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「過去の自分へ 未来の自分へ」モンゴロイド著 を読んで

統合失調症関連作品感想文集ーno.19
「過去の自分へ 未来の自分へ」 モンゴロイド著


統合失調症をもつ電子書籍作家・モンゴロイドさんが「過去の自分」と「未来の自分」にあてて書いた、手紙形式の作品です。
思いのたけを込めた長い手紙。
まずはその一部分だけ紹介させていただきます。

<過去の自分へ>

無駄なことは何ひとつありませんでした。なので人生をサボっている時でさえも、貴重な体験です。

と、体験には全て意味があったと振り返り、

ただ足りないものがたくさんありました。厳しいことをちょっと伝えます。

いくつか苦言を呈し、さらにその後の経験を伝え、

あとは自分がなんとかしますから、ゆっくり休んでください。

過去の自分をねぎらい、しっかり引き受けておられます。


<未来の自分へ>

現在のご自身がいま頑張っていることを挙げ、未来を尋ねて

楽しみであり夢の未来ですが、本音は少し不安があります。

と揺れる思いをつづっておられます。


少しだけの抜粋では伝わりにくのですが、本文には強い思いがあふれていて胸を打たれます。


読んで感じたのは、モンゴロイドさんが今を大切に、懸命に生きておられる姿勢でした。
過去からのバトンをきちんと受け止め、未来のランナーへと引き継ぐ。
それは、今の自分がベストを尽くして走るのだという決意にほかならないのだと感じました。

過去や未来に向けて書かれたものから伝わってきたのは、今現在の著者の覚悟だったのです。


実は私はちょうど1年前にこの作品を読み、自分もやってみようと思って過去と未来の私に手紙を書きました。
中高生の自分と、80歳の自分に。

そして先日、それを読み返しました。
一年前、書いているうちに思いがあふれて止まらなくなったのを思い出し、あらためて、この手紙を書いたのは自分にとって大切な体験だったと感じました。
思いはこの1年間ではほとんど変わっていませんでした。

一方で、こうも考えました。
もし40代で同じことを試みていたら、全然違っただろうと。
あの頃は過去の自分を直視できなかった。だから手紙を書こうとしてもまともに書けなかったはず。
そしてあの頃の私が遠い未来に思いを馳せることなどできただろうか。

過去・未来への手紙は、一人ひとりにとって、書ける・または書けない時期があるのかもしれません。
その人のタイミングが来てはじめて書きたくなるものかもしれません。

モンゴロイドさんが本作を書かれたのは50才のときだそうです。
著者にとって50才はどんな節目だったのでしょうか。

私はもっと後にようやく過去に向き合えるようになり、そしてたまたま本書に出会いました。

もしあなたがいつか、過去や未来を考えたくなったら。
モンゴロイドさんのこの作品を思い出してください。
手紙を書くという方法もあったな…と、心の片隅に。


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