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救えなかったマフラーの香り<全5話>

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オンラインゲームからはじまるリアル恋愛短編小説です。あなたとわたしを繋げたグレーのマフラーは 次第に捻じれ合い 歪んだ愛へと進ませた。ゆりの恋愛観を確立させた大きな恋愛の一つです… もっと読む
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救えなかったマフラーの香り #1

>> プロローグ まだ寒さが残る初春 独立して念願であった自分の店を 開業して2年目 いつものように仕事を終えて 車で帰宅しようと 駐車場から出て裏道を走り始める もう薄暗く日も落ちかけていた その時 前を走っていた車の動きに違和感を感じた ゆっくり徐行スピードに落として 辺りに目を凝らす 道の真ん中に白っぽいものがうごめいている ビニール袋かと思って 通り過ぎようとしたとき ”茶虎の猫” だとわかった ぶつからないように 避けるのが精いっぱいだった 4本

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救えなかったマフラーの香り #2

あなたからもらった 仮想のダイヤの花束を 現実で ”形” にしたの それはとても甘くて 歪んだ香りがした *** 意外と付け心地がよかったグレーのストールは 頻繁に身に付けて仕事場に向かった 開業2年目、まだ新人オーナーだから 誰よりも気合いを入れないといけなかった あなたを想って購入した ジルスチュアートの香水 キャップは5枚の花びらを持つ3つの花が束ねられ クリスタルの花束をイメージしたというボトルは まさについ最近あなたからもらった ”ダイヤの花束” のよ

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救えなかったマフラーの香り #3

あなたの捻じれた恋愛観を わたしの歪んだ愛で ほどこうとした ますます絡み合い お互いの首を絞め合った *** オフ会で初めて会ったあなたは わたしにとって初めての顔ではなかった 芸能人やモデルのように整った顔立ち 誰が見てもイケメンって思うだろう 聞けば地元でモデルをしていたらしい そんなあなたは積極的にSNSで自分を発信する人だった 今日のオフ会であなたの顔を知らない人はいない むしろ あなた狙いで参加した女性もいたのではないだろうか 社交的で積極的に男女

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救えなかったマフラーの香り #4

眩い光に群がる無数の夏の蛾 払っても払っても ひらりと再び舞い戻る どれだけ強く輝こうが 太陽の下を飛ぶ蝶は 絶対に近づくことはないのだから *** 粉ものを焼く香りがただよう 賑やかな飲み屋街を抜けて 裏路地をゆっくり歩いていく あなたはまだ学生なのに 7人もの女性と付き合ってきたという 婚約中の女性とも関係を持ったって そんな不思議な恋愛歴 仮想世界から持ち出したと 簡単に想像がついた 「その彼女と現実で付き合うつもりはないの?」 ペアを組んでいるその彼女が

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救えなかったマフラーの香り #5<終>

明るくて前向きなあなたに 歪んだ愛は似合わない 捻れた恋も似合わない どうかこの一年の出来事は 現実から切り離された ゲームの世界だったと 夢の中に押しやって 大学で 社会で 素敵な恋愛 見つけて欲しいの 一途にずっと ひとりの人を愛せた事って 中々幸せだったよ そういう幸せを あなたには感じてもらいたいと 願う *** >> ゆりさんはTwitterしてないから、こっちに載せる あなたのInstagramには たびたび グレーの ”マフラー” を身に付けた

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描き切れない最後の恋

目をひらくと ホクロ一つないなめらかな背部が 飛び込んできた 肩甲骨が綺麗に浮かび上がり 腰にかけて美しい逆三角形が フリーハンドで描かれている 薄暗いバスルームで シャワーを浴びる男性の身体を 生まれて初めて目にしたとき 「ダビデ像だ」 と感嘆の声をもらした日を 唐突に思い出した 毎日のように描き続けたダビデ像は 頭部しか馴染みはなかったけれど いつか全身をデッサンしてみたいと 当時の心が疼きだす たまらずその一番広い部分に左手を当てる 堅い筋肉を覆う一切無駄のな

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