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ポッドキャストは閾値を超えるか

おはKOP!あんどーです。
このnoteは『ポッドキャスト配信について語る Advent Calendar 2021』の24日の担当記事です。

キンペニ君の存在感がなんかうれしい。アドベントカレンダーって読むのが好きでしたが今年は参加できて嬉しいです。

0 はじめに

『ポッドキャスト配信について語る』ということなので、僕は「ポッドキャストは閾値を超えるか」について書こうと思います。なんだか毎年のように「ポッドキャスト元年」だとか「いま音声メディアがアツい!!」などと騒がれるようになってきましたが、実際いつ飛び立つのか、第二のYouTubeのような巨大なメディアになるのかを考察していこうと思います。そして、ポッドキャストはこうなるべきだ!みたいな構想を書きます。


0-1言葉の定義

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まず言葉の定義をします。飛び立つイメージで閾値(いきち)を使いましたが要は、収益化して金のなる産業となるか、多くの人にとって当たり前のメディアになるかです。できるだけ個別のケースではなく全体で考えようと思います。再現性のあるものを考えます。

ポッドキャストの定義などは難しいですが、ここでは、独立系サービス(stand.fm、Radiotalk)やラジオ、オーディオブックなどを乱暴ですが除きます。自分でコントロール可能な領域が狭いのと設計思想がやや異なるように感じるからです。

音声メディアと表現するときは、すべての音声コンテンツを含みます。ただ配信の構造上、ラジオを除外することもあります。ラジオには公共性がどうしても必要だからです。radikoのタイムフリーやラジオ局のポッドキャストは同じ消費のされ方をしますが、制作の段階で想定していることに違いがあるのでここでは必要なときに区別します。

他のメディアにもそれぞれの特性、強みがありますが、ここでは主にポッドキャストにフォーカスしようと思います。

そして後に書きますが、音声メディアは言語依存のメディアなので日本と世界(英語)を意識的に区別します。

 1-1世界で1番稼いでるポッドキャスト


最初に夢のある話をしましょう。下の記事を読むと海外ではもう閾値を超えたといってもいいレベルだと思います。これの勢いを受けて日本でも、ポッドキャストがアツいと言われるようになったのでしょう。詳しい内容をみてみます。

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Joe Rogan's podcastsおおよそエピソードごとに7.5万ドルを稼ぎ、週に3エピソードを配信しているので、月間90万ドル、年間1080万ドルを稼ぐポッドキャストのようです。

額がすごいことになってますね。どの業界もピンキリですが、先頭を走っている人がしょぼいとテンション下がるのでここは喜んでおきましょう。

実際、僕はヨーロッパの大学にいましたが、授業中にこのポッドキャストを聴いておくといいよって教授が話したりするくらいには一般的なものになってました。またビジネス系、スタートアップ系と相性が良かったようで、海外では人気がありました。日本でも英語勉強を入り口にポッドキャストを聴き始めた人も多いと思います。


 1-2ポッドキャストの収益モデル

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次に、どのようにあのとんでもない額を稼いでいるのかみてみましょう。上の記事では、主な収益手段として3つ挙げられています。

1. Podcast sponsorships 2. Affiliate marketing 3. Sell your products and services

1のスポンサー契約は最も一般的でイメージしやすいと思います。CMを番組開始、途中、終了に流すものや(それぞれプレロール広告、ミッドロール広告、ポストロール広告と名前がついてます。それについての効果測定なども行われていて面白いんですがそれはまた別の機会に)

2は、所謂アフィリエイトです。なんだか日本では悪いイメージがありますが単純に商品紹介でリスナーに買ってもらう収益化です。ポッドキャストではプロモコードを入力してもらったり、リンクからアクセスしてもらい、売上に応じたコミッションを受け取るという仕組みです。win-winな関係を築けるような、本当にいい商品を紹介できればいいのですが、稼ぐためにやたらめったら商品を紹介するとポッドキャストの強みを失ってしまうと思います。それならライブコマースでもやったほうがいいです。

3はそのままですね、商品を直接売ったり自分のサービスに誘導することです。例えば、ナレッジ系のポッドキャストならより専門性の高い内容を本にしたり、コンサルティングをしたりしているケースなどがあります。

