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8月8日は「安全なスポーツの日(#SaferSportDay)」。グローバルキャンペーンが始まっています!!

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いつもコラムをご覧いただき、ありがとうございます。S.C.P. Japan共同代表の野口です。以前、日本ユニセフ協会さんの「子どもの権利とスポーツの原則」についてコラムを書きました。今回は、チャイルドセーフガード(スポーツにおける子どものための国際保護措置)のグローバルキャンペーンについて触れながら、子どもにとって安全なスポーツ界にするために、スポーツクラブやチームは何をすべきなのか。簡単にまとめたいと思います。

チャイルドセーフガードのグローバルキャンペーン

突然ですが、本日8月8日は「安全なスポーツの日(#SaferSportDay)」であることはご存知でしょうか?International Safeguards for Children in Sport (スポーツにおける子どものための国際保護措置)が中心となり、グローバルキャンペーンが本日からスタートしています。様々な地域で開催されているウェビナーが聞けるので、ご興味のある方はチェックしてみてください。

<ヨーロッパ>

<アフリカ>

<アジア>

国連児童の人身売買、児童買春、児童ポルノに関する特別報告者のMama Fatima Singhateh氏もスポーツ界に向けてメッセージを送っています。

このキャンペーンは、もともとはUNICEF UKが発起団体としてスタートしたそうですが、今では、UNICEF UKのプログラムではなく、スポーツにおけるチャイルドセーフガード国際ワーキンググループを形成して、ワーキンググループがこのキャンペーンを展開しています。

国際スポーツ界のチャイルドセーフガードに対する意識が近年急速に高まっている背景として、米体操連盟の帯同ドクターだった、ラリー・ナサ―ルの長年に渡る性的暴行が、2016年に発覚したことが大きいです。少なくとも250人の選手たちが被害を受けました。この事件のドキュメンタリーがNetflixで公開されています。この事件を受け、翌年、国際オリンピック委員会(IOC)は、アスリートセーフガーディングツールキットを作成しています。

子どもを暴力から守るために必要な8つの措置

詳細は、スポーツイングランドが発表した「スポーツにおける子供のための国際保護措置」の日本語版で確認できますが、保護措置として、以下の8つの措置が必要であると記載されています。

措置1:ポリシーの策定
措置2:対応手順の確立
措置3:アドバイスとサポートの提供
措置4:子どもに対するリスクの最小化
措置5:行動に対するガイドラインの提示
措置6:専門スタッフの採用、研修とコミュニケーションの実施
措置7:パートナーとの協働
措置8:モニタリングと評価

スポーツにおいて、子どもが暴力被害を受けるリスクがあることをスポーツ団体が受け入れてプロアクティブに子どもを守るための規則を各スポーツ団体が作成する必要があります。そして、あらゆる懸念に対しての対応手順をあらかじめ検討しておくことが推奨されています。

また、子どもが誰に助けを求めることができるのかを把握できるようにアドバイスやサポートが必要です。多くの場合、子どもたちはどこまでが指導でどこからが暴力なのか曖昧な線引きの中でトレーニングをしています。指導者自身も気づかぬうちに暴力行為に至っていることがあるため、指導を受ける側も、指導をする側も、「指導」と「暴力」の境界線を共通認識として持つことが必要です。また、子どもが「嫌だ」と思った時に支援を求められる体制を整える必要があります。

何が子どもにとってリスクになるのか?を事前に評価することも必要です。練習環境や移動手段、宿泊施設などのハード面のリスクや、人種、宗教、性別、性的指向、障がいの有無など、いじめや差別に発展する可能性がある、ソフト面のリスクを事前に評価します。そして、指導者、スタッフの行動の指針となる、「行動規範」を明確にしておく必要があるでしょう。セーフガードの担当者を配置して、定期的に子どもたちや子どもに接する全ての大人に情報提供をしていくことが重要です。セーフガードの担当者は、直接の指導者ではない方が望ましいです。指導者と子どもの間には、少なからずパワー格差が生まれるためです。

さらに、行政機関やスポーツ統括団体が持っているリソースを活用することもできるといいでしょう。日本では、日本スポーツ協会が「スポーツにおける暴力行為相談等窓口」を設置しています。法的な対応など、専門的な案件が相談できます。そして、これらを整えて終わりではなく、常にモニタリングして、セーフガードの規則が機能しているのか評価し続けていくことが必要です。

子どもだけではなく、スポーツ団体も守る

もちろん、子どもを守るために、チャイルドセーフガードに取り組むことは必要です。しかし、セーフガードの取組は、子どもだけではなく、スポーツ団体も守ることができます。

昨今、日本のスポーツ界も「ハラスメント」に対して、以前よりも、敏感になってきています。15年前では当たり前だったことが、現在では到底社会的に容認されない状況です。しかしながら、必ずしも現場の指導者たちがその、変化を敏感に感じ取れているのか?というのは懸念するところです。2013年に熊安が行った、セクシュアルハラスメントの調査によると、指導者は適切であると考えている行為が、選手にとっては不適切な行為であると回答している傾向が顕著に見られました。また、先月に発表されたヒューマンライツウォッチの日本のスポーツ現場に見られる暴力被害の報告書も大変センセーショナルなものでした。

日本政府はスポーツ界に見られる暴力被害に対して、本腰を入れたアクションをまだしていません。ですが、「だからやらなくていい。」という結論には至りません。子どもたちは常にリスク下にいる。という事実を、まずは大人が認めて、「自分は大丈夫」、「自分のチームは大丈夫」と過信するのではなく、プロアクティブに行動する必要があるのだと思います。

<参考文献>
熊安貴美江 (2013) 「スポーツにおける暴力/ハラスメント:みえにくいハラスメントの現状と課題」『大阪府立大学女性学研究センター 第17期女性学講演会 女性学・ジェンダー研究の現在』pp.127-153

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