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個別に戦う者たちの物語/物理書籍Wスレイヤーコン

 『ニンジャスレイヤー』と言う作品は、いわゆる群像劇としての一面を持っている。数多くの登場人物が存在し、それぞれに物語がある。過去があり、意思があり、感情があり、人生がある。作中においては、「エゴ」と言う単語がそれを示す重要な一要素として扱われている。

 2017年6月30日に発売された書籍最新刊、『ニンジャスレイヤー ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)』に掲載されているエピソード群は、まさにその群像劇的側面の持つ魅力を余すところなく発揮している。

 一言でいえば、魅力的なキャラクターがたくさん出てきて、それぞれのエゴを貫き通すべく死力を尽くして戦う物語なのだ。間違いなく面白い。


 『ニンジャスレイヤー ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)』におけるエピソード群を貫く要素が、その全てが10月10日という一日の間に起きた出来事であるということだ。たった一日、場所は違えど同じ空の下で進行していくそれらの物語を彩る登場人物たちは、それぞれの理由、それぞれの意志で、それぞれの戦いに身を投じていく。

 例えば、DJタニグチと彼が主催するKMCレディオのクルーたち。彼らは人々を抑圧する巨大な権力に怒り、人々に目を覚ませと、自分の頭で考えろと違法放送で呼びかけ続ける。暴力を使わず、言葉と音楽で立ち向かうのが彼らの戦いだ。

 例えば、DJタニグチの息子ニスイ。恐るべき半神的存在、ニンジャとなってしまった彼は、そのニンジャの力を振るって父であるタニグチを暴力で叩き潰そうとする体制の尖兵たちと死闘を繰り広げる。父を守り抜き、共にレディオを放送し続けることが彼の戦いだ。

 例えば、ネオサイタマ市警49課。同じ市警からも市民からも疎まれ、不良警官の巣窟と揶揄されながら、市警本体が権力に迎合して骨抜きにされていく中でその孤高を貫いている。自分たちの頭を押さえつけようとする邪悪な権力に抗い、あくまで警察として自分たちの正義を遂行することが彼らの戦いだ。

 例えば、情報屋のゴウト・ニシムラとハッカーのミスター・ハーフプライス。権力の尖兵たる湾岸警備隊の機密データを盗み出し、それを持って大金を手にしようと目論む二人。その過程で世界を揺り動かす情報を手にしていく彼らは、原子力空母「キョウリョク・カンケイ」の艦内を奔走する。意図せずして知ってしまった真実をどう使うか、そしてどうやって金を掴み取るかが彼らの戦いだ。

 例えば、私立探偵のタガギ・ガンドー。奇妙な依頼を受けたことをきっかけに謎めいた陰謀に巻き込まれていく彼は、同じ陰謀に巻き込まれた少女ニンジャ、アズールと共に荒野を駆ける。それぞれが抱える因縁に決着をつけることが彼と彼女の戦いだ。

 例えば、物語の主人公たる復讐の戦士ニンジャスレイヤーとその相棒たる凄腕ハッカー、ナンシー・リー。二人は、権力の裏に潜む巨大ニンジャ組織の最高幹部たちをわずか一日のうちに次々と殺害していく。組織を構成する邪悪なるニンジャたちを殺し、ひいては組織の恐るべき企みを阻止するのが彼と彼女の戦いだ。

 例えば、タカギ・ガンドーが巻き込まれた陰謀の大元たる組織、カブキ・フォース。キョート共和国の元老院の指揮の下、超人たるニンジャを手駒として操る計画を推し進める。ニンジャの持つ強大な力を自分たちの意のままにせんとすることが彼らの戦いだ。

 例えば、秘密結社アマクダリ・セクト。巨大な権力に自分たちのシステムを張り巡らし、人々を支配する邪悪なる巨大ニンジャ組織。その支配をより盤石の物とし、冷たい秩序に覆われた暗黒管理社会を実現することが彼らの戦いだ。


 それぞれは何の関わりもなく、それぞれのエゴに基づいて彼らは行動する。ゆえにぶつかり合い、争い、それぞれのやり方で自分のエゴを貫き通そうとする。個別に戦おうとする。

 そんな個別の戦いが、10月10日という一日に濃縮され、大きな一つのうねりとなっていく圧巻!!

 一人ひとりの行動が異なる結果をもたらし、それらが相互に影響し合ってあらたな結果に結実していく展開!!

 ああ、この美しきよ!! もう一度言う。ニンジャスレイヤーという小説は、魅力的なキャラクターがたくさん出てきて、それぞれのエゴを貫き通すべく死力を尽くして戦う物語なのだ。

 『ニンジャスレイヤー ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ(上)』は、そんなこの物語の面白さの一つの集大成と言える書籍である。興味を持ったならぜひ手に取ってほしい。だって、絶対に面白い!!

 

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