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クルッタウンは本日も平常運転で快晴なり


 「お頭! 空から女の子が!」

 「撃ち落とせ!」

 一斉に放たれた銃弾が、落ちて来た少女達を貫いた。砕けた機械部品が残骸と共に降り注ぐ。

 「クイーン・リリーも案外に心が狭いな! 2000人以上もいる『百合の園』の連中を、ほんの1500人ぽっち爆殺しただけで、しつこいの何の! まだ500人もいるじゃないか!」

 クイーンが送り込んだアンドロイド女中団をみんな殺して、ギャング団『ダストシューターズ』頭目のスカベンジャーはゲラゲラ笑った。この街でゴミ扱いされてきた彼らも、ここ最近の暴れっぷりで存在感を増してきたのか、狙われることが多くなった。

 クルッタウンは本日も平常運転で快晴なり。腐敗政府ガバ・ガバメントが実施するGOTO殺人キャンペーンにより、街では強盗殺人の件数がいつもより多い程度の違い。

 住宅街では、子供部屋要塞化おじさん達のグループが改造邸宅から砲撃を繰り返し、即席強盗団諸共に粉砕された道路が自動修復するたびに街並みが変わる。

 街頭テレビには、『倫理なき医師団』が国境を越えたとのニュースが流れる。

 「医師団が来たってことは、『狂える重病者の行列』がこの国に入りこんだんですかね?」「『パンデミック・マン』が来たとすれば、もっと大事になってるさ」

 スカベンジャーはどんな時でもこの調子、額に銃口突き付けられても能天気。そこが手下どもを惹き付ける。でも今日はきっと誰もが能天気。何かが起きる気配なし。今日も明日も変わりなく。生きてる輩も死んでる輩も、そうと信じて疑ってなかった。

 街全体に、大きな影が落ちた。

 誰もが、暴れるのを止めて空を見上げた。街があっという間に真っ暗になった。太陽が見えない。雲が。厚い雲が。

 「曇ったあああああ!!?」

 スカベンジャーが絶叫した。街中がそれに続いた。クルッタウンが曇るだなんて。こんなことは前代未聞だ。異常事態だ。全勢力が争いを一時停止した。異常事態だ。天気が崩れた。これをどうにかしてから殺し合おう。

【続く】

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