複数の虫の音はより好まれるーー「グリーンインフラとしての虫の音」を紹介

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.9/09 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、NASAが公開した宇宙に関する音について紹介します。

◾グリーンインフラとしての虫の音

秋が近づくと、虫の音が聞こえてきます。当ラボは以前、虫の音に関する研究を紹介しました。それによれば、スズムシやエンマコオロギ、カンタンといった虫の音は、美しい、高音、清涼といった印象を持ち、人にリラックス効果をもたらします。実際、睡眠時に虫の音を含んだ環境音を流す人もいるでしょう。

ところで、虫の音がリラックス効果をもたらすのであれば、それは私たちの生活環境の向上に寄与するということでもあります。実際、自然環境が有する機能を社会に適応させる取り組みとして「グリーンインフラ」という言葉が注目されています。つまり、都市開発において、虫の音を利用することが期待されているのです。

◾複数の虫の音を組み合わせる

そこで、日本工営株式会社と東邦大学、千葉工業大学、国立環境研究所は、産学官連携で共同研究を行い、2022年6月、虫の鳴き声とリラックス効果に関する研究を、都市緑化に関する国際学術誌に掲載しました。

研究は、千葉県白井市の草原で、バッタの仲間4種類(エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシ)の鳴き声を組み合わせた全15通りのサンプルを、65名の被験者にランダムで聞かせました。そして、「明るいー暗い」「「静かなーにぎやかな」といった質問と、好きか嫌いか、といった質問を行いました。

得られた回答を分析したところ、そこでわかったのは、聞かせる虫の音が1種類であれば、好みに有意な差は生じませんでしたが、複数の虫の音を組み合わせるほど、好みの得点が増えたことがわかりました。

また、特に種類が増えることで得点が向上する因子は4つ。
「穏やかさ(Calm)」
「華やかさ(Gorgeous)」
「音楽性(Musicality)」
「深み(Deep)」
となりました。
中でも「華やかさ」と「音楽性」は特に組合わせが増えることで得点が増えました。

研究者によれば、虫ごとに周波数が異なるため、それらの組み合わせが心地よい調和をもたらす音として人間に聞こえると考えられます。組み合わせによってリラックス効果が増加するかどうかはわかりませんが、少なくとも心理的にはより良いものと感じられるでしょう。もちろん、種類が多すぎたり、組み合わせによってはうるさいと感じられることも考えられるため、この点には注意も必要でしょう。

いずれにせよ、虫の音はグリーンインフラ整備の一環としても機能する可能性があります。多すぎる虫には対処しなければなりませんが、近所の虫の音に注目してはいかがでしょうか。

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