またコンテンツの一部を有料化したりすることも可能になったのでポッドキャスト自体をサービスとして売るというかたちもあります。昔から過去回の詰め合わせを販売したりすることもポッドキャストでは行われていました。


日本でも小規模に行われていますが、同じように導入しても閾値を超えるようなブレイクスルーは起こらないと思います。お小遣い稼ぎにはなるかもしれませんし、局所的に独自系のサービスで投げ銭で稼げるみたいなのは今も存在しますが持続性や一般性は低いでしょう。

そして仮に、anchorに再生回数連動型の広告がついたとしても焼け石に水だと考えています。理由は後半の音声メディアの特徴で書きます。


1-3ポッドキャスト全体の収益率

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ここからもっと暗い話になります。ちょっと古いデータになりますが2020のデータでは、アメリカで収益化が出来ているポッドキャストは2.8%です。

その内訳も、

1.4% of podcasts (14,000 shows) have ads or sponsors.
1.4% of podcasts (13,800 shows) monetize listeners on services like Patreon.
97.2% of podcasts (972,000 shows) make no money at all.

1.4%が広告収入、1.4%がリスナーの援助によって成り立ってるようです。

もちろん、簡単に始められるようになった環境を考慮に入れると、すぐに辞めたポッドキャスト番組やクオリティの低い番組の数も多いと思います。また、ブログやYoutubeの収益化率がどの程度なのか調べてないのでこれが可能性が低いかどうか客観的に判断出来ませんが、稼げているようなアメリカでも(当たり前ですが)全員が稼げているわけではありません。

1-4資本主義経済の偏り

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インターネットの世界では、ハブとスポークの構造が顕著だと思います。ハブのアルゴリズム次第で人の流れは簡単に変わってしまうでしょう。これについては長くなるので割愛しますが、SEOとかも戦略というよ戦術で小手先テクニカなものだと思います。そうではなく、今っぽいもう少しファンダメンタルで持続可能な成長を考えてみようと思います。そもそもの魅力がないと続かないですしね。

何事もそうですが偏りが出ます。上位1%が総資産の3割以上、10%が7割弱を占めるアメリカならそんなもんだろうと思っちゃいますね。(2021:Q2)( https://www.federalreserve.gov/releases/z1/dataviz/dfa/distribute/table/ )

このような超格差社会が健全だとは思いませんが、少なくとも成長が止まるよりは、一部に富が集積されて社会のレベルが上がることによって、多くの人が恩恵を受けられるというのは、社会にとってもいいことだと思います。やや功利主義的ですが、ここでは経済思想を話すところではないのでここまでにします。

ポッドキャストにも同じことが言えて、格差がポッドキャストを活性化させる。多くのリスナーやナレッジ、技術が集積された番組がポッドキャストを押し上げていく必要があると思います。閾値を超えるにはボトムアップよりもトップダウンのほうがイージーでしょう。落合博満が野球の年俸のベースを上げたように、トップが上げていかないとベースも上がりません。

ただ一度注目を集めたとしてもそれを留めておくことの出来る間口の広さと循環する仕組みを持っていないと続いていかないと思います。

では、今の日本のトップはどの程度なのかみていきましょう。

1-5日本のトップポッドキャスト

現在の日本のトップはコテンラジオで間違いないでしょう。データをみてみると

「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」は、2021年6月30日現在、ユニークリスナー数約14万2000人、総再生回数約1900万回、エピソード数は番外編を含めて240本、Apple Podcast総合ランキング1位となっている。 ( https://jp.techcrunch.com/2021/07/01/coten-raised-84m-jpy/)

僕ら一般ポッドキャスターからしたらものすごい数字ですが、単純計算で1エピソード8万弱再生となります。普段Youtubeをみているひとからすれば少ない数字だと思います。

しかし、音声メディアは基本的には自分で聴きに行かないと聴かないメディアです。言い換えると、自分で聴く番組を選び、(わざわざ)聞きに行く構造上、検索流入や関連から次の番組を聴くというより、気に入った番組を購読して聴き続けるという視聴者が多いと思います。(これは同じ音声メディアでもラジオには当てはまらない特徴です。)つまり、ある意味では、開かれたメディアである一方で、閉じたメディアでもあると思います。なので、Twitterや他のメディアを使ってポッドキャスターは番組の宣伝をしたり、コラボすることで視聴を増やす努力をしています。

