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オランダ企業50社が政府に対して人権デューディリジェンス法の制定を求める

[最新ニュース] #法制化 #人権DD #欧州の動き

2020年6月25日、オランダ企業50社が対外貿易開発省に対し、サプライチェーンの透明性と平等を確保するための、デューディリジェンスの法的枠組を支持する書簡を提出しました。

オランダは、昨年5月14日、児童労働に関するデューディリジェンスを義務化する法案が成立しました。しかし、この書簡では、ビジネスと人権に関する指導原則(指導原則)とOECD多国籍企業行動指針に従ったより包括的な法規制を求めています。さらに、その法規制は、厳格かつ適切に実施されることが必要と述べます。

1 深刻な問題には、真剣なアプローチが必要:我々が承認しているOECD多国籍企業行動指針は、企業に対し、人権侵害と環境に対するリスクに対するデューディリジェンスを実施することを要求している。
2 ビジネスリーダーに報いる:生産チェーンを透明にし、人権と環境に関する侵害を撲滅すること。法律は、正しいインセンティブを提供し、努力に報酬を与え、リードする企業がプラスとマイナスの影響を生み出すためのレベルプレイングフィールド(平等な競争条件)に貢献する。法律は、企業に対して、OECD多国籍企業行動指針に従ったデューディリジェンスを実施し、人権侵害の予防と解決に投資することを求めるものでなくてはならない。先進的な企業はこれが実行可能であることをすでに示している。
3 オランダを国際的な指導グループとして留める:他国はすでに同様の法律を施行したり、検討している。国内法によって、これらの国々は、「フリーライダー」に対抗し、人権侵害への取組みに対するレベルプレイングフィールドを作り出している。国内法制は、EUの法規制に向けた重要なステップである。我々は、オランダ企業に対して、欧州委員会による2021年の義務的デューディリジェンス法への提案に対する積極的な貢献を求める。
(筆者要約)

ヨーロッパでは、イギリスによる現代奴隷法に続き、フランスの人権デューディリジェンス法の制定、そのほか、ドイツやスイス、ベルギーでの法制度の検討、さらにはEUでも義務的な人権・環境デューディリジェンス法の2021年の制定に向けた議論が具体化するなど、法制化が急速に進んでいます。

児童労働に関するデューディリジェンス法の制定だけでは、こういったヨーロッパ域内の法制度に対するオランダ企業の人権・環境への取り組みは十分に担保されず、そのことに大きな危機感を覚えているのが企業自身です。書簡の中で「レベルプレイングフィールド」という用語が強調されているのは、オランダ企業の市場での競争力を維持するために、法規制によって国際的水準を標準化することの重要性を認識しているからに他なりません。

各国がこぞって法制化の議論を進めているのは、もちろん人権侵害への取り組みを優先課題としているからですが、ルールメーキングを主導することで結果的に市場での優位性を獲得するという経済的合理性に裏付けられていることも否定できません。

現在、日本では人権デューディリジェンスに関する包括的な法制度はありません。しかし、このようなヨーロッパの動きが日本企業に影響を及ぼすことは必至であり、早急に経営課題としても人権デューディリジェンスに取り組むことが必要です。

Social Connection for Human Rights/佐藤暁子

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【この記事の内容と関わる国際基準】
人権デューディリジェンス
指導原則が企業に求める、企業活動のサプライチェーン・バリューチェーン全体の人権リスクを特定し、予防・軽減し、救済する仕組み

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