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「家族・友人が統合失調症になったら」家猫著 を読んで

感想文集ー統合失調症をもつ人の著作を中心にー no.1


未治療で病識のない統合失調症の方を、どうしたら治療に結び付けられるか。
正解のないこの問いを、統合失調症をもつ当事者である著者が正面から取り上げた著作です。
さらに特筆すべきは、著者自身がそのような方を訪問し医療機関受診をサポートする活動を個人で実施されているらしいことです。


なぜ病識を持ちづらいか。
「人間は、自分の知覚したことを真実とする生物だから」と、著者は経験をふまえて端的に指摘し、天動説と地動説を例に分かりやすく説明しています。

では病院に行くよう説得するにはどうすればよいか。
著者の方法は実践的で、身近な家族や友人が使えるようにと丁寧に説明されています。
さらに私には、著者のような経験者が共感をもって語りかけてくれたなら、混乱のさなかにあって嵐の海の灯台のように感じる人もいるだろうと思えました。


少し話が変わりますが、先日あるテレビ番組で、ニュージーランドの精神医療が紹介されていました。
急性期ケア施設で、薬物療法だけでなく同じ疾患を経験した人がトレーニングをうけて患者さんのケアにあたっていました。
それら経験者に症状をありのままに受容・共有され、自身の意見を尊重されつつ一緒に対応を考えてもらえる中で、患者さんは落ち着いてゆくとのことでした。


日本の既存の公的なピアサポートは今のところ活動領域が限られています。
急性期、まして未治療段階ではほぼ関与していません。
回復期・安定期の社会復帰場面が一般的で、その際に例えばうつ病の人が統合失調症の人をサポートするなど、症状経験の共通性はあまり問われないようです。


そのような中で、著者が自身の統合失調症経験を生かして、未治療で病識のない同疾患の方の受診の後押しを個人で始められたことに、驚きと敬意を覚えます。


*「家族・友人が統合失調症になったら」家猫著 スキゾフレニアパブリッシング 2021.8.
(この感想文は2021年8月15日付第4版によります)



(追記)
家猫さんがこの感想文についてツイートしてくださいました。
ありがとうございます。




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