AIがつくる楽曲はヒットソングになるかーー「音楽の未来」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.1/21 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、AIを用いた音楽技術と社会の変化について考えたいと思います。

◾より手軽になる楽曲制作

テクノロジーやビジネスに関するニュースサイト「CNET」のエディターであるTy Pendlebury(タイ・ペンデルバリー)氏は、近い将来AIがヒットソングをつくる可能性について解説しています。

また、同記事は日本語に訳された記事「音楽業界にもAIの波--ヒット曲とスターを生み出せるか」が、CNET Japanに掲載されています。以下、記事の内容について紹介します。

まず、AI以前に、昨今のコンピュータ技術の向上により、自宅で楽曲の録音やサンプリングが簡単にできるようになりました。スタジオレコーディングに比べてずっと安価であるため(またコロナ禍ということもあり)、ミュージシャンにとってよりよい環境ができつつあります。

AI技術においても、昨今は歌詞自動作成アプリやコード作成アプリなどが開発されており、最終的にミュージシャンが手を入れるにせよ、ベースとなる部分はAIにある程度任せることが可能になっています。実際、AIツールを利用してアルバムを制作するアーティストも登場しています。

このように考えれば、YouTubeにおける動画革命のように、AIツールが音楽革命を生じさせる可能性も現実的に見えてきたと、ペンデルバリー氏は述べています。

◾AIがつくるヒット曲

以前、ヒットソングを予想するAIツールについて紹介しましたが、それとは逆に、楽曲を自らつくるAIツールは登場しています。例えば、テクノロジーを利用して様々な仕事を手掛けるTaryn Southern(タリン・サザン)氏は、Amperという自動作曲ツールを用いて、歌詞やボーカルメロディ、歌声以外はすべてAIで楽曲を制作しています。

他にも、以前も紹介した「Jukebox」という音楽作成システムでは、歌手とジャンルを選択し、歌詞を入力するだけで、歌声まで自動で生成するものです。

ペンデルバリー氏の記事では他にも、いわゆる耳に残る「フックソング」がAIで作成可能であること等も語られています(著作権に関しては、AIとクリエイターのインプットの割合で考えられ、すべてAIの場合はプログラマーになる可能性も指摘されています)。こうした点から、近い将来、AIが作曲した楽曲がヒットチャートに現れるとも考えられます。

◾AIツールと音楽の未来

AIによって楽曲制作が便利になる一方、もちろんこうした動きには、「楽曲が均質化してつまらない」といった声もあるでしょう。そのような指摘の一方、一定のレベルはAIが可能にすると考えれば、面倒な作業をAIに、その他のクリエイティブな作業は人間が、といった作業分担が可能になるとも言えるのではないでしょうか。

またペンデルバリー氏の記事では、1950年代には音楽が細かく切り刻まれて編集され、80年代にはサンプリングが流行った当時も、「これは音楽ではない」という声があったことを指摘しています。もちろん、こうした声を今ではほとんど聞くことはありません。すなわち、技術の変化に伴い、音楽の受容のあり方も変化するのです。

いずれにせよ、音楽技術の変化は、上述のYouTubeにおける、動画作成の負担軽減がクリエイティヴィティの毀損にはならない、という点と共通するように思われます。こうした音技術と社会の変化は、常に生じているのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?