一方で、1番稼いでいるポッドキャストのJoe Rogan's podcastsは, 11 million people per episodeつまり、1100万人が聴いているらしい。月間ダウンロード数1億9000万とか比べ物にならない数字です。日本と英語圏の経済差とも似てますね。(https://www.newsweek.com/joe-rogan-dethroned-spotify-chart-new-gaming-podcast-sapnap-karl-jacobs-number-one-1634239)

この数字をみていると、日本での格差についての議論に似ているなと感じます。経済格差を論じる前にそもそものバラツキが小さい。全体がやせ細っていくなかで、そこのバラツキを論じてもあまり意味のないことです。小手先の分配による格差是正よりも(もちろんセーフティネットは必要だと思いますが)、格差拡大で、全体の前進を考えないとやせ細る。みんなで貧乏になっていくと感じます。だかトップを応援して爆進してほしいですね。

単純に規模の差がすごくて、単純な再生回数連動型の広告はあまり意味がないことがわかったと思います。いくら音声メディアの広告効果が高いとしても再生回数連動型は効果が薄いことは想像に難くないでしょう。

では、日本のポッドキャストが閾値を超えるために何をすべきなんでしょうか。それを考える前に音声メディアにはどのような特徴があって、他のメディアとは何が違うのかを確認して、その上で戦略を考えようと思います。

2-0音声メディアの特徴(私見&理想)

ここでは、私見を語らせてもらいます。これまでも私見ですが、一応データに基づいていますが、ここからは想像もあります。最初に他のメディアと戦う武器を3つ紹介します。そして次にネックでもある、言語依存であるゆえの規模的限界。規模を上げる戦略はあるのかについて考えようと思います。


2-1ながらメディア

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1つ目の武器だと考えているポイントは、"ながら聴きメディア"である点です。様々なコンテンツに触れられる現代の私達はとても忙しい。多くのクリエイターが良質なコンテンツ生み出している中で、その限られた可処分時間を奪い合うのはあまりにキツイ。さらに時代を超えたクラシックや良質なアーカイブまである。時間がどうしたって足りない。

それに比べて、テレワークやAirPodsの普及につれて一日中何かしらの音声を聴きながら過ごしている人も増えたと思います。いくら世の中が便利になっても単純作業や移動時間はなくなりませんし、運動やソシャゲの周回や作業ゲーのお供など、ながらの需要はこれからも高まると思います。声には寂しさを埋めてくれるちからもあると思います。

もちろん、映像メディアも"ながら消費"は可能ですが、視覚も割かれるため、音声メディアは聴覚のみなので"ながら範囲"は広いと思います。それに当然ながら映像にも音声は付いているのですが、音声のみのほうがより声を解像度高く深く聴けるように感じます。これが制約と誓約か。。(HUNTER×HUNTER参照)

あなたは何のお供に音声メディアを聴いてますか?よろしければコメントなどで教えて貰えると嬉しいです。ちなみに僕はウォーキングとプロスピのお供で音声メディアを聴いています。僕の聴いてきた音声メディアは最後に紹介します。


2-2声のちから

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2つ目は声の持つ力です。もちろん、映像でも声はありますが、声のみだけだとより近さを感じます。それはなんでなんでしょう。わかりません。情報を絞ることで、より心理的な距離感が近くなるのでしょうか。謎です。

なのでその人の内側の魅力を深く伝えたり、ファンは距離感を近く感じることが可能でスローなコミュニケーションが生まれていると思います。なのでクリエイターとして、ファンを繋ぎ止めるメディアとして、エンゲージメントを高めるものとしても優れているメディアだと思います。

定期的配信することでザイオンス効果(単純接触効果)も見込めるでしょう。ただ個人的には毎日配信には反対です。(後述します。)


2-3広告効果の高さ

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音声メディアの広告効果が高いことが色々なところで報告されています。アメリカのデータですが

64%のポッドキャストヘビーユーザーは、好みの番組を支援するために広告を好意的に受け入れている。(1)

肌感覚ですが、ポッドキャストに触れる人はある程度のリテラシーと良識を持っている人が多いと思います。全てでは無いですし、現段階での話ですが。昔はTwitterも平和だった。。。

ポッドキャストの広告は最も記憶に残る広告であり、86%が広告を覚えていると報告されています。(ソーシャルメディアは80%でWebさいとは79%) (2)

