顧客満足を考える3 モテる男はUXを語る

前回UXとはどんなものかについて、かなり大雑把に記しました。
お客様の企業の課題について考えていて、思い出したことがあったので、今日はその事例を紹介したいと思います。

その1:文学者はモテる
僕が経営学部に勤務していた時、委員会の先生方と飲みに行った時の話です。
経営学部の教員の集まりなので、ついつい専門分野の話になってしまいがち。周りから見ればちっとも面白くないでしょう。そこにお一人、口承文学が専門の先生がおられました。ちなみに口承文学とは、人びとの間で口伝えされたお話しのことです。
何からそんな話になったのかは忘れましたが、地域による違いの話になった時、その先生から四国(だったと思います)のある地域のお雑煮の話が出ました。ある川沿いだけで、全く違う地域のスタイルのお雑煮が食べられているという話でした。その地域に派遣されてきたお坊さんが伝えたお雑煮が、川を下るように広まったというお話でした。
その話がとても面白くて、他の先生方も皆さん熱心に聞いていたのを覚えています。

そこでもう一つ思い出した話があります。
後日この先生に、お雑煮の話がとても面白かったと伝えたところ、他の先生方と同じで専門分野の話をしているだけだと仰いました。ただし異なるのは、経営学の先生方が科学的分析を議題としていることに対して、文学者はお話の面白さや起源を語ることだそうです。
この時もう一つ面白い話を聞きました。それは森本レオさんのお話です。
森本レオさんはその声と語り口調が有名ですが、どうやら森本レオさんがモテる理由は別にあるそうです。
森本レオさんは、女性に受ける話をしないそうです。ただ自分の好きな文学作品の話をとうとうと話すのだとか。ただし、ストーリーテラーとして上手なだけでなく、その話がどんなふうに面白いかを、とても熱心に語るのだそうです。そのうちその文学作品に興味がなくても、その面白さ(面白かった経験や感動)に、いつの間にか共感してしまうのだそうです。

優れたストーリーテラーはUXの達人なのかもしれません。

その2:女の子に趣味を勧める
これはやはり大学に勤務していた頃、学生さん達と飲みに行った時の話です。
この時は仲の良い男子学生3人、女子学生1人が一緒でした。男子学生は僕の影響が少なからずあって、皆デジタルカメラを買った後でした。10年以上前のこで、本格的なデジタル1眼レフなどが普及し始めた頃、まだ女性でカメラに興味を持つ人が少なかった頃です。

男子学生3人と女子学生の関係性は想像にお任せしますが、、、
男子学生さんはそこにいた女子学生にどんなカメラが合うかという話を始めました。スペックや取り回し、操作性など色々な意見が出ます。女子学生さんは、元々ITの知識はそれなりにあったので、多少興味はあったのですが、さすがにちょっとついていけません。
そんな時僕に話が回ってきました。そこで僕は「一目惚れしたカメラ」と答えました。
僕はずっとフィルムカメラを使っていて、ちょうど初めてコンパクトなデジタルカメラを買った頃でした。一人でお気に入りのオートバイで出かけてゆき、気ままに写真を撮るにはちょうど良いサイズです。こんな場所でこんな景色を見たとか、こんな物を食べたとか。結果的にその女子学生さんはとても興味を持ってくれました。
この頃は既に写真は携帯電話で撮るのが当たり前で、わざわざカメラを持ち歩きません。カバンに入れるとそのままになっていしまいますから、まずは手に持って歩きたくなる「一目惚れ」が一番という話をしたのです。

この時はまだUXという言葉を知りませんでしたが、今思い出すと、正しくUXの話だったように思います。

実際に顧客満足を考える時、マーケティング分析に基づくUXを考える必要があります。講義の時もマーケティングフレームワークを使用して分析した後、UXについて考える課題を出しています。
今講マーケティングの講義を担当している広告デザイン専門学校の学生さんはなかなか優秀です。課題もよくできていて、中には感心させられるものもあります。デザインを学び、早くからコンペなどにも参加していることから、共感力や伝える力も高いように感じます。
UXを考えるうえで最も大切なことは、経験や感動を理解する共感力やそれを伝える力なのかもしれません。

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