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日陰と連れ立って歩けば7月

駅の階段を降りながらリュックの中身を漁る。
指先の感覚でお目当てのものを探り当て取り出した。

昨日買ったばかりの新しい日傘。

上の3分の2ほどが涼し気なライトブルーで、裾はホワイト。
持ち手の部分は透明でキラキラとしていて、まるでひんやり冷たい氷のよう。

開くと、真新しいビニールの匂いがほんのりと漂ってきた。まだ使い慣れていないんだということを鼻先から実感させてくるその匂いに、なんだかワクワクしてくる。

日光を遮るだけでこんなにも暑さが和らぐから不思議だ。太陽って凄い。

夏から秋になり冬を越え春を迎えて…
また夏が来た頃には、殺人的なこの暑さを忘れてしまう。
そして暑さに殺されそうになってからやっと思い出す。

…「日傘を持たなきゃ死んじゃうよぉ…!」


…去年まで使っていた日傘は間に合わせで買ったものだからボロいし、それに無くしてしまった。
だから今年は新しい日傘を、しかもちょっと奮発して良いものを買った。
もう無くさないようにね。


7月になった最近、そんなこんなで新調した日傘を持っていつもよりも軽い足取りで職場へと向かった。
快適さが段違いだ。
日を遮るだけでこんなにも涼しい。


日傘をさして、日陰と一緒に歩く。
肌を刺す日光から守ってくれる、心強い味方。
日陰と連れ立って歩いている毎日。

なんでこんなに毎日毎日暑いの?
もう夏なの?
もう7月なの?それってもう夏ってことだよね?!
早くない?!
ついこの前まで鳥肌立てて震える毎日だったのに!

……最近暖かくなってきたな〜。
寒くなくていいな〜春だな〜。
なんて思っていたのに。

気がつけばもう7月、気がつけばもう夏。
暑くて溶けそうになって日陰と仲良くしたい夏。
日陰にいないともう生きていけない。


日陰と連れ立って歩けば7月。

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