思いつきが組織を崩壊させる そのアイデアにイデアはあるのか

色々な経営者の方とお会いして、時々「この組織は崩壊する」と感じる時があります。それは会社に問題が起きているときに、経営者の方が思いつを語り始めた時です。意味の解らない(言葉としておかしい)標語などを造語する方も同じように感じます。
(問題解決のプロセスについては、あらためてロジカルシンキングの中で述べたいと思います。)

ここでビジョナリー・カンパニー3衰退の5段階を紹介したいと思います。

第一段階:成功から生まれる傲慢
第二段階:規律なき拡大路線
第三段階:リスクと問題の否認
第四段階:一発逆転の追求
第五段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅第

ジム・コリンズ著,山岡洋一訳『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』日経BP社,2010年

これに当てはまる多くの経営者の方が「思いつき」による指示をする姿を多く見ました。

一概に思いつきが悪いというわけではありません。重要な考えほど何でもない時に思いつくことも少なくありません。大切なのは思いつきの質とプロセス、そしてどのように形にするのかです。

思いつきの質
アイデアを思いつきで終わらせない人、言い換えればアイデアを形にできる人の多くは、思いつきの質が高いように感じます。では思いつきの質とは何でしょう。一言でいえば、自分の目的に向かって常に考え続けていることです。いわゆるフラッシュ・アイデアではなく、普段の思考の積み重ねから生み出された考えを指します。

思いつきのプロセス
これは思いつきの質と同じような内容になるかもしれません。普段から目的が明確になっていれば、目的達成にのため、努力を積み重ねることが出来ます。この積み重ねは人の思考も同じです。思考の積み重ねから、有意義な考えを思いつきます。

どのように形にするのか
アイデアを形にすることが出来る人ほど、そのアイデアが有益なのかを、しっかりと検証します。自分一人でできないと思えば、周りの人や自分の仕事を形にしてくれる人と話し合って、アイデアを意義あるものに変えてゆきます。

このように、思いつきを成果に変えられる人と、周りを混乱させてしまう人では、思いつきの内容が異なります。「このアイデアどう思う?」などと聞かれたとき、僕はよくこう考えます「そのアイデアにイデアはあるのか?」と。

ちなみに辞書ではそれぞれこのように説明されています。
アイデア:思いつき。新奇な工夫。着想。
イデア :プラトン哲学で「ものごとの真の姿」「ものごとの原型」を指す。

これは正しい表現ではないのかもしれませんが、僕自身が人の「思いつき」に振り回されてしまった経験から、特に思慮を感じられないアイデアを聞かされた時に問う言葉として使っています。例えば「こんな商品を作ったら儲かると思うんだけど・・・」などというアイデアを聞いた時などなどです。その人が「こんな商品を作ったらこんな人に喜ばれるのではないか」と意見を求められればすぐにしっかりと考えます。しかし単に「儲かる」とか「うける」「面白い」などというアイデアは、一歩引いて考えます。

チームや組織が機能しなくなっている時、誰かの「思いつき」が振り回していないかどうか、客観的に観るのも一つの方法です。

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