アナログシンセの温度感 - Dior | Fall Winter 2019/2020

「曲の方向性:テクノ、エレクトロニカ、など」

ディレイや、モジュレーションを、やりすぎず絶妙に、しかし割と多様に使いながら始まる序章、安定しきらないコードが続くことで逆にこれから始まる、という期待感を演出している。
ショーでは本当に多用されるシンプルなシンセベースやシンセのシーケンスは、やはり空気感の表情を作るけど、決して懐古趣味には陥らない巧みさ。
大半の音色がアナログシンセ感であることで、エレクトリックではあるけれど温度感が冷たくならずになるのは重要。
メロディーライン的なものも、モジュレーションとともにあるけれど決して主張しすぎず。

プロフェット5的なシーケンスでブレイクしたかと思ったらベースとアナログシンセドラムの世界へ。
こちらは一気にミニマルな空気感になるけれと、ノイズ的な音の散りばめも上手く、またやはりアナログシンセであってこその暖かさはキープ。
終盤はライトなドラムンベース感に発展。ここで「このシンセベースの音色」だったことが活きてくる。
全体が少しダークな印象になりかけそうになると、ベルっぽいノイズパーカッションや明るくいい意味でざらついたパッドが入ってきて、そうなるのを防いでいる構成も素敵。
終始安心するコードには落ち着かないものの、決して不安には持っていかないで聞くことができるニュアンスはとてもバランスが良い。
作業用にもエンドレスに聴いていられる

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