なんか覚えてるショウアップナイターの広告とかがあるので感覚として納得できる。

そしてエンゲージメント率も高く、76%のリスナーが広告のサイトに訪問したり、商品を買ったり、サブスクを始めたり、何らかの行動を起こしている。(2)

これは数字の高さに驚きました。個人時な経験としては、文化系トークラジオ Lifeを聴いていて、VALUE BOOKSがスポンサーになったときに、その内容とサービスの親和性が高く気になったのでアクセスしました。(売れるものがなかったので売りませんでした。すいません。)


一般的なポッドキャストリスナーの中で、常に広告を飛ばすのはたったの12%で、33%は一度も飛ばしたことがない滅多に飛ばさないと回答しており、38%が時々飛ばす程度だと答えている。 (2)

Youtubeはどうなんでしょうね。僕はあと5秒って出てるところを連打してます。

(1)
https://www.forbes.com/sites/forbesagencycouncil/2021/02/16/four-ways-to-measure-the-success-of-podcast-advertising/?sh=29b442f73299

(2)

広告をどのように作るかも重要なファクターですが、うまくリテラシーの高いひとにターゲットされているメディアだと考えられますね。ポッドキャストのリスナー層は、アーリーアダプターやアーリーマジョリティの過程にいると個人的には考えているので、時間経過で変わってくるものだとも思います。

2-4言語依存メディア

アニメなど日本のコンテンツが外国で多く消費され、制作サイドも海外配信を見据えた規模感での制作されるようになりました。鬼滅の刃の二期なんて適当に作ってもそれなりに視聴率稼げそうなのにすごいクオリティで作られていますよね。あれは外国でも人気があってそれが見込めるからあんなにお金がかかった映像になってるんだと思います。

一方で、日本語の音声メディアは字幕をつけることが出来ないので、日本語話者にむけて作られています。なので単純計算で、最大でも日本語話者の数にしか届けられません。なので、日本語話者についてみてみましょう。

日本語話者(第二言語を含む)は約1億2600万います。世界13位です。人口が世界11位なのでこんなもんでしょう。ヨーロッパにいると驚くのは、日本はデカイし日本人は意外と多いということ。高等教育、専門的な学習まで日本語で行うことが出来るのはすごいことです。それなら英語ができないのも仕方ないかなって気もしますが、大学からはもう少し英語で頑張ってもいいんじゃないかって気もしますがそれはまた別の話ですね。

一方で、英語は13億4800万人います。なので単純比率で1割弱しか日本語話者はいません。これをポッドキャストの再生と照らし合わせると、Joe Rogan's podcastsはエピソードあたり0.82%の英語話者が聴いていて、コテンラジオは0.06%の日本語話者が聴いている計算になります。なので人口規模の違いを除いても、日本ではまだポッドキャストがあまり浸透していないことがわかります。(年齢別人口を考えてませんがいまは少ないという認識で進めます)

単純な数字で考えると、話者人口×聴取率=再生数 が式になります。その中で、話者人口も聴取率も遥かに低いので、アメリカのようなポッドキャストドリームには程遠いことがわかります。

なんだか、やる気を削がれるような内容で申し訳無いんですが、現実を正しく認識することから正しい戦略が生まれます。持てるカードで戦うしか無いのです。それでもポッドキャストは金のなる木になると信じているのでもう少しお付き合いください。

2-5規模拡大戦略

まず規模の拡大を考えてみましょう。式をもう一度使うと、

話者人口×聴取率=再生数  

まず話者人口ですが、出生率を上げるか移民を増やすか日本語を教えまくるか、、、現実的じゃないですね。

次に聴取率です。これはどうやったらあがるでしょうか。もっと多くの変数になると思いますが、質的データになると思うのであまり意味ないと思います。ここの戦略は色々あると思いますし、それこそトップが突き抜ける必要があると思います。おすすめはしないですが、世の中を揺るがす犯行予告みたいなのがポッドキャストで配信されたら知名度や聴取率はあがると思いますが、それほどのテコがないと大きな変化はないと考えています。

