お父さんから、男の子へ。

暖簾をくぐるとサラリーマン、おじいさんたちの熱気。何度も入れるかと挑んだが常に満席。店員もお断りする仕草が慣れているから、この店は満席が普通なのがわかる。
京都駅前にある「へんこつ」にやっと入れたのは昨日。

お父さん3人が不定期に集まり娘可愛いを連呼する「パパ会」の日だった。みんな仕事を急いで終えて、へんこつ前に集合。肩がぶつかるほど狭い店内で子供のことや仕事のこと、他愛もない会話で盛り上がる。目的もない。それがいい。最近どう?って具合。

お互いの嫁たちに終電には乗せる約束をしつつも、楽しすぎた。
気がつけば終電は走り出し、へんこつ、タワーサンド、次郎、猫穴の上流から下流へと滑り降りる飲み会となり、次郎の屋台でメンバーが増え、猫穴でいつものメンバーが飲んでて、なんとも平和な京都の夜だった。みんな、無事に帰れたのかだけが気になってる。
そして各々、家で叱られてるのかもしれない。ごめんなさい。

「お互い仕事してる時どんなキャラなの?」

なんて、酒飲みながら、お互いどんなんなかで盛り上がる。飲みの場で会う皆と仕事の場である皆は少し違う。だいたいスイッチがオフになってる時に会うから、お互い仕事現場でどんなもんか聞くのは面白い。

次郎の店になだれ込んで、年齢もバラバラで、敬語もなしになんぼのもんじゃい!と盛り上がり、次郎の孫娘呼んでヒートアップ。次郎も僕らも嬉しそうで、こんないい日はないと次郎がつぶやいていたのが忘れられない。

85歳、40歳、34歳、30歳、20歳ぐらいが、ゲラゲラ笑って過ごす夜。
社長とか、デザイナーとか、店主とか、学生とか、そういう身分をすっと脱ぎ去ることのできる次郎の店や、猫穴は本当すごい。

あの人は、ああいう人だ、こういう仕事した、とか、自分の後から付き纏うイメージをバサッとマントを脱ぐように捨て去って、放課後や終わらない夏休みみたいな時間を日が落ちた時間だけ過ごしに来ている。

パパ会の最後はパパであることすら忘れて、何回も乾杯していた。
お父さんから、男の子へ。良き夜でした。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。