「わたし中学生から統合失調症やってます。―水色ともちゃんのつれづれ日記―」 ともよ著 を読んで
感想文集ー統合失調症をもつ人の著作を中心にー no.12
2018年に発行された本書は、統合失調症をもつ作者によるコミックエッセイです。
読むたびに私が感じるのは、こんなに人に説明しにくい、伝わりにくいあれこれが ”水色ともちゃん” の登場によって伝わってくるのはなぜだろう?という驚きです。
はじめに、明らかな発症に至るまでの日々が描かれます。
孤立して不安や焦りのなか無理を重ねてゆくこの時期の切迫感は、家族にもなかなか分かってもらえない。
その頃の短いエピソードがいくつも重ねられ、「亜昏迷」に至る苦しい道筋と内なる想いが綴られています。
発症後の症状についても、「幻聴」や「妄想」とまとめることのできない特に説明しにくい事柄が、水色ともちゃんのおかげで分かりやすく伝わってきます。
もし似た困りごとがあれば、人に説明するときにも役立ちます。
たとえば言葉では表現しにくい、こんなこと。
あるいは人から不思議に思われてしまう、こんなこと。
本書で描かれているのは症状だけではありません。
いろんな場面での日常の思いがたくさん描かれ、いずれも短く読みやすくまとめられています。
入院生活、デイケア、薬のこと、家族との関係、主治医の言葉。
お風呂の大変さ、支援利用に伴うしんどさ。
寂しさ、自責感、働きたい気持ち、頑張りすぎて仕事を失ったとき、、、
そのつどの心の動きや気づきが鮮やかにとらえられています。
作者は日常のできごとを丁寧に心に留め、思いを形に残してこられたのだろうと思います。
そのおかげで読む側もいろいろな角度から読み、感じ、考えることができます。
エピローグ「少しずつ社会にふれていく」
退院後ひきこもっていたともちゃんは、あるきっかけで小さな行動を起こし、何年かのちには地域の趣味のクラブに入ります。
あるとき仲間がかけてくれた言葉に、ともちゃんは思いました。
冒頭の作者の願いがかなう日はまだ先かもしれない。
それでもこうして社会を小さなところから変えていくことが大切なのだと、あらためて気づかされました。
*英訳版も発表しておられます。
Blue Tomochan and Schizophrenia ともよ著
(追記)
作者のともよさんがこの記事についてポストしてくださいました。
ありがとうございます。
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