見出し画像

科学雑誌を素人が読む[022]

 午前中に『サイエンス』2020-07-10号の冊子版が届く。「心を鍛える(Exercising your mind)」と題する解説記事を読んでみる。なかなかにエグい実験が行われたようだ。ざっくりいうと、「運動をする動物から血を抜き取って、運動をしていない動物(または老いた動物)に輸血して、運動の効果をみる」というもの。➣定期的な運動は身体/脳の健康によい。血液中に何か、運動の効果を「個体を越えて」もたらす物質が生じているのではないか? という仮説が研究の動機にあると推測される。記事のタイトル中に「mind(精神・心)」という語が含まれる理由は、運動の効果として身体的な効果のほかに精神的(or 認知的)な効果についても調べたためかと思われる。➣で、結果はどうだったのか? 結論は以下のセンテンスに簡潔にまとめられている:

脳の老化を緩和するための運動の有益な効果が、運動をしたマウスから、血漿の移動によって安静なマウスに伝達されることを○○らは証明した。(XX demonstrate that the beneficial effects of exercise in mitigating brain aging can be conveyed from exercising mice to sedentary mice through plasma transfer.)

 動物実験の結果なので人間にそのままあてはまるわけではないが、今回の結果からQ氏は当然、〈吸血鬼ドラキュラが生き血を吸う〉話を思い浮かべる(もちろん記事のどこにもそのような言及はなされていない)。➣そして記事には、今回確認された認知力改善効果に関わっている候補の一つと目された物質が「GPLD1」という酵素であったことが記されている。つまりは〈若返り酵素〉ということか。➣ところで、実験でマウスに課された運動とは何だろうか? 記事に付されたイラストからは、回し車(ランニング・ホイール)運動をマウスにさせたことが推測される。さらに論文の文章を探ると、「6週間にわたって回し車のある環境においた(...mice was given continuous access to a running wheel for 6 weeks, ...)」という記述が見つかる(そのような環境におかれても、運動したがらないマウスはいないものなのだろうか?)。
[Q1]GPLD1は分子レベルで、どのような作用を触媒しているのか?
[Q2]認知機能の向上へとつながるメカニズムはどのようなものか?
[Q3]運動以外に脳の健康を保つ方法にはどんなものが報告されているのか?
といった疑問をアタマの片隅において、記事&論文をいよいよ本格的に読み込んでいきたい。■

論文タイトル:血液因子は運動の神経新生および認知に及ぼす有益な効果を高齢脳へ伝達する(Blood factors transfer beneficial effects of exercise on neurogenesis and cognition to the aged brain

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?