なので私はもともと話者の規模が小さいんだから規模の戦いをすべきではないと考えています。規模で稼げるようになるのは、再生回数連動型なので大衆化していく傾向にあると思います。これは個人的な意見ですが、大衆化するものはクオリティは下がり、センセーショナル、インスタントなものになり、視聴者の質は下がります。マクドナルドやゴールデンタイムのバラエティも僕は大好きですが、棲み分けは大事です。言いたいことは伝わると信じて続けます。こだわりや攻めた内容ではなく、広く受け入れられるもの、専門性を排除して、公平なもの、フラット化してコモディティ化することが大衆化だと考えています。それは、他のメディア規模で戦うメディアに譲るのがいいと思います。

3-0 日本のポッドキャストが取るべき戦略

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では規模ではなく何で戦うかを考えてみましょう。僕の考える3つの戦略はこれです。

スローでハイコンテキストなメディアを推す!
ポッドキャスト全体でのロングテール戦略
オルタナティブ、プログレッシブで勝つ!

この3つの軸で行きましょう。これで分かる人は乾杯しましょう!Slainte!!

3-1 スローでハイコンテキストなメディアを推す!

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スローでハイコンテキストなメディアについて書こうと思います。SCHOOL OF KOPの中で何度か口に出していると思いますが、詳しく説明してこなかったので説明しようと思います。

まずはハイコンテキストについての説明です。メタ的な説明ですが、説明しなくてもわかるでしょで進んでいくのがハイコンテキストなメディアです。先程の大衆化の話に戻ると、大衆に向けたコンテンツはとにかく説明をする。みんながわかるように話すと書きましたが、その逆で分かる人にわかるように話すのがハイコンテキストです。文脈を共有していることを前提に話が進む。一見さんお断り感といいましょうか、聴いたことのないラジオ番組を聴いてみると名物リスナーのお便りや知らないコーナーの説明が端折られるなど、戸惑うことも多いと思います。ですが、聴いていくとだんだんわかるようになっていき、そこに属しているような感覚になる。これも1つのハイコンテキストです。これが特徴にあげた声のちからの親近感にも関係していると思います。少し古い表現をするならROMる、ならぬLIOる(Listen only memory)する必要があるコンテンツかなとも思います。

少し話は逸れますが、僕は日本はハイコンテキストな社会である(少なくともそうであった)と考えています。昔そんな論文を書いたので、またどこかでちゃんとまとめようと思いますが、簡単にいうと、説明がすぎるのは野暮、婉曲な表現を好み、共有された文脈を察し合う美学がある文化だと考えています。このような特性はときに、村文化といいましょうか、いらぬ不文律や同調圧力など嫌な方向に作用してしまうことも目立ちますが、同時に日本の良い所だと思います。これがインスタント化する社会で、しょうもないシンプルさやわかりやすさに流される今の日本に不安はあります。日本の悪いところと欧米社会の悪いとこのミックスのようなディストピアは避けたいです。そんなハイコンテキストであることを大事に出来る場所がポッドキャストだと考えています。

この文脈では、スローとはインスタントの対義語で、分かりにくく、複雑で、理解することに時間のかかるという意味です。これをいいことだと考えますか?悪いことだと思いますか?

もちろん、ケース・バイ・ケースですし、僕個人的にはタラタラしているのは嫌いですし、せっかちなので結論を先に合理的に話をすすめてほしいです。しかし、ここで言うインスタントとは、安易や傲慢とも言い換えられるものです。本屋に行けば、即習!簡単!とか図解だとかの本が多く目につくようになりました。確かに、初学者には簡単なところから、シンプルなテキストで学習するべきでしょう。ただ、それですべてが学べたように錯覚させるようなものや解釈を与えないような、親切な顔をした詐欺者みたいなテキストやコンテンツが時代のニーズなのか溢れているように感じます。検索すれば簡単に情報が手に入りわかった気になれる。誰かの感想を見れば、それを経験したかのように語る事ができ、うすーい共感で価値も自分で見極めず肯定して、まるで自分が考えたかのように拡散する。この、わかった感のパンデミックがなんだか生きづらさを感じさせている。


私見が濃くなってきたので、社会からポッドキャストに話を戻すと、わからなさ複雑さ、ぐちゃぐちゃ感を許容し楽しめるメディアであると考えています。そして、僕は、そうあり続けることが他のメディアとの差別化、ひいては、逆張りが戦略となると主張します。

