエッジパーツだった。これは簡単にいうとよく古い日本家屋や旅館で使われている銘木の卓のように、エッジを成形しないままの形状に残す、ということを意味している。銘木の卓は丸太からそのまま切り出した1枚のムク材であるのに対して、ウチの部下の人々が作った新製品は「未成形の形状のエッジ材をわざわざ作って天板に接続してリアルウッド要素を出す」というモノだった。三本目の動画は丸太からこの耳を作り出す製材工場の様子をまとめた。

毎度恥ずかしながら、製材というのは木を板製品にするというイメージしか持っていなかったのだが、その真髄は乾燥技術にあるということを痛感した。確かに一本目の動画で伐採の方の教えてもらったように伐採時は時期によっては、その方曰く、「ドワーっ」と出るほど水が流れているらしい。一方で家具材料としての木の代表的な難点は、使われる環境の乾燥度合いによって反りかえってしまい、形状が維持できないということにある。乾燥はこの難点を低減する重要な技術だとわかった。動画でも触れているが、まず天然乾燥の工程が半年、その後ボイラーでの人工乾燥が行われる。天然乾燥は文字通り天日に晒すことであり、製材された板が外に置かれている状態だった。当然、好天の日もあれば雨、風、雪にさらされることもある。ひたすら時間が経過することで自然な乾燥が行われている。これに対して人工乾燥は、高度に温度管理された状態を作り出すことが要諦で、長年かかって最適な設定条件を編み出していることが技術的妙味と感じた。いつも感じることだが、モノづくりは人・機械・素材・加工の組み合わせであり、最適な組み合わせを見つけることは、奇跡に近い。よって製造業は毎日奇跡を生み出す仕事だと思っているのだが、この乾燥技術もまた天文学的な組み合わせの後に編み出されたものに違いない。なにせ、天然乾燥の半年間という全くコントロール不可能な期間を経てからの温度設定なのだから。

オフィス用の家具の製造を行なっている者からすると、資材は入ってきた段階ですでに工業製品化されているので既に人工物を作っている感覚があるが、製材の工場はグッと自然に近い工業であると感じた。とりわけ乾燥は、「天然」乾燥と「人工」乾燥が連続して行われるので、まさに自然と人工の接点なのではないかと思う。伐採工程も人と森との共同の営みであることを感じたが、乾燥工程は自然から資源をヒトに託された瞬間なのではないか。家具のメーカーは最終完成品の使用者に直結している産業なので、正直なところ普段あまり意識する機会はないが、万物は地球のめぐみで成り立っているのだということを深く感じた。

ところで耳を使うと何が良いかということだが、製造工程では銘木の卓として使用される以外は多くは端材としてチップになり燃料になってしまう。耳で活用すると木のそのままの形で人が使える、ということになる。もちろん、燃料になることも悪いことではないのだが、木が持つ効能としての温かみを普段使いのオフィス家具に付与できるというところが新しい。銘木の卓にするときは両側の部分、通称「両耳」をつけた状態で製材しなければならず、製材方法にも制限が出るが、エッジパーツとして成立するのであれば「片耳」単位で製材しても良いので汎用性がグッと高くなるようだ。つまり、木をより原型に近い形状・性能で使う範囲を増やせるということがグッドポイントになる。ちょっとまどろっこしい話のような気もするが、実際の丸太と製材現場に立つと合点がいく話だった。工場の建屋の外のたっぷり雪が積もった構内の遠くの方まで案内された時は、一体どこに行くのかと思ったが、自然と人工が出会う瞬間に立ち会ったみたいで、ある種不思議な体験をした気になった。

撮影開始前に経営者の方とお話させてもらった。先代が創業された頃のことや地域のいろんな努力の話、森林資源活用にまつわる理解を得る苦労などエモい話満載だった。ぜひ残しておきたい話が多かったので許可をもらって動画に織り込ませてもらった。

自然を感じ、人を感じる、至極概念的な経験だった。




動画の内容:

天然と人工はどこかで出会う。
天然の木が工業製品である家具に変わる長い旅の中で、その出会いの地点は “乾燥”にあった。
真っ白な世界の中に積まれた“耳”を見た!

00:00 オープニング 森と木についてのエモい話は尽きないね
01:55 製材
02:23 自然乾燥
02:40 シルタになるやつに出会えた
02:52 確保してあるよ〜顔が見える流通
03:22 ご心配なく
03:30 人工乾燥
04:05 成形
04:13 これは新しい素材活用だ
04:57 旅行記

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Sean
まぁまぁすごいことを生み出しているのに表現力の不足とインハウスの制約で残念なことになってるクリエータの才能を開花させたい。 そんなには大きくはないメーカーで製品開発を担当している50歳代。