2020年5月11日 外来ナメクジセミナー

本日は外来種対策と市民科学の可能性についてとても面白く分かりやすく解説された、こちらのセミナーをオンラインでのぞきました。個人的には生物多様性保全における協働のあり方という視点から関心があったのですが、とても興味深かったです。以下、備忘までに。 続 #市民科学

①演題:巨大外来ナメクジvs市井の超人たち
講演者は京都大学の森井悠太さん。研究対象は主にカタツムリ。

概要メモ(あくまで #内容は個人の受け止めです 事実誤認などは私の責任です)

カタツムリは進化が簡単に起こって、姿形が簡単に変わるところが題材として面白い。 続 #市民科学

②今日はナメクジと市民科学の話。日々増え続ける外来種の全てに対して、行政や研究者だけで対応するのは現実的には難しい。携帯(スマホ)の普及などで科学へのアクセスが向上。畑いじりで「見たことがない生き物」を見つけて写真を博物館に持っていくだけで重要な発見のことがある。 続 #市民科学

③主役はマダラコウラナメクジ。15センチくらい。グロい。主に北欧原産。今は北米、豪州、南アなどに侵入。日本には2006年に茨城県に侵入。森井さんは14年に札幌の丸山公園で初対面。帰っていろいろ調べたら、その1年以上も前にマダラコウラナメクジの侵入をブログに書いている人がいた。 続 #市民科学

④ブログ主にコンタクトを取って一緒に論文も出して、市民と一緒に非営利団体を立ち上げた。メディアも活用した。論文の別刷りなどを北海道新聞に送りつけて記事を書いてもらった。メアドも出してもらって情報提供を募った。テレビにも出た。その結果、 続 #市民科学

⑤メールを通じて38件の報告が寄せられ、分布の拡大を分析。情報が来たタイミングはメディアに出た後が多かった。分析すると、従来の2カ所に加えて、新たに14カ所の生息が明らかに。札幌から100kmも離れたところにも、急速に拡大していた。 続 #市民科学

⑥さらに驚きだったのは、外来ナメクジを在来の陸産ヒル「カワカツクガビル」が捕食している画像が送られてきた。元々はミミズ専食だとされていたのが急速に新しい餌資源に適応した可能性がある。市民科学の高いポテンシャルも示された。この結果も論文にした。 続 #市民科学

⑦これもメディアに出した。もちろんさらなるリアクションを期待してのこと(ちなみに下が森井さんたちの活動のページのようです)。https://yutamorii.wordpress.com/science-to-the-people/

ここまでが前半。 続 #市民科学

⑧今日の主人公は、渡辺早苗さん。札幌在住の自称「ただの市民」。他称は超人。ものすごく腰の低い人。「私の取ったデータは使えないかもしれないけど」、とデータを提供してくれた。丸山に2年間登ってナメクジの数を数えているんだけど、いるか。と。 続 #市民科学

⑨そのデータは2015~2016の2年間、毎朝5~6時に丸山に登ってマダラコウラナメクジの数を記録していた。もちろんデータをもらった。調べたら、のべ583個体を観察。2年で716日登っていた(2年間で14日しか登らなかった日がない)。札幌は半年は山が雪に埋まる。その中で観察していた。 続 #市民科学

⑩(ちなみに14日間は円山ではなく、別のもっとすごい山に登っていた)

円山から2㌔程度離れたところに気象台があり、データが公開。これを使えば、ナメクジの活動と気象条件の関係が分かるかも!と思い、出現を左右する気象条件や、ナメクジの出現予報を目指した。 続 #市民科学

⑪統計学的に相当チャレンジングだったが、大久保祐作さんという「変な人」(研究者にとっての賛辞)が何とかしてくれた。その素晴らしい手法をここで話すには重たいが(フェルマーっぽい)、結果は、当日の気温が高く、湿度が高く、日照が多くて、風速が遅くて雨が少ない日に出る。 続 #市民科学

⑫ちなみに面白かったのは、降雨量。雨が降ると、カタツムリとかが出てくるイメージあるが、当日は雨が少ない方が出て来ていた。むしろ前日の雨が重要。海外の研究で50年以上前に言われた「大雨が降るとカタツムリが出ないようだ」というような真偽不明の仮説が、ここで初めて立証。 続 #市民科学

⑬これも論文にした。2018年。市民が出した結果は市民に返す。渡辺さんの正体についても「誰なんだ?」というようなブログが書かれたりして面白かった。日本自然保護大賞にも選ばれた。 続 #市民科学

⑭元はたった一つのブログから始まった。それが新知見を得て論文になり、メディアに出て、さらにデータがもらえた。論文を書く、メディアに出る、データをもらうというインタラクションを作れた。市民/行政/学者の建設的な協力関係は世界を変える。外来種に関する基礎科学にも重要。 続 #市民科学

⑮ちなみに、渡辺さんのデータは、マダラコウラナメクジの円山公園だけでのデータ。他の場所、他の種ではどうか、僕も調べてみた。NZで2018年9月から50日やってみたが、発見は0個体でこの研究はお蔵入り… 続 #市民科学

⑯質疑応答も活発で、血に飢えた参加者たち(勝手な想像)から寄せられる質問を、森井さんが「いい質問だ!」と喜んで逆に猛獣使いのようにセミナーを小気味よく回していたことや、「メタルさん」と呼ばれたコメンテーターさんがGAMMA RAYのTシャツを着ていたことなども印象的でした。 続 #市民科学

⑰なお、ここで連ツイした内容はこちらに森井さん自身の署名記事で面白くまとめてあります。ご一読をおすすめします。あ、あと渡辺さんは1日に2回、円山に登られることもあるそうです。 了 #市民科学
https://academist-cf.com/journal/?p=7702


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