このnote自体が複雑化してきたので、スローなメディアを深ぼるために、その対岸のインスタントなメディアについて考えてみようと思います。
インスタントなメディアとは、短く、感情が動かされる、ある種の扇動的メディアだと思います。簡単な例でいうとFRIDAYや文春などの週刊誌やスポーツ新聞がイメージしやすいでしょう。ですが、最近のコンテンツがどんどん週刊誌化していることに気付いているでしょうか。Youtubeのサムネイルが顕著ですが、デカ赤文字、青文字ドカーン!「〜したいなら〜しろ!!」とかの週刊誌の見出し風デザインが多い。日本のYoutubeばかりみてると気づかないかもしれませんが、これは日本の特徴といってもいいと思います。ここまで悪い表現はしてませんが下の違いがいい例です。

また、切り抜き動画の人気やTikTokの世界的ヒットもこの流れだと考えています。すべてが悪いと思いませんが、刺激を短時間に受けてスワイプし続ける仕組みには恐怖を感じます。魅力を短く伝えたり、自分のコンテンツに誘導するなどショート動画の可能性や魅力も一部感じますが、インスタントなものだと捉えています。

マクドナルドが世界中にあるように、インスタントでファストなものは大衆化します。それは悪いことばかりではありませんが、それに慣れてしまっては、複雑で繊細な魅力に気づけなくなってしまいます。僕は、どっちもあって欲しいと思いますし、どちらも好きですが、一方だけではなく共存し調和のとれた社会を望んでいます。大げさですが、そのためにも違いのわかる良識ある人たちにもっとポッドキャストを楽しんでもらって、金のまわるものにしたいと考えています。

そのような理由やながらメディアである特性上、短いポッドキャストは好ましくないと考えています。僕の考える理想はの長さは(結構幅が広いですが)30−80分。つまり、一時間前後が理想の長さだと思います。ながらの単位としては、10分で番組を切り替えるのは面倒くさかったり、音声の没入感、深さが足りないと考えます。短くするのなら頻度を下げて週に一回のほうがいいでしょう。(短い音声を目立たせるなどの戦略や手軽さとして作ることは、これまでのスローでハイコンテキストなメディア構想からそれるので僕は受け入れません)また、コンテンツのジャンルにもよりますが、厳密な時間設定は必要ないと考えています。盛り上がりや内容のきりの良さで多少前後しても許せる柔軟さがポッドキャストにはあると思います。

3-2ポッドキャスト全体でのロングテール戦略

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思想が強くなりすぎたので、戦略サイドに話を進めます。ロングテール自体についてを話すと長くなるので、各自調べてみてください。ここでは、みんなで稼いで集計でトップに勝とう!くらいに捉えてください。

さっきは、トップダウンで進めるのが早いと言いましたが、スローでハイコンテキストなコンテンツで大衆を巻き込むのはなかなか難しいですね。社会のリテラシーをあげるとか行政のDXをやろうみたいな話です。なので理想論として早いんですが、ここからは現実的なアプローチを考えてみようとおもいます。今からできるものではなく、今はまだ机上論です。ただ近い将来可能な現実的なアプローチだと思います。

簡単な数値目標を掲げるなら、トップクラスのYoutuberの収益に、100くらいのポッドキャストで勝とう!という感じでしょうか。実際の数値はここでは出しません。机上論なのですいません。

広告で稼ぐ

Youtuberの収益方法にも色々ありますが、間違いなく広告単価はさらに下がると思います。それはインスタントだからです。やたら変な広告が多いのは変な広告に惹かれる人や判断力の低い人が増えていく、一方で広告効率が低くなっていて、質の高い企業主が撤退しているからだと思います。これもすべてがそうではないですが、大衆化することで、ターゲットが絞れなくなり、絞れているコンテンツのみに良質な広告が付きます。

読者層、視聴者層 ターゲット

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The Economist というイギリスの新聞をご存知ですか?あれは、簡単に言えば小難しい文書で小難しい良質な記事が書いてある新聞です。あれの広告をよくみてたんですが、高級車や時計クルージングなど高いものばかり載っていました。これは読者層がはっきりしていて、読者が金持ちで、そこにリーチしたい広告主が高い広告料を払い広告を載せています。全員が余裕があるので、部数は少なくてもまわります。一方で、イギリスの日刊タブロイド紙(スポーツ新聞)であるThe Sunは,庶民的な日用品や粗悪な懸賞、ギャンブル情報などが載ってました。どちらが儲けているなどの実際のデータは調べていませんが、外国で新聞を読んでいて露骨だなぁと感じたエピソードでした。

