核融合研究の世界最先端!南フランス・ITERにて インターン研究留学しています
自己紹介:南フランスで核融合の研究をしています
みなさんこんにちは!
國井朗光(くにい あきひろ)と申します。
福島県福島市出身で、筑波大学で応用物理学を専攻する学部4年生です。
現在は、南フランスの核融合エネルギー国際機関である、ITER (イーター) Organization Science divisionに所属し、外部加熱手法の一つであるNBI (Neutral Beam Injection)のシミュレーション研究を行っています。
インターンシップとして、2024年10月から25年3月末までの半年間在籍する予定です。
留学のきっかけ:研究を進めるうちにいつの間にか...
私の場合は、ITERのインターン留学を志すきっかけと呼べるような象徴的な出来事はありませんでした。
大学での研究を進める中で、核融合研究に対してより強く惹かれるようになり、今後の核融合研究の一丁目一番地であるITERにも興味が沸いてきた、という形です。
私は大学の早期研究プログラムに参加し、3年生から核融合に関連する研究を始めました。研究室の指導教官の先生がITERでのポスドク経験があったり先輩がインターンを行っていたりと、ITERに関する話を聞く機会が多くありました。
また、研究を進めるにつれ、核融合研究におけるITERの重要性を徐々に認知するようになり、ITERに実際に行ってみたいという気持ちが徐々に深まっていきました。
加えて、夏休みに参加した「プラズマ・核融合若手夏の学校」という勉強会で、多くのインターン経験者の先輩方の話を聞く機会がありました。
ITER計画そのものに対する興味に加え、インターンシップでしか得ることのできない経験を私自身も体感したいと思うようになりました。
このように、研究を進め、出会った人とのつながりの中でITERへの興味が深まり、留学を志すようになりました。
留学先紹介:核融合研究期間「ITER」とは
ITERについて
ITERは、核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証するための国際研究機関です。
核融合エネルギーとは、軽い原子核同士が衝突して融合し、別の原子核に変わる際に放出されるエネルギーです。また、このエネルギーは太陽などの恒星を輝かせるエネルギーでもあるため、核融合研究は「地上に太陽を作る」という、物理的にも意義的にも「アツい」研究と言えます。
ITERは、世界の核融合研究を牽引する研究機関の一つであり、世界の日本、EU、アメリカ、インド、韓国、中国、ロシアの世界7極の国際協力によって建設が進められています。
国際色が豊かであり、南フランスに位置しながらも公用語は英語となっています。
ITERのインターンシッププログラムについて
私は前述の通り、研究インターン生として留学しています。
少々特殊な留学形態であるため、この概要について紹介します。
なお、詳細についてはこちらのリンクを参照ください。
本プログラムは、主に学士・修士・博士課程の学生を対象としたインターンシップです。
物理や電気工学などの理工系の内容に限らず、広報やマーケティングなど文系の内容も含めた多岐にわたるトピックが公募されます。
各トピックには指導教官の役割をするITER職員の方がおり、職員の方と協力してトピックの完遂を目指します。
なお、参加に際し受験料・参加費を支払う必要はなく、手当※が支給されます。
※ 修士課程で5ヶ月以上の場合は1300ユーロ/月、学士課程で2ヶ月以上の場合は650ユーロ/月、など
ITERを選んだ理由
世界の核融合研究の中心であるため
前述の通り、ITERは核融合研究を牽引する研究機関であり、ITERを中心に核融合研究が進められていると言っても過言ではありません。
そのため、その中心に行って研究してみたい!というのが第一の理由でした。
また、私は大学でも核融合に関連する研究を行っているのですが、使用している装置の種類がITERとは異なっています。ITERは「トカマク」と呼ばれる方式を採用しており、現在の核融合研究の主流となっています。将来の核融合研究に携わるうえで、トカマクでの研究に触れておくことは必要不可欠だろうと考えました。大学院留学に向けて知見を得るため
私は現在の大学を卒業した後、海外の大学院に進学したいと考えています。大学院留学を考える際、海外での生活や研究の仕方は自分にとって合っているのか否かを見極める必要があります。
