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科学雑誌を素人が読む[088]

 『サイエンス』2020-08-28号の冊子をブラウズする。北極海の調査に関するニュース記事が掲載されているので読む。凍りついた海について今日、何を観測するというのだろうか? という素朴な疑問がまず浮かぶ。

来月にはその〔=北極海の海氷の〕面積が年間の最小値に達し、記録的な最小値を記録する可能性がある。(Next month its extent will reach its annual minimum, which is poised to be among the lowest on record.)

 北極海の海氷の規模が季節変動することは知らなかった。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋地球研究船「みらい」(写真:JAMSTECのサイトから)が先週の土曜日に日本を出港したというツイートを見かけたが、海が凍りついていない時期だからこそ北極海へ向かったのかと会得する。

北極の温暖化は世界平均の3倍の速さで進んでおり、氷のない夏の到来は避けられないことを大半の研究者は認めており、それはおそらく早ければ2035年になると予想されている。(With the Arctic warming three times faster than the global average, most scientists grimly acknowledge the inevitability of ice-free summers, perhaps as soon as 2035.)

 温暖化の影響で冬季に港が凍らなくなるロシアの一部の都市は、温暖化をむしろ歓迎しているという報道を昔聞いたことを思い出す。

今日、温暖化した大気が氷の喪失を加速させる唯一の要因ではないことが理解されつつある。海流と波が強まることで氷が砕かれている。先週発表された研究では、北極海の深部の熱が上昇し、氷を下から溶かしていることが示唆されている。(Now, he and others are learning that a warming atmosphere is far from the only factor speeding up the ice loss. Strengthening currents and waves are pulverizing the ice. And a study published last week suggests deep heat in the Arctic Ocean has risen and is now melting the ice from below.)

 北極海をめぐる環境は激変しつつあり、その基礎データを集めるべく各国の調査船が北へ向かっているということだろう。記事にはほかに、北極海の特記事項として、深海にゆくほど水温が高いという興味深い事実も記されている。本当に知らないことばかりだ。

 昨年の秋に出港し、同じく北極海を航行して観測活動中のドイツの「ポーラーシュテルン号」(Polarstern)という砕氷船がある。そのアカウントを出港直後からフォローして日々ツイートを眺めている科学ファンのひとりとしては、〈観測が日々進行中〉の研究機関/研究室の〈取って出し〉的な情報発信がもっと増えればいいなと思う。JAMSTECの「みらい」にもそのあたりを期待している。研究機関の広報部による公式発表とは別に、外部の書き手を同船させて日々レポートをしてもらうというのはどうだろう。■

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