現在の日本で上手だなぁと感じるのは、やはり1位のコテンラジオです。
コテンラジオは学習意識の高い、所謂意識の高い人たちの間で人気のあるコンテンツで、そのような人たちは情報にお金を払います。それと相性の良いメディアであるNewsPicksと一緒に番組をやっています。これは双方の読者層、視聴者層とwin-winな関係が築くことができいいコラボレーションでお金や人の流れもいいと思います。


このように、コンテンツの質やジャンルによって広告は変わります。再生連動型ではなく、広告効果を売りに直接のスポンサー契約をするのがまずは良い戦略だと思います。特にナレッジ系やコンテンツが絞られているものは関連の会社にアプローチしやすいと思います。また、音声メディアであるので、音響メーカーやソフトとの相性はポッドキャスト番組すべてと相性がよく、これからはじめてみたいと思わせるような、親しみがもてて若いリスナーがいる番組に合うかもしれませんね。ただ、言うは易く行うは難しで、実例が溜まってこないと、なかなかこれは今の規模感ではまだ難しいでしょう。これからの戦略は考えていますが、これから試行錯誤してみたいと考えているのでまた別の機会に書こうと思います。

援助をもらう

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次に考えられるのはリスナーの援助です。

こういったサービスや、noteの支援など色々ありますが、規模が小さいとなかなか難しい。濃いコミュニティを作り、そこで応援されるような活動を続けていく必要があります。

この記事を書くのコーヒーを何杯も飲み時間もかとてもかったので、すこしでもいいなって思った人はコーヒー代をくださると、次の記事のモチベーションや活動を幅が拡がります。よろしくお願いします!!

このような、直接のお願いや苦労アピール、実現したい具体的なプロジェクトを語るなどのアピールが必要です。(例文ですがガチです。グランデサイズをお願いします。笑)

これも規模が小さいうちは難しく、情報にお金を払う意識やチップの習慣のない日本ではなかなか難しいのではないかと考えます。一方で、承認欲求は強く、自分を認知してもらうための援助は多い傾向にあると感じます。これは相手本位というより、自分本位の欲求なので、インスタントなメディアのほうが向いていると思います。健全な感謝の循環は可能ですが、煽る形になりやすく、低きに流れていく可能性がすごく高いのでおすすめしません。そのへんは独自系サービスが強いと思うので、それをしたいのならそちらをおすすめします。

他の方法は?

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どうすれば、スローでハイコンテキストなメディアは稼げるのか。


その答えは、有料で、、、、、


ってやるのはインスタントですね。笑
このような情報商材が早いと思いますがインスタントで持続性はありません。ある程度のノウハウをまとめて本にしたりUdemyなどでナレッジシェアで稼ぐことはもちろん健全で意味のあることだと思いますが、どうしても怪しいものが多いなと感じてしまいます。ある程度の実績がないと難しく、その証明も難しいです。ほんとにそんな稼げているならそんなもの売らないだろうってもの多いですよね。なので収益額ベースではない実績を示して、買ってもらうような、健全な仕組みが必要ですね。

本題

ここでちゃぶ台をひっくり返すようですが、

僕は、日本でポッドキャストは稼げないと思います。少なくともすぐには。薄々感じていたかもしれませんが、数で回せないなら、ポッドキャストだけで稼ぐのは難しいです。もういっそ経済資本を稼ぐことは諦めて、Social Capitalを稼ごう!これがロングテール戦略の肝です。

社会関係資本とは、影響力や関係性、コミュニティのちからです。これを集積していくことがポッドキャストの目的であり、Social Capitalが後に、稼げる力になります。つまり、今は配信者同士のコミュニティが主ですが、面白くて、変わった人たちが集まり、それぞれが独自のコンテンを作っていけば、そこに新しいポッドキャスト外のコラボレーションや企画がうまれて、価値が創れると考えています。理想論に聞こえると思いますが、理想を語らないと理想は作れませんし、インスタントな価値観を排除することでそんな理想は実現出来ると思います。そのattitudeがオルタナティブでプログレッシブなのです。

3-3 オルタナティブ、プログレッシブで勝つ!

