音はメンタルヘルス向上に寄与するーー「音の力」の紹介

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.7/15 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、主にメンタルヘルスの向上に寄与する音について紹介します。

◾音楽はメンタルヘルス向上に寄与する

音楽にリラックス効果があることはよく知られており、近年でも、音楽が人間にもたらす効果についての研究は続けられています。

ドイツのハノーファー音楽演劇メディア大学の研究チームが2022年3月に発表した論文によれば、音楽はメンタルヘルスの向上に関して、運動や瞑想と同様の効果があり、QOL(Quality of Life:生活の質、人生の質)の向上に寄与することがわかりました。

研究はまず、779名の被験者を含んだ26の研究を集め、それらを全体を再度分析する、メタアナリシスという方法が取られました。これらの研究には、QOLを測定するための共通の質問が用いられていることから、内容の比較が可能になります。内容も単純な音楽鑑賞だけでなく、病気と音楽の関係に焦点を当てる等、複数な研究があり、これらを横断的に分析しました。

結果、音楽の介入は精神的なQOLの向上に寄与することがわかりました。また、病気の治療などにも、音楽を用いた方がメンタルヘルスの向上に寄与することもわかりました。ただし、研究者によれば、音楽の内容まではわからず、基本的には自分の好きな音楽が良い、とのことでした。

◾音楽聴取の最適な時間は

では、実際にどのような音楽をどのくらい聞くことが推奨されるのでしょうか?イギリスの「サウンドセラピー学会」は、7581名を対象に音楽を聞く量や時間等を調査する「Music as Medicine(薬としての音楽)」というプロジェクトを行いました。

調査によれば、個人差はあるものの、おおよそリラックスしたい時には13分音楽を聞くことが望ましいとのことでした。また、楽曲は歌詞のない、ゆったりとしたシンプルなものが良いとのこと。ネガティブな思考が緩和したり、平穏な気分がもたらされます。

また、幸せな気分になりたいなら、ノリのよいアップテンポで、前向きな歌詞の楽曲を9分聴取することが推奨されています。気力や笑顔が増えるとのことでした。これらを参考に、音楽を楽しんでみるのもよいでしょう。

これまで紹介してきた研究や調査結果は重要ですが、ただし注意点もあります。それは、音楽を聞くだけですべてが解決するわけではないという、ある意味で当たり前の指摘です。しかし、音楽で病気が治る等と、安易に発想してしまうことには、危うさを秘めているということも忘れてはなりません。

◾世界中の環境音が聴こえるサービス

最後に、世界中の自然公園で録音された環境音を、無料&登録不要でブラウザから聴取できる「earth.fm]というサービスを紹介します。エストニアを拠点とする、環境問題に取り組む非営利団体が運営するこのサービスは、自然のサウンドスケープ(音風景)を提供しています。

ウェブサイトには世界地図のマップから各地の音を選び聴取することができますが、日本でも2箇所の音を聞くことができます。

昨今は不安になることも多い日々が続きます。様々な意味で疲れた、と感じる人には、ぜひ音の力を利用することをおすすめします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?