また、ITERのインターンシップの場合、参加者のボリュームゾーンは修士課程となるため、様々な大学・地域の学生と交流し大学院に関する情報を得ることができます。
加えて、ヨーロッパの場合はドイツやイタリア、イギリスなど他の国への移動ハードルも低く、核融合関係の様々な研究室を訪問することができます。
インターンへの応募について
インターンの選考プロセスは一次審査として書類選考、二次審査として面接が行われます。書類選考では、CVとCover Letterを提出する必要があります。
量子科学技術研究開発機構 (QST) のITER日本国内機関に添削支援をお願いし、添削していただきました。
また、難易度についてですが、ITERから情報が公開されていないので倍率などの情報はわかりません。しかし、QSTの出願支援などを活用しきちんと準備することができれば大丈夫だと思います。
留学中の生活:南フランスでの生活
住んでいるところ
マルセイユから北に30kmほどに位置する、エクス=アン=プロヴァンスという街に住んでいます。この街はセザンヌの出身地として有名な観光地であると同時に、学術都市という側面も持ち合わせる、活気に満ち溢れた古都です。南フランスということもあり、晴天の日が多くとても過ごしやすい場所です。
1日の過ごし方:平日
毎朝、6時過ぎ発のバスに乗りITERへ出勤しています。
ITERには朝8時から開店するカフェがあり、始業前に同期のインターン生と朝食を取ることが多いです。
勤務時間は8時半から17時半までです。
終業後は、研究内容と英語の勉強はもちろん、ITER職員の方とブラスバンドやテニスの練習をしたり、インターン同期と街に出たりしています。
フランスは日本に比べ、仕事より自分/家族の生活を重視する傾向にあるようです。このような価値観を体験することも留学の学びと捉え、メリハリのつけた生活を送っています。
1日の過ごし方:休日
休日は、市内の図書館や公園で勉強をするか、近隣の都市へ観光に行くことが多いです。
エクス=アン=プロヴァンスには歴史的な公園が数多くあり、学生や子供連れの家族、お年寄りなど様々な人が集まる憩いの場所となっています。清々しい青空の元、各々が思い思いの時間を過ごすこの空間は私のお気に入りの一つです。
観光については、「せっかくヨーロッパに来たのに一箇所に留まっていてはもったいない!!」と考え、精力的に出かけるようにしています。
年末年始は、2週間ほど休みになります。
足を伸ばして北欧や東欧にも行ければと考えています。
留学してよかったこと:
これまでの自分を俯瞰的に捉える
まだ留学が始まったばかりなので、見えない部分も多く暗中模索の日々ですが、今感じていることについて、少し書きたいと思います。
核融合研究の全体像に対して理解を深められること
ITERは核融合研究をリードする立場にあります。そのため、ITERで実際に仕事をし、色々な分野の方から話を聞く中で、核融合研究の現状や課題に対して理解を深めることができます。
大学ではトカマク型の課題の一つに焦点を当てて研究を行っていました。ITERで核融合研究の全体像を俯瞰することで、大学での研究の立ち位置や他の研究との関連をより深く知ることができ、良い機会だと感じています。マイノリティとして生きること
日本では知ることのない価値観を体感できることも、留学して良かったと感じる事の一つです。
自分/家族の時間を重要視する仕事観や、時間の過ごし方に対する価値観に触れ、自分の価値観を俯瞰的にみることができるようになりつつあります。これは、文化的背景が全く異なる土地でマイノリティとして生活することでのみ得ることができる学びであるため、留学してよかったなと感じています。
これから留学を目指す人へ
まだ留学を始めて1ヶ月が経ったばかりですが、多くの人に出会い、異なる価値観・考え方に触れることができています。
この1ヶ月は毎日が刺激的であり、自分の視野を広げる貴重な財産となっています。
残りの5ヶ月も新しい人・価値観に出会い、どんどん自分の視野を広げることができる、貴重で刺激的な毎日になるんだろうなと感じています。
人や価値観、環境との出会いは留学をすることによって得ることができる貴重な財産です。
もし、少しでも留学に興味があるのなら、挑戦してみてはいかがでしょうか?
私も留学道半ばです。ともに頑張りましょう!
応援しています!