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それでも、

僕は老人ホームで働いている。




延命?救命?

神様、がいるなら、
もう楽にしてあげてほしい。

こう思ってはいけない職業なのかも知れない。



以前書いた、
窓際の松子さんという記事。

寝たきりでも、
食事が取れなくても、
僕は松子さんに元気をもらえている。

松子さんはまた今日も窓際で
毎日まどろんでおられた。

声をかけると、うなづき、
目を閉じたまま
『あんただれやー…??』と喋る。


そんな風に、価値ではなく存在の次元で
感謝しなくてはいけないのかもしれない。






でも現実面、

今回記事に書く方は、
もう何年も寝たきりで、

よく面会に来てくれていたご家族は
会社が倒産して遠方へ引っ越し。

飲み込みの力が衰えてきていて、
ムース状のものしか食べておられない。

自分では食べれないので、
介助でそれを食べてもらう。

そのほかも、
移動、排泄、入浴など、
全ての生活において、職員さんの助けがいる。


お話をすることはできない。
唸るように声を上げられるだけ。

こっちの言っていることが
わかっているのかいないのか、
それも、わからない。


四肢は拘縮し、
自分では動くことができない。


動いているものを目で追うことはできる。







こういう方、他にもおられると思う。



先日、38度の熱が出た。

高熱、とまではいかないが、
普段よりは高い。

そのあと、
食事が食べれなくなった。

口に入れても吐き出してしまう。


お迎えなのかな。

疲れちゃったかな。
もうしんどかったかな。


僕はその方を8年見てきた。

はじめはお話をしていた。
歩いていた。

転倒が繰り返されるようになり、
いつしか移動は車椅子に。

食事も自分では取れなくなり、
トイレにもいけなくなった。





その流れを見ているからこそ、
正直辛い。

頑張ってこられたのを見ているからこそ、
迷う。



もういいんじゃないか?
この方は頑張ってきたよ?


元には戻らない。
もう劇的に改善することはない。






いや。
でも。




僕の仕事はそれでも生活を支えること。


治せる可能性のあることは積極的にやる。
往診医と連携しながら、
点滴と併用して経口摂取も諦めない。

改善が、
もし改善がなかったときのことも考えて
ご家族にも方針を都度説明していく。

考えられる最善を。

楽しみを。



忙しい時に限って迷わせるんだから。

これだから介護はやめられん。




大丈夫、うちがあなたの日常を支えますから。













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