大阪市を廃止し特別区を設置する住民投票の結果について(談話)

2020年11月1日
社会民主党幹事長
吉田忠智

1.本日、政令指定市である大阪市を廃止し、4つの特別区に分割するかどうかを決める、大阪市民による住民投票が行われた。社民党は、大阪市を廃止し特別区を設置することは、分権・自治の流れに逆行すること、市民のためではなく効率化・競争力強化のための自治体再編であること、市の財源や広域行政の権限が府に集中しまちづくりの権限や総合的政策展開が後退すること、市民の声が市政に届きにくくなること、市民サービスの切り下げや負担増につながるものであること、何よりも歴史と伝統ある大阪市がなくなり二度と戻れなくなってしまうことなどを強く訴えた。そして、立憲民主党や日本共産党、自民党はもとより、多くの有識者や市民の皆さんと連携して、大阪市の廃止に反対する運動に取り組んだ。「大阪都構想」の問題点の訴えが届き、厳しい情勢をはね除け、二度にわたり大阪市民の良識を示す結果となった。市民の力で大阪市が存続することとなったことを、心から喜びたい。

2.今回の住民投票の結果によっては、「憲法上の地方公共団体」である市が廃止され、権限及び財源の制限された「憲法上の地方公共団体でない」特別地方公共団体である特別区に分割される初めての例となるところであった。住民の自治権を後退させ、市の自治権を府が奪う集権化であり、分権・自治の流れに逆行するものほかならない。市の廃止と特別区への分割によって、まちづくりの権限も一般市以下となり、大都市自治体としての総合的政策が展開できにくくなるうえ、現行の区役所は地域自治区の事務所にすぎないものとなり、市民の声や要望は届きにくくなる。100を超える一部事務組合の設置などで、かえって「多重行政」が生じることも懸念された。1889年、大阪府下4区が大阪市となったが、内務省が任命した府知事が職務を執行しており、市庁が府庁から独立したのは1898年のことである。およそ130年前の府下4区の時代に戻ってしまうことを防ぐことができた。

3.維新の馬場幹事長は、代表質問で「市4分割 コスト218億円増」という見出しの記事を掲載した報道を「大誤報」と批判し、試算した大阪市も「捏造」だとして謝罪した。しかし、大阪市を分割すると、スケールメリットが失われ、当然、行政コストは上がる。4特別区に分割して増える経費について、国は保障しないことにしており、地方制度調査会専門委員会では、「大阪市民があえて茨の道を行く」、「特別区になった結果、より厳しい財政事情に追い込まれる」という声も出ていたのは、明らかだ。議会や教育委員会を各特別区につくるコストが増えるのに加え、庁舎整備費やシステム改修などもかかる。財政試算では、スポーツセンター、老人福祉センター、子育てプラザといった施設の削減が盛り込まれ、水道料金の値上げに加え、敬老パスや子ども医療費の助成などが維持できるのかも心配されていた。大阪市民の負担が増えるとともに、市民サービスが維持できなくなる不安や懸念について、市民の皆さんに理解していただき、拡げることができた。

4.「大阪都構想」は、大企業のための成長戦略を進め、都市間競争に勝ち抜く街に育てるという、効率化・競争力強化のための再編であり、市民の暮らしや自治を豊かにすることにはつながらない。大阪府知事、大阪市長および維新に対し、二度にわたる市民の良識の結果を重く受け止めるよう強く求める。大阪市は、アジアで住みやすい都市1位にも選ばれたことがある。社民党は、これからもカジノや万博、開発最優先ではなく、市民の皆さんにとって住みよい大阪市をめざし、市民の暮らしを守る立場で全力で取り組んでいく。

以上

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