マネジメント 僕が、ビジネスを理論で考える理由

これは以前に記したないようかもしれませんが(この表現が多くてすみません)、ビジネスの話をしていて、時々「学者さんの机上の空論」と言われることがあります。
早くに大学の教員になったこともあり、長年の経験をお持ちの方からすれば、僕の言葉は生意気に聞こえたのでしょう。僕の父がある時期、勤め先の工場が閉鎖になるまでは、同じようなことを言いました。

まだ30歳そこそこの頃は必死に反論したりもしましが、いつからか、あまり気にしなくなりましたが、これは僕の年齢が上がったことで、面と向かって言う人が少なくなったからかもしれません。

さて、なぜこの話を思い出したのかというと、ファーストリテイリングの柳井氏の記事で、「日本企業のケーススタディーは参考にしない。自己流の経営が多く、長続きすると思えないから」というものを見たからです。

この記事について柳井氏は発言当時を振り返り「生意気なことを言った」としていますが、実は柳井氏の成功要因とし、マネジメントやマーケティングなどの基礎を熱心に学んだことでも知られています。

僕は柳井氏の考えには大いに賛成です。なぜなら日本ほど慣例や慣行で物事が進んでいる国はありません。もちろん、文化や伝統には大切なことですが、ことビジネスとなると話は別です。
少し前にも、日本的経営が現在にまでもたらしている問題点について記しましたが、日本の企業やビジネスは、とにかく慣行・慣例が多過ぎて、全く合理的ではありませんし、ましてや論理的とは程遠いものです。

・なぜ慣行、慣例が問題なのか
慣行や慣例とは、簡単に言うと「今までこうしてきたから」とか「ずっとこうだったから」というもので、なその意思決定や行為について説明になっていないものです。最初になぜそのような方法を選択したかについての合理的かつ論理的な理由は既に失われており、当事者自身もなぜ行っているのかを理解していません。しかし成功したことがある特定の時期の方法というだけで続けられていて、ほとんどの場合、時代や環境の変化に合わなくなっています。
しかも多くの中小企業では、実は元請け企業からの要望に応じただけなのに、あたかもその企業の経営精神から生み出された方法のように扱われています。

僕が企業の問題を解決するときは、まずこの慣行・慣例に着目します。ほとんどの企業で、慣行・慣例をなぜ行っているのかを説明できません。しかしなぜかそれが企業の正解になっていたりもします。
そのため僕は、まず問題の原因となっている「行為」を見つけ出し、その理由をたずねます。そして説明できない慣行・慣例は、廃止を提案します。

この方法で、企業の問題を多くの問題が解決できます。
※実施には綿密な分析が必要ですので、安易に真似ないで下さい。不適切だと最悪の場合、業務がストップします。

・理論とは
ここであらためて「理論」とは何かを確認しましょう。

理論
個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識。                    (大辞泉)

簡単に言うと理論とは、法則に従った知識の体系といつたところでしょうか。

ちなみに、僕はマーケティングの講義の初回に、「科学とは何か」という質問をします。
科学とは、法則に従った考え方です。マーケティングを含め、経営学は社会‘科学’ですから、感覚的なものではなく、法則に従って考えるものです。

ちなみにアメリカでは、経営学も‘科学’ですから、理系に含まれます。

・ビジネスを理論で考える
先日、こちらの本を読みました。

『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/10/05/00415/

こうしたものは、自分が‘教える’能力を高めるために時々読みます。解りやすく説明するのって、意外と難しいのです。
大学で教えていたときは、ある意味では一方的な押し付けになってしまっていました。しかし経営者の方に、お金を頂いて説明するためには、自分の説明能力も高めなければなりません。

とはいえ、やはり説明するのは「実態」の改善に必要な「理論」です。

今回最初に挙げた柳井氏の例、「日本企業のケーススタディはしない」というのは、理論が欠けているからです。

例えば想像してみて下さい、混ぜてはいけない洗剤の使い方。

その人が混ぜてはいけないものを混ぜて、体調を崩したとします。しかしこの「体験談」は、いけないことをしたという経験だけで、なぜ混ぜてはいけないかを説明できません。

上記の紹介の本は、こうした「なぜ」を解りやすく説明しています。

要は、理論で説明できなければ、同じ結果が得られないのです。
また、経験談は、失敗ならともかく、成功の同じ結果は得られないのです。

だから僕は、ビジネスの問題を、常に理論で話します。

普遍的な結果を得るためには、不可欠な考え方かと思います。

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