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(成田のイラスト)

これで考えていた戦略の話の概要がざっと書けました。キングクリムゾンのようになるか、ニルヴァーナになるかわかりませんが、大衆向けのインスタントなコンテンツのカウンターとして、ポッドキャストをスローでハイコンテキストなコンテンツにしていきたいという、所信表明でした。

賛同してくださる人は、Twitterやメールでもコメントでもなんでも嬉しいのでください。一緒に考えていきましょう。


4 専業ポッドキャスターの限界

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最後に補足ですが書いておきます。繰り返すようですが今の状況では、ポッドキャストだけで稼ぐのは難しいです。特にこの構想では普通の人はキツイです。なにか独自の世界や専門性があって、それを表現、実現するための手段としてポッドキャストが選ばれるのであって、ただポッドキャストをやるだけというのはSNSを更新しているのと同じだと思います。もちろん、日常の些細なことを面白く表現豊かに書ける人がエッセイストになるように、特別なことが無くても独自の視点で切り抜くことで特別なものになると思います。なので、ラジオ風にとか型をつくるのではなく、オルタナティブにプログレッシブにやろうぜという話です。古くて新しい、奇妙で親しみの持てる。これがポスト共感型、スローでハイコンテキストなメディア構想です!

コテンラジオ

実際に先程のコテンラジオは、ただのポッドキャスト番組ではなく、そのSocial Capitalを用いて、歴史のデータベースをつくる企業であり、ポッドキャストで注目と認知を、そして歴史の知識を深めながら、

書籍数百冊分の「深い歴史の英知」を誰もが引き出せるようにする

というミッションを実現するために活動しています。

"この誰もが引き出せる"というミッションが気軽に聴けてその中にいる人を好きになってもらうポッドキャストというメディアを選ぶ事になり。その親和性の良さが人気につながったんだと思います。


ワークスタイル研究所

ワークスタイル研究所が運営するコクヨ野外学習センターは、ポッドキャストが本になったり、ワークスタイル研究所のミッションをポッドキャストを通して拡げています。

働くことが、会社の管轄から「個人」にも委ねられている今、
当研究所では、思考の射程を「はたらく」から「まなぶ」「くらす」まで
柔軟に広げていきながら、世のワーカーを触発しつづけていきます。
(抜粋したミッション)

ここ最近ドキュメンタリー部門で1位を争っていたのが場違いだったかなと調べていて思いました。聴いたことなかったので本を読みながら聴いてみようと思います。 


5, Vision

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ポッドキャストがクリエイティブの中心に、攻めた情報が集まる場所に、そして、ビジョンを現実にするSocial Capitalが集積していくような場所となるような活動していこうと思います。

僕自身、一人でも多くの気の合う人を見つけるために、そしてそんな仲間(Social Capital)を築くためにポッドキャストをやっています。それは単なるインフルエンサーではなく、もっと思想に寄ったものだと考えています。

少しでも楽しく、誰かの生活の一部に、そして、わかりやすい魅力はなくてもじっくり楽しんで貰えるようなポッドキャストを気張らずに創って行きますのでスローでハイコンテキストなフィーリングで楽しんでください。来年もよろしくおねがいします。

具体的な活動は、来年紹介するので、そちらもよろしくお願いします。

最後に結論!ポッドキャストは閾値を超えない。。。笑


終わりに

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約1万5千文字をお付き合いただきありがとうございました。長い日本語を書くのも久しぶりですし、すごいスピードで書いたので誤字脱字があったらすいません。年の瀬にこんな機会があって、考えながら書くことが出来て、個人的にすごく良かったです。読んでくれた人にも何か伝われば幸いです。少しでも興味を持ってもらえたなら、各種SNSをフォローしていただけると嬉しいです。ちなみに、SCHOOL OF KOPはこんな内容ではないですが、オルタナティブでプログレッシブなスローでハイコンテキストなポッドキャストです!!(サポート待ってます。)


まとめ

ニュースレター
もう少し内容を充実させていきます。

ラジオ遍歴
こんなの聴いてましたよってやつ

































この記事が参加している募集

わたしとポッドキャスト

宜しければサポートお願いします。活動費がまったくありません。ショップやスタンプ、グッズなども用意してます。どれも一生懸命作りました。よろしくお願いします。